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粋で愛あふれる「葬式の心得」 100歳祖母の終活観に共感あつまる

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 誰かが亡くなったときの弔い方は人それぞれ。しかし、生前託された遺言があるならば、子や孫としてはできる限り叶えたいもの。

 漫画家・きよきよさんの祖母が生前記したという「葬式の心得」がTwitter上で注目をあつめています。

  •  4年前に100歳で亡くなられたおばあさまは、生前から自身亡き後のため、「終活」を行っていたそうです。

     その中の一つにあったのが、子や孫たちにあてた茶封筒に入った手紙。亡くなったあとひらいてみてみると、書かれていたのが「葬式の心得」という十箇条でした。

    ■ 葬式の心得

    【葬式の心得】
    1、通夜も告別式もお別れ会程度にしておけ
    2、参列は子と孫のみ
    3、孫は仕事があればそちらを優先しろ
    4、孫嫁、曾孫は来なくてよい
    5、極力金をかけるな
    6、告別式、火葬、納骨は同日中に済ませろ
    7、香典はじめ生花、花輪、盛り籠は一切貰うな
    8、折角子や孫が集まったなら宴会しろ。その際は食事処『●●』でやれ。金なら払ってある
    9、49日やその他の法事はしないでいい。坊主にはその旨伝えてある
    10、遺された者は楽しく生きろ!
    以上

     葬式はシンプルに、でもせっかく集まったならみんなでその時間を楽しめ、というおばあさまの遺言。

     一つずつを読み解いていくと、「参列は子と孫のみ」「孫は仕事があればそちらを優先しろ」「孫嫁、曾孫は来なくてよい」と、親族すみずみへの配慮がかいま見えます。

     「告別式、火葬、納骨は同日中に済ませろ」は恐らく、葬式にともなう直近予定を一度に済ませることで、親族の負担(なんども行き来する事)を減らそうという配慮から。

     「参列は子と孫のみ」「香典はじめ生花、花輪、盛り籠は一切貰うな」と釘をさしているのは、親族以外の参列者や贈り物を受け入れると、お礼をしなければならないため。その手間を省かせるために書かれたものだとおもわれます。

     つまり一から十まで全ての親族を考えてのこと。深い愛情がこの十箇条にはあふれています。

    葬式の心得

     特に粋なのが「折角子や孫が集まったなら宴会しろ。その際は食事処『●●』でやれ。金なら払ってある」。きよきよさんによると、この願いはしっかりと遂行され親族全員で宴会をして葬式にともなう一連の行事を締めくくったそうです。

     ちなみに遺言とともに、自身の葬式で使用して欲しいという写真も同封されていました。写真は、亡くなる30年ほどまえに撮影された、着物をきて化粧もバッチリ決めた70代のおばあさま。それともう一枚、亡き夫(きよきよさんの祖父)の写真も入っていました。

    左70代、右100歳頃

     おじいさまは戦地から引き揚げた翌年、病により40歳という若さでこの世を去ったそうです。「私も会った事が無かったので写真を見たのが初対面になりました」ときよきよさん。

    おじいさまの写真

     おばあさまが亡くなったのが100歳、おじいさまが亡くなったのが40歳。夫が迎えにきても気づく範囲で、100歳を知る子や孫たちにとっても記憶にある範囲でという、ほぼ中間となる70代の写真が選ばれたのかもしれません。この乙女心も入り交じったであろう「若返り遺影」には、おもわず親族みんなで大爆笑だったそうです。

     きよきよさんは、遺影に指定された写真と100歳ころの写真も紹介しつつ「ホント最期まで笑わせられたわー」「親族爆笑のお葬式良き」とTwitterへの投稿の中で語っています。

     この投稿には6.9万いいねもつき、多くの方が共感したようす。きよきよさんのおばあさまのように、綺麗にこの世をさり、楽しく送られたいと願う人は少なくないようです。

    ■ 共感がある一方届いた批判 人が亡くなっているのに笑うのは不謹慎?

     一方で否定的な声もきよきよさんの耳には届きました。後のツイートでそうした意見にも丁寧に説明を行っています。

    「引用RTなどのコメントで『人が亡くなっているのに笑うとか不謹慎』とか遺影や葬儀のあり方について不愉快といったコメントをお見かけしますがそれは読み手が私のオバァを知らない事と自分の価値観で見ているからだと思います。平素繋がりがとても深く濃かったオバァは死についていつも諭してくれました」

     Twitterのツイート(投稿)は1つの投稿に140文字しか入力できません。このため、読み手はその中にある言葉から自分の経験などを照らし合わせて「行間」を埋めるべく「想像」を働かせます。

     「人が亡くなっているのに笑うとか不謹慎」と意見された方は、その人なりの経験や知識をもとに語ったのでしょう。しかし、きよきよさんが後の説明で語るように今回投稿した行間には「平素繋がりがとても深く濃かったオバァは死についていつも諭してくれました」という意味が隠されていました。

     茶封筒の遺書以外にも、生前から死後について親族と語り合い、言葉でも沢山の想いが託されたといいます。筆者のインタビューに対し、きよきよさんは次のように述べています。

     「生前から祖母はいつもその素っ頓狂な物言いで周囲を笑わせておりました。歳と言うこともあってか死についてもとてもポジティブに受け止めていて、死さえも笑いのネタにしておりました。生前『笑って送って欲しい』と言った事はありませんでしたが、親族は皆笑って送る事が当たり前の様に認識しておりました」

     つまり手紙はただの念押しで、おばあさまを含め親族内では生前からしっかりと認識の共有が行われていたのです。

     人が亡くなると「もっといろいろな思い出を作りたかった」という気持ちが胸に去来することがあります。それと同時に、普段の生活の延長に死を捉え、その日その日を悔いなく生きようと思った方も。

     現代では死を遠ざけ、普段の生活から縁遠く感じがちですが、人生には様々な出会いと別れがあるように、その人の個性にあふれた「おくり方」は、改めて故人の人となりを知ってもらう方法でもあります。先入観にとらわれず、それぞれの「らしさ」を表現することもまた、ひとつのあり方のような気がします。

     きよきよさんは、今回の記事化申請を行った際、筆者にこんなことを語っています。

     「人の終い方はそれぞれではありますが、誰もが迎える身近な人の死や自分の死について、どうあるべきか、どうありたいのかを考えた時、オバァの示した道が誰かの何かにお役に立てれば、オバァ自身喜ぶと思います」

    <記事化協力>
    きよきよさん(@kiyokiyokingdom)

    (宮崎美和子)

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