「うちの本棚」四十三回目となる今回も黒田みのる作品を取り上げます。
懇親の描き下ろし『ザ・KAMI』に黒田みのるの心霊研究家としての意欲が見られます。
昭和50年当時、心霊やオカルトのブームであり、ワイドショーでは心霊写真の鑑定をしていたりUFOの特番がくまれたしていたと思う。つのだじろうの心霊漫画も本作のあとくらいにブームになっていたのではなかっただろうか。
本作品でも黒田は心霊…霊魂や神について当時の心霊学にそって解説もしていて、これはつのだの『うしろの百太郎』に先駆けている。
また本作は全10巻シリーズの描き下ろし作品の第1巻にあたるものなのだが、残念ながらシリーズがキチンと完結したのかどうかは確認できていない。
黒田はこのような描き下ろし作品をこの時期から多く手がけていたような印象があって、その後にもオカルト作品の単行本や雑誌サイズの描き下ろし作品があった。
芸文コミックスという青年向けのシリーズであることから多少エロティックな表現も含まれる本作であるが、発表当時の状況などもあり、現在の目から見ればかなりソフトな印象ではある。が、黒田作品においてはそのあたりが巧妙というか、視覚的にはソフトでありながら妙にエロティックな雰囲気をかもしだすのがうまいのである。
物語は、小学6年のふたりの少年が、夕立に降られ近くの小屋に雨宿りに駆け込むところから始まる。小屋には男女ふたりが先にいて、どうやら男を裏切っていた女に怒り、彼女をレイプし殺してしまうのを目撃してしまう。少年たちに気づいた男はふたりも殺そうとするが、そのとき強い光がその場を包みふたりは光の圧力で小屋の外に放り出され、男は雷に打たれて死んでしまう。
成長したふたりはある企業で書類を運ぶアルバイトをしていたが、そこの総務課長が自分たちの横領をほかの社員になすり付けていたことを知る。が誰にも言えないまま時は過ぎる。やがてひとりは建築業に、ひとりは牧師となったが、牧師となった彼とつき合っていた女性を建築業に進んだ彼が奪ってしまう。そして、総務課長からも金をゆすっていたことを牧師の彼は知るのだった。
やがてそんなふたりにも神による裁きがくだされるときが来るのだった。
描き下ろしということもあってかコマ割りも大きめで画面もあまり描き込まれていないのだが、シリーズの1巻目として「神」をテーマにすることで黒田の意欲はかきたてられていたようである。
神はすべてを見ているというような結末ではあるのだが、結果的にはアンハッピーな印象であまり救いのある話しではなかったように思う。が、これも時代の空気なのかもしれない。
書 名/ザ・KAMI 著者名/黒田みのる 収録作品/ザ・KAMI(描き下ろし) 発行所/芸文社 初版発行日/昭和50年9月13日 シリーズ名/芸文コミックス・黒田みのる怪奇心霊書下し劇画 |
■ライター紹介
【猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。