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一切り一切り想いが刻まれた「切り絵の花」にうっとり

 美しく繊細なものを見ると、なぜか心が洗われるような気持ちになります。それはもしかすると、知らず知らずのうちに鈍った色彩感覚を取り戻そうと人間の本能が働きかけているからなのかもしれません。その美しいものの中でも、色彩豊かで、儚くも生命の力強さを感じる花。この花をモチーフに、数々の切り絵作品を手掛けている方がいます。

  •  「切り絵×花言葉」をコンセプトに、今の自分の気持ちにあった花言葉や、季節の花をモチーフにした花の切り絵を数々制作してきた切り絵作家のJunさん。前職は建築事務所で建築士として働き、その後将来のために英会話を学ぼうと英会話スクールに転職した時のこと。英会話スクールの掲示板を作る作業から、切り絵にはまり、今に至るそうです。

     そもそもなぜ「花言葉」をコンセプトに作品を制作しているのか聞いたところ「ただ作品を制作するのではなく、作品を通じて見る人にメッセージを伝えるといった表現を大切にしています」とのこと。作品に込められた思いや、こう感じてもらいたい!といったことが、身近にある植物で視覚的にも一番伝わりやすい花言葉で表現しているそうです。そのようなこともあり、一風変わった幻想的な切り絵として世界観を味わってほしいという思いから「切り絵の色付け方法」のような制作の裏側までは見せないというJunさん。



     そもそも、はじめた頃はそこまで花言葉に詳しくなかったとか。切り絵を制作するにつれてどんどん調べるのが楽しくなり、花言葉の由来などを日々学んでいるそうです。作品は、Junさんの今の気持ちにあった花言葉の花を調べて切り絵を制作するパターンと、今の季節の花を切り絵にする2パターンがあるとのこと。後者はさらに「その花と花言葉がどう思っているかなど感じ、今の私の感情一致した際にだけ制作するようにしています。その方が作品にしっかりと向き合って制作でき、表現できるからです」と、花の気持ちになって作品を考えることが多いようでした。

     数ある花の中でも、フィリピン諸島に分布する青、緑色のツル科の花「ヒスイカズラ」が一番好きというJunさん。そのダイナミックな姿と独特な色合いに一目ぼれしたそうです。花言葉では、アルストロメリアの「未来への憧れ」という言葉が、まだ切り絵作家として芽が出ていなかった頃、花屋で見つけた時に自分の夢と重なり、励みになったことを今でも忘れられないとのこと。

     そして現在、切り絵作家として活躍されているJunさんに、思い出深い作品について聞いたところ、丸の内の商業施設「KITTE」に展示された「祝福の羽衣」とか。悲しみの花言葉の花々(真ん中)を幸福の花言葉の花々(周り)が包み込んでいるような構図となっているそうです。「これは自分が辛い気持ちに陥っていた際に、周りの人が支えてくれたその幸せをカタチにした作品で、自分のように悲しく、塞ぎ込んでいる人に見てもらい、少しでも明るい気持ちになってもらえたらと思い制作しました」とJunさん。こちらの作品は、下書きに1週間、切り絵で10日、着色に3日ほど時間がかかったそうです。なお、制作期間はKITTEに展示された作品の場合は5~7日、大きい作品ともなると1か月近くかかるそうです。

     最後に、これから挑戦したいことを聞いてみたところ「これは夢でもあるのですが、切り絵で作った花言葉図鑑を作り、見る人全てに花それぞれの感情を伝えていけたらと思います。また今後も多くの方にその魅力を伝わるように各地で展示など行えたらと思います」と語って下さいました。

    <記事化協力>
    切り絵作家Junさん(Twitter:@jun_cutout / instagram:jun.cutout)

    (黒田芽以)

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