病院や公共施設、スーパーなどでも必ず見かける、障害者用の駐車スペース。駐車場が混んでいて他に停める場所がなくても、バリアフリーのためには体が元気な人は開けておきたいスペースです。しかし、その駐車スペースの横にあるゼブラゾーンに車を停める不届き物が……。そんな状態がツイッターに投稿され、物議となりました。
この写真を投稿したのは、車いすユーザーでモデルやタレント活動を行っている、日置有紀さん。
「今日もあったけど、身障者用駐車場の斜線部分や、身障者用駐車場が2台とも埋まってるのに、そこに停まってる車と車の間に無理矢理停めたりするの辞めて欲しい。これをされると、車に戻ってきた時に自身の車に乗り込む事が出来なくて待つしか無いから、身障者用駐車場が空いてない事よりキツイです」と、その時見た光景を写真に撮って投稿しています。
日置さんは脊髄の病気により歩けない状態。現在は電動車いすで行動しながら芸能活動などを精力的に行っています。そんな日置さんの日々の買い物などは、車で移動して障害者用駐車スペースに停め、車いすに移ってから店内に移動するという形。この車いすに移る時に、ドアを大きく開けて車いすを開けた横に置き、体をずらして移乗する必要があります。そのためには、ゼブラゾーンなど乗り降り用スペースは必要。(場所によってはゼブラゾーンではなく、障害者スペース1台分を幅広くとって乗り降りのスペースを空けているところもあります)しかし、写真のようにそのゼブラゾーンや、乗り降りに用意されたスペースに割り込んで車を停める人がいるようです。
この写真を見た人からは、「自分も車イスで車を運転するのですが、よくやられます、本音を言うと腹ただしいです」「何回も経験あります。店員さんにお願いして店内放送してもらっています」といった当事者からの声や、「ドライバーは斜線部分は進入禁止なのを認識してるはず。だからこの人達は確信犯ですよね」と、ゼブラゾーンについての認識のなさやマナーの悪さに対しよく考えて欲しいといった意見、さらに、「私は店員側ですが、お呼び出しして、10分お車にお戻りにならない場合は、勝手ながら、許可があれば、相手方の車ではなく被害者側のお車を乗り込める位置まで移動してお帰り頂く形を取らせて頂いてます。その後、相手方の車の前にはコーン、貼り紙を貼り、再発防止策を取っています。」という現場の声も。
今日もあったけど、身障者用駐車場の斜線部分や、身障者用駐車場が2台とも埋まってるのに、そこに停まってる車と車の間に無理矢理停めたりするの辞めて欲しい💦
これをされると、車に戻ってきた時に自身の車に乗り込む事が出来なくて待つしか無いから、身障者用駐車場が空いてない事よりキツイです。 pic.twitter.com/5HLU23lbyH
— 日置有紀 (@HIOKIYUKI) June 5, 2019
■ 身障者用スペース横のゼブラゾーンはなぜ必要か
ここで、改めてその必要性を考えてみましょう。平成18年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」が施行され、多数の人が利用する施設付帯の駐車場については、障害があっても利用しやすいものとするよう定められています。その結果、障害者用駐車スペースが明確に定義されるようになりました。
国土交通省の「道路の移動円滑化整備ガイドライン」第6章には、
身体障害者用駐車施設の幅は、高齢者・身体障害者、特に乗降幅の必要な車いす使用者の乗降が可能となるよう、幅2.1m程度の車体用スペースに、車いす使用者が転換できるとともに介護者が付き添える1.4m以上の乗降用スペース幅を加えた3.5m以上を確保する。なお、乗降用スペースは、前方・後方からの駐車の場合の乗降及び助手席からの乗降を考慮し、車体用スペースの両側に設けることが望ましい。車体用スペースは、近年、車体の大きい福祉車両が増加傾向であることを鑑み、上記の幅に加え、福祉車両の大きさを考慮した幅にすることや、長さ・高さも対応することが望ましい。また、地表面は、段差・勾配があると、車いす使用者の乗降が困難となるため、可能な限り平坦とする必要がある。
とあり、充分な広さを設けるように施設側が設置する義務があります。しかし、せっかくの障害者用スペースやゼブラゾーンにモラルもマナーもない健常者が居座ることに対する取り締まりについては、まだ法的な措置がとれない状態。ドライバーのモラル任せな側面となっていることが浮き彫りになっています。
■ パーキングパーミットは全施設に広まるのか
そんな状態を改善しようと、「パーキングパーミット制度」が、各自治体で取り入れられつつあります。この制度は、障害者等用駐車スペースを利用できる対象者の範囲を設定し、条件に該当する希望者に地域の協力施設で共通に利用できる利用証を交付するもので、利用証により、駐車車両を識別し、不適正な駐車を抑止することを目的としています。
平成29年5月時点で、36府県3市(岩手県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、石川県、福井県、山梨県、長野県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、川口市、久喜市、那覇市)が導入していますが、公共施設への導入が多く、まだ全施設への制度導入には至っていないのが実情のようです。
海外ではこの制度を不正利用する違反者の取り締まりを警察が行っているところもあります。
この制度は、利用対象者数に見合う駐車区画が不足していることなどが課題としてあげられているものの、地方公共団体のうちの約9割において、障害者等用駐車区画の適正利用が促進されたと回答しており、ほとんどの地方公共団体においてパーキングパーミット制度の効果があったとしています。
都市部の駐車場問題など、課題の多い障害者用スペースの確保とマナー、モラルの向上についての難しさなどがある問題ですが、ドライバー一人一人の良識がこの問題を解決してくれるのではないか、それに尽きると思います。
<引用・参考>
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)
国土交通省「道路の移動円滑化整備ガイドライン」第6章(PDF)
国土交通省 3.パーキングパーミット制度の現況について(PDF)
他
<記事化協力>
日置有紀さん(@HIOKIYUKI)
(梓川みいな)