病院や公共施設などのエレベーターの扉があいた、真正面にある大きな鏡。左右には車いす対応の行き先ボタンが付いていますが、奥の部分に大きい鏡が設置されているエレベーターも少なくありません。この鏡の用途、実は車いすのためのバックミラーだったのです。

 社会問題・課題をテーマにした小さな文庫シリーズ「すーべにあ文庫」の公式ツイッターで連載している、「車いすあるある」シリーズ。その一つとして紹介されたのが、「エレベーターについている大きな鏡……。実はあれ、姿見ではなく車いす用のバックミラーなのです(車いすは降りるときに後ろ向きが多いため)。見えないとぶつかりそうになることも。最近は知られてきましたが、何度でも伝えたいです!」というツイート。鏡の前で女性が立って化粧直ししている姿と、その後ろで、「見えない……」と困っている車いすユーザーの姿のイラストがツイートともに添えられています。

 このツイートを見た車いすユーザーからは、「イラストのような事態にはよく遭遇しますね」「毎回、なんで車椅子なんか乗んなきゃいけねーんだクソ!と思う鏡でもある」「あれは車いすに乗ったことがないとわからない人が多いでしょうね」と、その鏡に対してユーザーならではの目線で感想がリプライされる一方で、「初めて知った」「今まで知らなかった」という声も多く寄せられています。

 車いすを介助なしでひとりで使用する場合、エレベーターの中では出口方向に転回することが難しいので、車で言うところの「前向き駐車」状態になります。この場合、困るのがエレベーターから降りる時。車のようにバックミラーやサイドミラーがないので、後ろの状態が分からないままバックして降りることとなってしまいます。しかし、エレベーターの中に鏡が付いていれば、後ろの確認をすることが容易になるので、誰かにぶつかる心配が少なくなります。

 介助者がいる場合、車いすを押して介助する場合は降りる時の事を考えて、バックで駐車するような感じで車いすを介助者が転回させてからエレベーターに乗れますが、ひとりで車いすに乗る場合、あらかじめバックでエレベーターに乗ることは困難。このために大きな鏡が役に立つという訳です。

 意外とこのエレベーターの中の鏡の存在の意味について知らない人が多く、先のツイートのリプライにも、「車椅子の方用の鏡です乗降時に注意しましょう、と書いてあるといいのに」「健常者の目の高さに、この鏡の意味を切り文字で表示すると良いと思う」などといった意見も出ています。ぐずった赤ちゃんに鏡を見せると落ち着くことがあるので、見せている事もあった、という声も上がっていました。

 エレベーター内に車いすユーザーがいない場合は、姿身代わりにするもよし、赤ちゃんに見せるもよしかと思います。しかし、車いすで単独でエレベーターを使う人、手押し車で歩行できる足が不自由な人が同乗している場合は、この鏡はバックで降りるために重要な役割を果たしますので、そういった人が同乗している場合は、鏡の前を極力空けておきたいですね。混雑している場合はなかなかそれも難しくなりますが、そういう時こそ、介助を買って出るチャンスかもしれませんよ。

 すーべにあ文庫さんの「車いすあるある」シリーズは、BEYOND GIRLSさんという車いすユニットがネタ提供しており、今後、このシリーズはどこかにまとめる予定もあるそう。あるあるから学ぶ、誰でもできるバリアフリーという感じになりそうですね。

<記事化協力>
すーべにあ文庫さん(@souvenir_bunko)

(梓川みいな)