これまでより3倍の精度を持ち、ノイズにも強い新世代のGPS衛星(GPS III)の2号機が2019年8月22日(アメリカ東部時間)、フロリダ州ケープカナベラルからデルタIVロケットで打ち上げられ、初期の軌道投入に成功したと打ち上げを担当したULAが発表しました。

 ロッキード・マーティンが製造し、第1グループ合計10機が打ち上げられる第3世代GPS衛星。現在使われているGPS IIR-Mと比較して3倍の位置測定精度を誇り、電波妨害に対しても8倍強いという特長を持っています。また、設計寿命も従来の倍となる15年で、丈夫で長持ち、しかも高性能という人工衛星です。


 2018年12月に行われたGPS IIIの1号機打ち上げはスペースXが担当し、ファルコン9ロケットが打ち上げ機として使用されましたが、今回の打ち上げを担当したのはULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)。アメリカで初めての有人軌道周回飛行を実現したアトラスや、日本初の気象衛星ひまわりを打ち上げたデルタなど、伝統と信頼のあるロケットシリーズを運用している企業です。

 GPS III2号機の打ち上げに使用されたのは、デルタIVロケット29号機。長い歴史を持つデルタロケットシリーズの現行型で、これが最終号機となりました。デルタロケットは日本のN-I、N-IIロケット、H-Iロケットにその技術が活かされており、日本でも馴染み深いロケットといえます。

 様々な固体ロケットブースターやペイロードフェアリングの組み合わせにより、多くの種類の衛星打ち上げに柔軟に対応できるデルタIVですが、今回は直径4m、全長約63mのペイロードフェアリング、2本のノースロップ・グラマン製固体燃料ブースターロケット(直径約1.5m、全長約16.2m)を装着した「デルタIV ミディアム+(4,2)」と呼ばれる仕様でした。

 フロリダ州にあるアメリカ空軍ケープカナベラル基地から、2019年8月22日の午前9時6分(アメリカ東部時間)に打ち上げられたデルタIVロケットは順調に飛行を続け、ペイロードのGPS III2号機を初期の軌道に投入。打ち上げは成功しました。これでULAは135回連続で打ち上げを成功させたことになります。

 デルタIVロケットによる最終の打ち上げとなった今回のフライトを受け、ULAの政府・民間プログラム担当副社長のゲーリー・ウェンツ氏は「私たちはデルタIVの残した確かな遺産を誇ると同時に、これから生み出される新世代のロケット『バルカン・セントール(Vulcan Centaur)』に対して希望を抱いています」とコメントを発表しています。

 ULAによる次回のロケット打ち上げは、ボーイングが開発した有人宇宙船CST-100「スターライナー」の無人打ち上げ試験。アトラスVロケットを使用し、弾道飛行を行って宇宙船の機能や、大気圏再突入時のデータを収集する予定となっています。

<出典・引用>
ULA プレスリリース
ロッキード・マーティン プレスリリース
Image:ULA/Lockheed Martin

(咲村珠樹)