NASAは2021年5月11日(現地時間)、小惑星探査機OSIRIS-RExが小惑星ベンヌを後にし、地球への帰還を開始したと発表しました。小惑星からのサンプルリターンは日本の「はやぶさ(MUSES-C)」と「はやぶさ2」に続くもので、順調ならば2023年の9月24日に地球に到着し、サンプルの入ったカプセルを地上へ届ける予定です。
小惑星探査機OSIRIS-REx(Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security, Regolith Explorer)は、NASAゴダード宇宙飛行センターがミッション全体のマネジメント、アリゾナ州立大学のダンテ・ローレッタ教授が学術調査のトップとなって推進している、NASAにとっては初めてとなる小惑星からのサンプルリターン計画。宇宙機本体はロッキード・マーティンが製造し、2016年9月8日にULAのアトラスVロケットによって打ち上げられました。
目的地である小惑星ベンヌ(1999 RQ36)に到着したのは2018年12月。まずは周回軌道からベンヌの調査を行い、4か所のサンプル採取地点候補を選びました。
4か所のサンプル採取地点候補は、それぞれ鳥の名前から「ナイチンゲール(サヨナキドリ)」「キングフィッシャー(カワセミ)」「オスプレイ(ミサゴ)」「サンドパイパー(シギ)」と命名。このうちから「ナイチンゲール」クレーターが最終的にサンプル採取地点、バックアップ地点として「オスプレイ」が選ばれました。
OSIRIS-RExのサンプル採取方法は、日本の「はやぶさ」シリーズと似た形で、サンプル採取プローブのみを接地させ、窒素ガスを吹き付けて小石や砂を巻き上げ、採取するというもの。ナイチンゲールでのサンプル採取は2020年10月20日に実施され、搭載したカメラで着地の瞬間が確認されると、ミッションコントロールは歓喜に沸きました。
サンプルを格納する容器のフタが正常に閉じられ、サンプル採取に成功したOSIRIS-RExは、小惑星ベンヌの周回を続け、さらに多くの観測を実施。2021年4月7日に最後の観測を約6時間行い、およそ4000メガバイトのデータを4月13日にかけて、ゆっくりと(通信速度は412キロビット/秒で、通信可能時間は1日あたり4~6時間)地球へと送信しました。
最後の観測を終えたOSIRIS-RExはアメリカ東部標準時の5月10日16時23分、メインエンジンを7分間全力噴射。これによって時速約1000kmに加速し、小惑星ベンヌの引力圏を離れて地球への帰路につきました。
NASAのトーマス・ズルブチェン科学副長官は「OSIRIS-RExは多くの成果をあげ、探査がリアルタイムで展開する大胆で革新的な手法を実証してくれました。チームは困難に立ち向かい、そして今、私たちは原始太陽系の手がかりとなるサンプルを地球へと持ち帰り、科学者たちが何世代にもわたってその秘密を解き明かすことが可能になります」とのコメントを発表しています。
OSIRIS-RExは太陽の引力によって地球を目指し、途中でいくつかの軌道修正を実施して地球の引力圏へと帰還します。サンプル収納カプセルには、トータルで60g以上のサンプルが入っているとみられ、順調ならば2023年9月24日にカプセルをユタ州の着地点に向けて投下する予定となっています。
<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA/アリゾナ州立大学
(咲村珠樹)