人の命を預かる病院では、毎日が戦場みたいなもの。忙しい状態が続いていると、勢い、ナースステーション(詰所)内も殺伐とした雰囲気になりがちです。そこに看護の道を目指す実習生が入ってくると……。「気持ちは分からなくはないけどそれはちょっと」という実態を綴ったツイートが注目を浴びました。

 ツイッターに投稿したのは、とある病院で勤務医をしている「Dr.だすまんちゃん(以下だすまん先生)」。その内容とは……。

 「ナーススーテーションで看護学生さんが『一日よろしくお願いします!』って挨拶して全員から無視されてる現場に偶然居合わせたので、無視はあかんと思って無音で拍手する動作を送ったら看護学生さんから(え、何この人こわ…)って顔で見られた。無視され慣れてて彼らの中で無視が正解になってた説ある」

 続くツイートでは

 「声を出して挨拶し返すんでなく、そっと無音で拍手のジェスチャーしたのは看護師さんの注目を集めることなく看護学生さんに聞いてるよと伝えたかったからです。会釈でもよかったけど会釈やと短過ぎて逆に看護学生さんに気づかれないかもと思って。でも結局余計なお世話だったらごめんなさいねー」と、その意図を説明しています。

 このツイートには反響が続々。患者さん、看護教員、そして同じ境遇を経験した看護師たちからも多くの同意が寄せられています。

 だすまん先生は内科系の病棟に居合わせた時に、学生さんに「ちゃんと挨拶キャッチしたよ」の意味を込めてのジェスチャーを送っていた様ですが、却って学生さんが驚いてしまったのは、「正直看護学生が無視されるのはよくあることで、無視によって雰囲気が凍った感じではなかったです。学生自身も無視されなれている様子で、だからこそ逆に私のリアクションに対応できなかったように見えました」と語っています。医師から見ても、看護師は忙しそうにしていたそうで、それが挨拶無視に拍車をかけたのでしょうか……?

 かくいう筆者も看護師として病棟勤務時代には、学生さんの指導を受け持つ事もあり、なるべく学生さんが委縮しないように気を付けていたものです。過去の自分が、指導担当の看護師に質問したくても怖くて質問できず、レポートも赤字だらけで返されるなんて事がしょっちゅうでしたから……。

 ただ逆の立場になり指導者を経験すると、タダでさえ仕事しんどいのにプラスアルファで手当てが付くわけでもないのに(筆者の場合です)レポート見なきゃならない、実際に何も知らないような子が目の前をウロウロするといううんざり感は確かにありました。ここだけの話。

 患者さんの急変など、突然忙しくなるのが常日頃からある病棟勤務。看護師は絶えず受け持ちの患者さんに異変がないかをこまめに観察しています。特に、外科系は手術後の管理で観察点も多くあり、慣れないうちは全部把握するのはなかなか骨が折れたり、焦ってしまったりという事もありがちです。

 しかし、ピリピリしている状況であっても、挨拶はコミュニケーションの基本。無視するなんてとんでもない!と筆者は考えています。

 筆者が看護学生だった30年近く前も、実習は常に指導者さんとの恐怖と患者さんとの会話の板挟み状態。良好なコミュニケーションが取れる患者さんにあたった時は、つかの間の患者さんとの会話が唯一の癒やし。

 詰所ではピリピリした指導者さんに、レポートの内容の穴を詰められて半泣きのままケアの準備をするなどが常でした。それでも、挨拶は時間の区切り・けじめとして詰所内の職員が全員反応していたので、正直な話、挨拶無視は筆者も驚きです。

 看護は観察が基本。観察するには基本的なコミュニケーションを取れない事には始まりません。命をダイレクトに預かる立場にある看護師だからこそ、状況がピリピリしていても誰とのコミュニケーションも疎かにしてはいけないと、学生も指導者も経験してきた筆者は思うのです……。

<記事化協力>
Dr.だすまんちゃん(@dasmanchan)さん

(梓川みいな/正看護師)