イギリス空軍は2020年6月2日(現地時間)、NATOのバルト3国防空任務でリトアニアに派遣されている戦闘機部隊が、バルト3国の領空に接近したロシア軍の電子偵察機に対してスクランブルし、当該機を警戒空域外に退去させたと発表しました。
バルト海はフィンランド湾を介してロシアに接しており、最奥部に大都市サンクトペテルブルクが控えるため、ロシア軍の航空機や艦船が頻繁に行き来しています。しかもフィンランド湾は幅が狭く、航路を少しでも外れると湾の両岸にあるフィンランドやエストニアの領空・領海に接近してしまう微妙な立地です。
ロシアと国境を接するバルト3国はNATOの最前線に位置しますが、国力が小さいため戦闘機を擁する空軍がありません。そこでNATO加盟国の空軍が持ち回りで防空を担当する、バルト海防空協定(Baltic Air Policing)が結ばれています。
2020年5月からは、イギリス空軍の第6飛行隊(ユーロファイター・タイフーン)とスペイン空軍の第15航空団(F-18C/D)がリトアニアのシャウレイ基地に、そしてフランス空軍1/2“シゴーニュ(こうのとり)”飛行隊のミラージュ2000-5がエストニアのアマリ基地に進出し、バルト海周辺空域の警戒にあたっています。
6月2日のスクランブルで発進した、イギリス空軍第6飛行隊のユーロファイター・タイフーンがバルト海上空で遭遇した相手は、ロシア軍の電子情報集取機Il-20でした。海上自衛隊が保有するEP-3電子偵察機とほぼ同規模で、同じ用途の航空機です。
実際にスクランブルでロシア軍のil-20に接触したパイロットは「私にとっては、こちらに着任して最初のスクランブルで、コールを聞いたときはアドレナリンが出ましたが、いざ空に出たら重要なのは冷静にプロフェッショナルの態度でいることで、NATOの空域における安全と安心を確保するため、できる限り迅速に対象機と接触することでした。これまでの訓練は、こういう事態のためにあるので、うまくやれたと思っています」と語っています。
イギリス空軍リトアニア派遣部隊の責任者であるグゥインナット中佐は「日頃の訓練の成果として、今回のNATOスクラランブル任務が成功したことは、大変素晴らしいことです」とコメントしています。
2020年5月以来のミッションで、イギリス空軍が担当したのは今回が初めてですが、同じシャウレイ基地に進出しているスペイン空軍部隊は5月に6回のスクランブルを経験しています。イギリス、スペイン、フランスの3か国が担当するバルト海周辺空域の警戒任務は、8月いっぱいまで続けられる予定です。
<出典・引用>
イギリス空軍 ニュースリリース
Image:RAF, Crown Copyright 2020/スペイン空軍/フランス空軍
(咲村珠樹)