かつてヨーロッパでは、長期間色あせない耐久性のあるインクの材料として、イカ墨(セピア)を使っていました。そんな歴史を思い出し、イカ墨インクを使ってみたくなるイカ墨専用の「イカ型ガラスペン」をガラス作家が試作。Twitterに画像が投稿されると、イカにもな出来栄えに注目が集まっています。

 イカ墨(セピア)をインクとして使うようになったのは、古代ギリシャの頃。一旦はイカ特有の生臭さが敬遠されましたが、その後イカ墨から顔料のみを取り出すことに成功。暗褐色の色合いは「セピア色」として、レトロっぽさを感じさせるものとなりました。

 さて、そんなイカ墨インクを使ってみたくなるような「イカ型ガラスペン」を試作したのは、生物系ガラス作家の増永元さん。普段は直径3cm以下という小さなとんぼ玉の中に、ガラスでできた生き物たちを閉じ込めたような作品を作ってらっしゃいます。

ガラス作家増永元さんのとんぼ玉作品(クラゲ)
ガラス作家増永元さんのとんぼ玉作品(磯の生き物)

 今回のイカ型ガラスペンは、普段のモチーフである生物観察をしている際、イカの姿を観察していて脚(ゲソ)のディティールが、溝が切られたガラスペンのペン先に似ている、というところから思いついたそう。確かに、イカが泳いでる時の脚の形って、シュッとまとまっていてガラスペンみたいですね。

 Twitterで「僕のイカスミ専用ガラスペンも見て(まだ試作中…)」と画像を投稿したところ大反響。「欲しい!」というリクエストも、リプライとしてたくさん寄せられました。

 素材は無色透明のガラスをベースにし、体の模様は細かく砕いた色ガラスをまぶして表現。ペン先にあたるゲソの部分と頭を一体で作り、別に作った胴体(外套膜とエンペラ)部分を最後に溶着して仕上げてあるそうです。

 増永さんによると、あくまでも今回の作品は試作(習作)であり、割れたりゆがんだりと思うようにイカず、まだ不本意な出来なのだとか。普段のとんぼ玉作品とは勝手が違い、イカんともしがたい面があるようです。

 また、今回はとんぼ玉で使っているソフトガラスで作ったそうなのですが、できれば軽くて硬いホウケイ酸ガラス(ボロシリケイトガラス)が使えるといいのですが……と語ってくれました。ボロシリケイトガラスはソフトガラスより融点が高いため、加工には酸素バーナーなど専用の設備が必要なんだそうです。

 そんな事情もあり「今回の欲しいっていう反響には驚いてますが、かなりクオリティを上げないと売り物にはできませんので……」と増永さん。新たな設備投資が必要とあって、早く欲しいとせっつく訳にはいきませんが、イカに納得のいく作品ができるか、待ち遠しいですね。

https://twitter.com/masunaga_gen/status/1361889852665470978

<記事化協力>
増永元さん(@masunaga_gen)

(咲村珠樹)