主に海洋生物をモチーフにした陶磁器を制作している、陶芸家の岡村悠紀さん。

 岡村さんの作品は、ヨーロッパのアンティーク人形「ビスク・ドール」に影響をうけた「リアル」な表現に加え、陶器でありながら可動できるという「自在置物」としての「技術」が高く評価されています。

 先日は新作「かに座の蟹」をTwitterで紹介。陶芸家としての新境地を開く意欲作として、注目を集めています。

 「星座のカニってどんなカニ?と思いを馳せて焼き物で表現しました。全身に纏った星くずが特徴」

 岡村さんはこのつぶやきとともに、作品を持ち上げる様子を写真で公開しました。なお、今回の投稿写真は、カメラマンの野村知也さんが撮影しています。

 2022年7月16日から同月31日にかけ、東京都文京区にある画廊「ギャラリー・マルヒ」で開催される個展、「蟹工III」にあわせて制作された本作は、様々な「青」で彩られた煌びやかな蟹。海洋生物のリアルな表現もさることながら、「動く陶器」という岡村さんの得意とする技術が本作でも光っています。

 「私の作品は、『リアル』や『技術』に注目していただくことが多くありました。しかしながら、『人がどのように生物を解釈してきたか?』から、『表現したい題材』がやはり根底としてあります。これは分かりやすい点でいえば、『伝承』『伝説』、より身近に言えば『生き物の名前』といったものですが、それに向き合う一歩となったのが本作です。題材がかに座という「星座」のため、蟹についても、『宇宙』『星』といったキーワードをベースに選定しています」

 岡村さんが陶芸家としてのキャリアの中で、最も向き合ってきた海洋生物が「蟹」。編集部でも過去に、「モクズガニ」と、「青いワタリガニ」の作品を紹介しています。

海洋生物をモチーフにする中で、最も多く採用した「蟹」。

編集部でもこれまでに2度、岡村さんの「蟹」を記事にて紹介しています。

 個展が開催される7月16日の星座にもあわせて、今回はかに座で表現することにした岡村さん。「星を散りばめる」という作品コンセプトのもと、陶芸の技法で蟹独特の表面の“ブツブツ”を、釉薬やラスターを用いて焼き物としての彩りを生み出しています。

 一人の表現者として挑戦した本作。個展に先駆けての作品投稿には、「とても素敵」「キレイですね!」「わぁ美しい~」「これはいいですね!!」「かっこいい……」など、様々な言葉で好意的な反応が寄せられています。

 結果として1万を超えるいいねが集まる反響となりましたが、これに対し岡村さんは、感謝とともに次のような感想を抱きました。

 「多くの人にそれぞれの『かに座像』があること、特にかに座生まれの方ほど、より具体性があるのが興味深く感じましたね」

 「一方それは、『かに座の姿は無限にある』ということでもあり、多くの人が抱く姿に、自分が表現した作品も加えていただけました。陶芸家としてホッと胸をなでおろす瞬間でもあり、そしてこんなに幸せなことはありません」

<記事化協力>
岡村悠紀さん(@0kam)

(向山純平)