アメリカ海軍は2020年2月12日(現地時間)、カリフォルニア州沖の太平洋にある試験海域で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射試験を行ったと発表しました。これは潜水艦が搭載するミサイルの性能を確認するため、定期的に実施されるものです。
いわゆる「戦略型原潜」に分類される、弾道ミサイル搭載型原子力潜水艦は、アメリカ海軍の核戦力で中心をなす存在。原子力潜水艦は行動の秘匿性が高く、気づかれずに目標に接近して、潜航したままミサイルを発射するので、相手にとって大きな脅威となる存在です。
地上から発射する大陸間弾道ミサイル(ICBM)と同じく、いざという時のために保有しているSLBMは、使いたい時に所定の性能を出せる状態にあるか、燃料交換をともなうドック入り後、戦列に復帰する前に確認しておく必要があります。この試験をアメリカ海軍では、DASO(Demonstration And Shakedown Operation)と呼んでいます。
DASOの目的は、ミサイルとその発射システムの性能確認とともに、潜水艦がいざという時、定められた手順に従って攻撃(ミサイル発射)ができるかどうかを確認する目的もあります。普段は発射直前までの手順をシミュレートするだけですが、乗組員に実際の発射を伴う経験をさせ、実戦艦としての練度を高めるのです。
今回DASOを行ったのは、オハイオ級原子力潜水艦の16番艦、メイン(SSBN-741)。1995年に就役し、最大で24発のトライデントSLBMを装備するほか、艦首に21インチ魚雷発射管を4門備えています。DASOは、2019年5月9日に潜水艦ロードアイランド(SSBN-740)が、フロリダ州ケープカナベラル沖の大西洋上で実施して以来です。
試験はカリフォルニア州サンディエゴの沖合にある、西部発射試験場で実施されました。メインは定められた命令系統に従い、ダミー弾頭を装備した寿命延長型トライデントII(D5LE=Life Extended)を1発発射。アメリカ海軍の発表によれば、ミサイルは発射から着弾まですべて安全な海上を飛翔し、試験は順調に終了したといいます。
今回の試験成功で、アメリカ海軍ではトライデントII(D5)、寿命延長型トライデントII(D5LE)の発射は177回目の成功であると発表しています。重ねて、今回の発射試験は現在の世界情勢とは全く関係なく、何年も前から潜水艦の整備間隔に合わせてスケジュールが決定されており、アメリカの軍事力を誇示する目的でもないとも発表。試験だけをとっても、SLBMがいかに様々な憶測を呼ぶ兵器であることを感じさせます。
<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)