レイセオン・ミサイル&ディフェンスは2020年10月14日(現地時間)、アメリカ空軍の航空戦闘軍団(ACC)が、F-15Eにおける新型精密誘導爆弾「ストームブレイカー」の運用を承認したと発表しました。アメリカ軍で最も早くストームブレイカー運用能力を獲得していたF-15Eですが、これにより実戦使用が可能になります。

 新型精密誘導爆弾GBU-53/Bストームブレイカーは、小直径爆弾(SDB)に分類される爆弾で、都市部にあるテロ組織の拠点などを攻撃する際、周囲への被害を抑えつつ狙った目標だけを精密に撃破するために開発されたもの。現在運用されているGBU-39シリーズの後継となります。

 狙った目標だけを破壊できるよう、小直径爆弾は爆発や破片の飛散する有効範囲(Effective Range)を、おおむね半径10m程度に限定されるよう設計されています。その分、狙った目標への精密誘導技術が必要です。

 GBU-53/Bストームブレイカーは、弾体の先端に赤外線、ミリ波レーダー、セミアクティブレーザー誘導の3モード複合シーカーを備え、昼夜の別なく、どのような天候下でも精密な誘導ができるよう設計されています。

 また、弾体が小さいため携行弾数が多くなるのも利点。F-15Eの場合、7か所の兵装ステーションに最大で28発搭載可能となり、それだけ1回の出撃で攻撃できる目標が増えることになります。

 F-15Eにおけるストームブレイカーの運用試験は2019年6月に終了。この時点で運用能力を獲得し、あとは実戦運用できるかの運用承認待ちとなっていました。

 アメリカ空軍のF-15Eにおける運用承認を受け、レイセオン・ミサイル&ディフェンスでストームブレイカー開発計画を統括するクリスティ・スタッグ氏は「これまでに数多くの複合的シナリオ、多彩な目標、過酷な条件での試験を実施して信頼性を証明してきており、ようやく実戦使用が可能となります。マルチモードのシーカーとデータリンクにより、ストームブレイカーは気象条件を気にすることなく使用できます」とのコメントを発表しました。

 投下時における母機の速度と高度によりますが、ストームブレイカーは弾体に装備された滑空翼を展開し、約60〜70km滑空して目標に着弾します。投下後は自律的に設定された目標を捉えて滑空するので、投下母機はいち早く反撃から身を守ることが可能。より安全な攻撃ができることになります。

 アメリカでは、2020年中に海軍のF/A-18E/Fスーパーホーネットでも運用承認が見込まれています。また今後はF-35における運用試験も開始される予定。機内に収納して携行でき、F-35のステルス性を損なうことなく地上攻撃力を向上させることができるため、期待が寄せられています。

<出典・引用>
レイセオン・テクノロジーズ ニュースリリース
Image:Raytheon Technologies/USAF

(咲村珠樹)