ふと夜中の薄暗い道に公衆電話のボックスの灯りを見かけると、何となく現実ではないどこかに繋がりそうに見えてくることって、ないですか? そんな「ここではないどこか」に繋がりそうな幻想的な公衆電話の絵が、多くの人の心を揺り動かしています。

 「今は亡き人と話せる公衆電話シリーズ」というタイトルで、4つの公衆電話のイラストをツイッターに投稿しているのは、青を基調とした作品をつくっているYasさん。

 1枚目の絵は、宇宙空間の中にポツンと設置されたような、無数の星を背景に描かれている電話ボックス。灯りはともっていないようです。

 2枚目は、電話ボックスに星を繋いで星座のようになった点と線、上部には月の満ち欠けの一覧、そして電話本体は星座表のような電話ボックス。こちらは天井には灯りがついて、床ははっきりとした光を発しています。その光は、星がぼんやりと見える暗い道路わきをぼんやりと照らしている様子。もしかして、この星を繋いでいる点と線は、この世とあの世を結ぶたった一つの回線なのかも……。

 3枚目は、2枚目の電話ボックスとちょっと周囲が違うような背景ですが、無数の星を背に、電話の受話器のマークが付いた電話ボックスの中にある公衆電話。電話機には銀河と、3つの星を繋いだような星座のような点と線。深い紺色の中で、唯一明るい水色は、電話機のプッシュボタンが付いている盤面と、たまに星が集団になって明るくなっているところのみ。

 そして4枚目は、公衆電話機の本体だけの絵。小銭を入れる部分とテレホンカードを入れる部分、そしてプッシュボタンも一般的な電話機と同じく9つ並んでいます。3枚目の絵と同じ物のようにも見えますが、こちらには星座のような点と線が付いていません。ただ、天の川のような銀河を背に、受話器にも銀河が流れています。

 こんな無数の星空を実際に目にしたのは、何十年前だったかな……そんなことを絵を見ながらぼんやりと思っていたのですが、これはこの世とあの世を繋ぐ電話機だったことを思い出し、ちょっとリプライを覗いてみました。

 みなさん、やはりかけがえのない人たちや、飼っていたペットたちとお話をしたいみたいですよね。この電話機はYasさんの設定では、ペットとも直接会話ができるのだそうで……。近親者を亡くして茫然自失な人は「こんな素敵な公衆電話が本当に実現したら…と思ってなりません」と。「今は亡き友人に謝りたい」という人には、そのご友人に気持ちが伝わっているよ、と背中を撫でてあげたくなる気持ちに。

「もっと、何気ない会話でもいいからたくさん話をしておくべきだった」

 そんな想いが、リプライにあふれています。Yasさんは誰とお話したいですか?と聞いてみたところ、お祖父さまと曾祖母さまとのこと。自分のルーツや、親が自分よりも若かった時、子どもだった時のこととか、確かに聞いてみたいことってたくさんあります。筆者も、ずいぶん昔、自分が生まれる少し前に曾祖母が亡くなったと聞かされました。

 そして、子どもの頃は遊ぶのに夢中だった母方実家への里帰り。隣には子どもの足でも登り切れる程度の山があるような田舎ですが、その頃は自分の母が当時の自分と同じ年の時、どんな子だったのかな、なんて聞いてみたいなと……思いが尽きなくなってきます。実家とかなり離れた場所で暮らしている今、諸々なことが重なって実家に帰省することさえままならない状態ですが、後悔しないように、もっと話をいっぱいしたい、自分のルーツとなる両親のそれぞれの子ども時代から自分と同じ年の頃、何を考えていたかとか、色々知りたい……そんな思いが浮かんで、胸がギュッとなるようでした。

 筆者には、3歳でこの世を去った愛猫がいました。ある日突然気が付いた、悪性リンパ腫。何度も入院したり処置を受けさせたり、まだ若いこの子を救いたい一心で動物病院に通い、そして私がどうしても抜けられない用事のときに入院していたその猫は、息を引き取りました。今電話してみたら、何て言うだろう?私が受けさせた治療は、もしかしたら愛猫にたいする自分のエゴだったのでは?何度も何度も自問自答を繰り返して……。

 今、筆者宅には元気な2匹の猫がいます。もちろん、この子たちも大事な私の子たち。でもたまに思うんです。頭がよく、私の相棒ともいえる存在のあの子の魂をこの2匹が分かちながら引き継いでいるのではないかな、と。だからあの宇宙のような公衆電話で聞いてみたい。今何をしているの?って。「お母さんの膝で寝てるけど、お姉ちゃんの部屋に入りたいって大騒ぎもしているよ」って答えが返ってきたら……。

https://twitter.com/yasuta_kaii32I/status/1224294302064340997

<記事化協力>
Yasさん(@yasuta_kaii32I)

(梓川みいな)