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馬とともに変化する景色とお酒を楽しむ「馬車BAR」帯広の街をゆく

 一般の競馬で走るサラブレッドより脚も太く、体も一回り以上も大きくたくましい体つきの馬が競う、世界でも北海道・帯広だけというダイナミックなばんえい競馬。そのばんえい競馬で活躍していた馬と一緒に帯広の街を巡る「馬車BAR」が話題を呼んでいます。

  •  一般的な競馬は、サラブレッドなど“軽種馬”に分類される馬に騎手がまたがり、レースをするもの。しかしばんえい競馬は、ペルシュロンなど体の大きな“重種馬”に分類される馬たちが、騎手が乗る負担重量付きの鉄ソリを曳き、丘の障害が大小2か所設置された200mの直線ダートコースで競われます。

     体重1トンを超える馬たちが、ソリに乗った騎手の励ましにこたえ、息を整えつつ丘を越えていく姿は大迫力。騎手は馬の息遣いを確かめながら、絶妙のタイミングで馬に合図を送ります。見ている側も馬と一緒の感覚になり、障害を越える時は知らず知らずのうちに力が入ってしまうことも。

     ばんえい競馬の「ばんえい」は漢字で「輓曳」と書き、ソリや馬車などを牽引することを指します。このため着順を決めるのは一般的な競馬とは逆の、ソリの最後尾がゴールラインを通過したとき。馬の体はゴールを通過していても、そこで立ち止まって逆転されることもあり、レースは最後まで目が離せません。現在では帯広市でのみ開催されており、人と馬とが息を合わせて共に歩んできた、北海道開拓時代からの馬文化を伝える世界で唯一の競馬です。

     そんなばんえい競馬の街、帯広に登場したのが「馬車BAR」です。ばんえい競馬を引退した馬が曳く馬車に乗り、お酒を楽しむ一風変わったお店。2019年4月に開店してからというもの、6月末で約1000人の利用者があったといいます。

     帯広を中心とした十勝地方には、世界唯一の「ばんえい競馬」以外にも素晴らしい文化があるにも関わらず、それが活用されていないことに疑問を抱いたという馬車BARの永田剛さん。帯広の歴史と文化、生活を支えてきた馬文化を、地域の観光資産にすることでオンリーワンなコンテンツが出来て、地域の発展に役立つと考え、このプロジェクトを始動したんだとか。

     街なかの一般道で馬車を運行することの苦労を伺ったところ、同じ道路を走る自動車におびえない賢い馬を選ぶことと、その馬と馬車を自動車だらけの中で操る技術を持つ馭者(ドライバー)を見つけることが、一番難しかったことだといいます。

     馬車BARを曳くのは、2018年10月21日のレースを最後に引退したムサシコマ号。「コマちゃん」という愛称で呼ばれています。馬車BARのお勤めがある日の一日は、十勝ヒルズという近隣の観光ガーデン内にある専用の馬房と角馬場(運動場)にいるそうです。

     日中はのんびりと草を食べたり、昼寝をしたりして過ごし、夕方になると専用の馬運車に乗り込み、約20分の道のりで街に向かうとのこと。十勝随一の賑わいを見せる帯広の喧騒の中で、コマちゃんが暴れたり、固まって動かなくなってしまったりはしないのか聞いてみたところ「幸いそのようなトラブルはありません」とのこと。

     馬車BARのTwitterでも、信号待ちをしている際に、コマちゃんとふれあいに来た親子に対してもコマちゃんは怖がる様子もなく、顔を撫でられる様子が投稿されていました。サラブレッドに比べると重種馬は温厚な性格が多い、と聞きますが、コマちゃんもおおらかな心の持ち主のようです。

     馬車BARの運行は、毎週月・火・金・土の4日間、18時、19時、20時の1日3便。帯広駅徒歩3分の場所にあるHOTEL & CAFE NUPKAが発着点です。第1便出発の1時間前には馬車を保管してある場所に着いて、馬装を整えるなど支度を始めるとのこと。季節の関係もあるようですが、現状は19時出発の便が人気だそうです。

     バーとなっている馬車は2階建で、全席指定となっています。定員12名の1階席は日本の観光馬車になかった上質な設えにしているそうで、特に座席のソファーは儀装馬車も手がける、宮内庁御用達の家具工房に特注したとのこと。街中の展望を愉しんでもらいたいとの思いから、定員6名の2階席は屋根も壁も無いフルオープンな空間にしているそうです。お酒は十勝産大麦麦芽100%のクラフトビールで、料金は1、2階とも50分3240円(税込)。




     永田さんに馬車から眺める景色で、一番おすすめの場所を教えていただいたところ「特に、にぎやかなのが「北の屋台」前(西1条南10丁目)周辺が面白いですね」とのことでした。

     今後は「一般運行だけでなく、イベント的な場として馬車BARを活用して頂ければ」という永田さん。グループでの貸切や、ドリンク・フードの特別便も検討しているといいます。今までの帯広の風景に、さらに魅力を添えるものとなりそうですね。予約など詳細は「馬車BAR」公式サイトで確認してください。「馬車BAR」Twitterアカウント(@BASHABAR1)では、運行の様子が投稿されています。

    ※馬車BARの運行は、天候や馬のコンディションにより当日や直前に運休する場合もあります。

    <記事化協力>
    十勝シティデザイン株式会社 馬文化事業部
    馬車BAR(Twitter:(@BASHABAR1)/HP:bashabar.com

    (黒田芽以)

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