鉛筆と言えば当然ながら削って使うものですが、特定の世代の方にとって、なんとも削るのがはばかられる鉛筆の写真がX上に投稿され、大きな反響を呼んでいます。
その鉛筆とは、1990年代中頃に大ヒットした、ドラゴンクエストシリーズの「バトルえんぴつ」、通称「バトエン」。これは確かに削れない……削りたくない……!
「バトルえんぴつ」はエニックス(現スクウェア・エニックス)が1993年に販売を開始した「遊べる文房具」。
鉛筆にドラゴンクエストのキャラクターまたはモンスターが描かれており、交互に鉛筆を転がして出た面に書かれている文章に従って攻撃や魔法といった行動を行い、相手のHPを先に0にした方が勝ち、というシンプルなルールが当時の小学生中心に広く受け入れられました。
あまりの流行ぶりに、授業の妨げになることを懸念した学校では、持ち込み禁止令が出された……なんて話もよく耳にしたものです。
そんなバトエンを、今もなお所持していたのは、京都・嵯峨嵐山を拠点に、螺鈿(らでん)職人として活動する野村拓也さん。7月5日に開催する螺鈿体験ワークショップにて、鉛筆がたくさん必要になったため、母に使っていない鉛筆がないか尋ねたところ、削られていないバトエン11本が差し出されたのだそう。
もちろんバトエンは削れば普通の鉛筆として使えるので、母の選択は間違っていないのですが、削ってしまうのはなんとなく、バトエン界隈の流儀に反してしまうというか、プライドが許さないというか……とにかく、未使用のまま遊ぶのがイケてたのです。
それは野村さんにとっても同様。ブームが過ぎた今でもやはり「削ると価値がなくなってしまう」、そんなふうに考えていたようですが……背に腹は代えられません。泣く泣く削ることを決意し、必要な本数を確保したようです。
鉛筆を削り終わった後は「なにか大切なものを失った気がします」と、強い喪失感にさいなまれたという野村さん。「ドラクエのあのセーブデータが消えた時の不協和音が、頭の中をループしてます」と、計り知れないショックを受けていますが、バトエン世代の筆者にはその気持ち、よ~くわかります。
それは投稿を見た多く方にとっても同じで「削る勇気は俺にもないわ……」「これをけずるなんてとんでもない!」といった共感の声が続々と寄せられました。
対戦用として使われることは、おそらくもうないであろう野村さんのバトルえんぴつ。せめて体験ワークショップで、鉛筆としての役割を全うしてほしいものですね。
僕「母さん〜明日仕事でたくさん鉛筆が必要なんやけどある?」
母「あ〜あんたの小さい頃に使ってたやついっぱい残ってるで」
僕「。。。!!?」
母「?新品やし使えるやん」
僕「削れない、、俺には削れない、、」 pic.twitter.com/y1PhExaUQg— 野村拓也 螺鈿職人 (@takuyanomurardn) July 4, 2025
<記事化協力>
野村拓也 螺鈿職人さん(@takuyanomurardn)
(山口弘剛)