ロシア軍の侵攻によって戦場と化したウクライナ。当地では軍だけでなく、一般市民もロシア軍に抵抗しています。

 その中で、侵攻が始まった初期にウクライナの農民が農業用のトラクターを使い、ロシアの戦車を強奪する様子が次々とネットで拡散されました。これを題材としたコインサイズの極小ジオラマ作品が、「私なりの反戦の意味を込めて」という思いとともに、Twitterに投稿されています。

 2022年2月末に始まった、ロシアのウクライナ侵攻。ウクライナでは軍だけでなく、一般市民も祖国の防衛に立ち上がり、各地で抵抗を続けています。

 まだ戦況がこれほど厳しくなっていなかった侵攻の初期において、Twitterで拡散されたのが、ウクライナの農民たちがトラクターを駆り、ロシア軍の戦車を奪う画像や動画。あちらで使われているトラクターは広い耕作地で使われるため大型・大出力で、数十トンある戦車すら牽引できることが分かります。

 この光景をモチーフに、10円硬貨(直径23.5mm)とほぼ同じサイズの極小ジオラマをTwitterに発表したのは、Fire Starterさん。スケールは1/700とのことです。

ジオラマは10円硬貨とほぼ同じくらい(Fire Starterさん提供)

 大きな1/6スケールから小さな1/700スケールまで、様々なサイズのAFV(装甲戦闘車両)モデルをフルスクラッチしているFire Starterさん。今回のジオラマはトラクターとT-72戦車の3Dデータが既にあり、頭にイメージが浮かんだため2晩程度で仕上げたといいます。

3Dプリンタで出力したパーツ(Fire Starterさん提供)

 ジオラマベースも3Dプリンタで出力したもの。トラクター、T-72戦車を組み合わせ、彩色しています。

形を整えたジオラマベース(Fire Starterさん提供)

 この小さな模型にもかかわらず、戦車の側面にはロシア軍部隊が記している「Z」のマーキングを再現し、これがロシア軍戦車であることを表現。トラクターのボンネット部分も、ウクライナの国旗である青と黄の色に塗り分けられています。

彩色も細かく再現(Fire Starterさん提供)

 もちろんウェザリングも完璧。春になると泥濘(でいねい)と化す特徴があるウクライナの土質を強く感じさせてくれます。

ウクライナの泥濘を表現(Fire Starterさん提供)

 モチーフの車両を収蔵している海外の博物館まで足を運び、実車取材や計測、素材の吟味などを重ねて完成まで2~3年かかる、という1/6スケール作品に比べ、小さい1/700スケールでは3Dプリントで比較的短時間で完成するので「肩の力を抜いて作っています」とのこと。

1/700スケールジオラマ最初の作品(Fire Starterさん提供)

 それでも「1/700でどこまで再現できるか?と毎回が挑戦です」と語るFire Starterさん。

1/700スケールジオラマ防御陣地に隠れる戦車(Fire Starterさん提供)

 今回の作品以外にも見せていただきましたが、対戦車ロケットを防ぐため鳥かご状の増加装甲を取り付けたストライカー装甲車の場合、装甲のディティールまで細かく筋が入っており、特異な姿を印象付けています。

ケージ(鳥かご)装甲を追加したストライカー装甲車(Fire Starterさん提供)
極小サイズに詰め込まれたディティール(Fire Starterさん提供)

 この作品は、2022年5月14日・15日にツインメッセ静岡で開催される「モデラーズフリマ」にて、Fire Starterさんのブースで展示されるとのこと。極小サイズに詰め込まれたディティール、きっと驚くはずです。

<記事化協力>
Fire Starterさん(@mxkid2)

(咲村珠樹)