羊毛フェルトや、シートフェルトを使って造形する手芸作品は色々ありますが、多くは動物、スイーツといった「かわいいもの」がモチーフとなることが多いようです。

 そんな中、フェルトで「かっこいいもの」を作っているのは「あわわのおんつぁ」さん。過去作のモビルスーツ「シナンジュ」をTwitterに投稿しました。まるでガンプラのように、細かいディティールまで再現された力作です。

 あわわのおんつぁさんがフェルト手芸を始めたのは、10年前のこと。食玩の「仮面ライダーフォーゼ」なりきりキットのドライバーを収納するホルダーとしてぬいぐるみを作ろうと思い、入った手芸店で羊毛フェルトを紹介されたことがきっかけとなりました。

 最初はほかの初心者と同じく、市販のキットを使って1体作ってみて、要領を掴んだあわわのおんつぁさん。なんと2作目から難易度の高い人型の作品を作り始めたといいます。

 「さすがに仮面ライダーは難易度高かろうと思い、緋村剣心(るろうに剣心)にしました。当時実写版『るろうに剣心』が公開され、演じている佐藤健さん(『仮面ライダー電王』に主演)がライダー繋がりだったもので……。人型のキャラクターから作り始めたため、いまだに羊毛フェルトは“キャラクターを作るもの”という認識があります」

実写版の佐藤健さんをモチーフにした緋村剣心(あわわのおんつぁさん提供)

仮面ライダー電王など(あわわのおんつぁさん提供)

 今回Twitterに投稿したシナンジュは、3年ほど前に作った作品とのこと。仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズ、ウルトラマン、ドラゴンボールと人型のフォルムを持つ作品を作ってきて、次のジャンルとして選んだのが「ガンダム」でした。

 ここで、自身のことを「ひねくれ者」と評するあわわのおんつぁさん、素直にガンダムのどれかを作るという選択をせず、ライバル機であるシナンジュ(機動戦士ガンダムUC)を作ることに。搭乗するフル・フロンタルの名が「全裸」という意味だと知り、胴体に「全裸」と書かれたフル・フロンタル人形も仕込めるような仕様になりました。

胴体に仕込んだフル・フロンタル人形(あわわのおんつぁさん提供)

 さすがにディティールの多いシナンジュは羊毛フェルトで作るには複雑すぎ、細かくパーツを分割して作られています。素材もシートフェルトを重ね、ニードルで刺し固めるという独特の手法で、シートフェルトだけだと毛足が短く結合が弱くなるので、アクレーヌというアクリル繊維を接着剤のようにして活用しています。

 アクレーヌは染色の自由度が高いアクリル繊維だけあって、発色の良さが特徴。赤、黒、白、グレーはシートフェルトの色ですが、金の装飾などはアクレーヌを使って表現されています。

後ろから見たシナンジュ(あわわのおんつぁさん提供)

 各パーツにはネオジム磁石を仕込み、結合・分解が自由にできるような構造で、数十か所可動となっています。しかし、大きなパーツを保持するには磁力が足りなかったそうで、ポージングは直立、正座、寝姿勢の3パターンとなっているんだとか。

細かくパーツ分割されている(あわわのおんつぁさん提供)

 制作期間は約2か月。1日あたり4~5時間は針で刺す作業をしていたそうで、ざっと計算すると300時間ほど。さすがに「もう作りたくはない」と話してくれましたが、それもうなずけますね。

 シナンジュのような大物は大変ですが、あわわのおんつぁさんは定期的に作り上げた作品をTwitterに投稿しています。好きな仮面ライダーは「ハコ推し」だそうで、さまざまなライダーが次々と生み出されています。

仮面ライダーリバイスほか(あわわのおんつぁさん提供)

 そのフォルムはスマートで均整がとれており、まさに作品から抜け出してきたかのよう。ベルトやマスク、武器の細かなディティールも再現し、圧倒的な存在感を放ちます。

仮面ライダーオーズほか(あわわのおんつぁさん提供)

 どの作品にも共通しているのは「かっこいい」ということ。次はどんなかっこいいフェルト手芸作品が誕生するのか、気になる方はTwitterをチェックしておくといいですよ。

<記事化協力>
あわわのおんつぁさん(@onza_bubbles)

(咲村珠樹)