山を貫くトンネルは、山道を走る苦労を軽減してくれる重要な存在。トンネル工事には、掘り抜いて反対側に到達する「貫通」という行事があり、それまでの苦労が報われる大きな節目として扱われています。
トンネル工事を手掛ける福島県の建設会社が、県内の国道トンネル工事における「貫通」の様子をYouTubeに公開しました。掘削を進め、少しずつ外の光が漏れてくる光景は感動です。
福島県の寿建設株式会社は、1939年以来「トンネル屋」として歩み、昭和の終わり頃から官庁発注の一般土木工事も手掛ける建設会社。20年ほど前からは、蓄積したトンネル工事のノウハウをいかしたトンネル補修工事も行っています。
今回YouTubeに公開されたのは、県内川俣町で整備が進められている国道114号「関場トンネル」での貫通。福島県が浜通り地域の復興支援を目的として整備を進める「ふくしま復興再生道路」の一部で、大型車同士のすれ違いも可能になる延長243mのトンネルが2022年3月2日に貫通しました。
寿建設の森崎社長によると、掘削開始は2021年の9月後半とのことですから、5か月半ほどの期間をかけて反対側まで到達したことになります。ちなみに、この規模のトンネルでは片側からのみ掘削を進め、反対側まで到達させる例が多いとのこと。
用いられたのは山岳トンネル工事で標準的な、トンネル周囲の地山がトンネル自体を支えるという保持機能を利用した新オーストリアトンネル工法(NATM)。掘削機やコンクリートを吹き付ける専用重機を使って工事を進めます。
工事は、掘削に直接携わる8人組の班が昼夜で交代して従事したほか、工事全体の管理や測量、付帯する作業などを行う人員を含め、毎日30人ほどが働いていたとのこと。「今回の工事は周辺に民家が多かったため、特に夜間の騒音や振動に注意を払って掘っていきました」と森崎社長は語ってくれました。
貫通には地元住民の皆さんをはじめ、発注者、工事関係者ら約50名が立ち会ったそう。招待の案内をする関係で、1か月ほど前に残りの掘削距離や進捗状況から日程を設定したといいます。
当日は、司会の合図で掘削機が稼働。掘り抜いてポツンと開いた穴から、外光がまぶしくトンネル内に差し込みます。貫通を受け、参加者全員で祝福の万歳三唱が行われました。
トンネル工事では、掘削する先端の切羽に神様が宿ると考えられています。切羽が反対側に到達する「貫通」を迎えると、神様が宿る場所を踏み越してしまうため、貫通すると切羽をお酒で清めるのも恒例行事とのこと。
貫通という大きな節目を迎え、関場トンネルの工事は新たな段階に入ります。福島市から浜通りの浪江町を結ぶ国道114号。このトンネルを含む区間(山木屋1工区)は、2020年代初頭の開通が見込まれています。
3月2日、多くの関係者が立ち会いのもと貫通した、国道114号「関場トンネル」(福島県川俣町/延長=243m)の関係者記念撮影。https://t.co/JTFQ2ZCEUW pic.twitter.com/Dd14CBxigH
— 寿建設@福島 (@kotobuki5430511) March 8, 2022
<記事化協力>
寿建設株式会社(@kotobuki5430511)
(咲村珠樹)