アメリカ海軍横須賀基地は2020年6月15日、2017年に発生した民間船との衝突事故で損傷し、横須賀基地で修復工事を行ったミサイル駆逐艦ジョン・S・マケインが、任務復帰に向けての試験を6月2日付でクリアし、戦列に復帰したと発表しました。

 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の6番艦(フライトI)として、1994年に就役したジョン・S・マケイン(DDG-56)。マラッカ海峡を航行していた2017年8月21日、リベリア船籍の石油タンカーAlnic MCと衝突事故を起こし、乗組員10名が死亡したほか、5名の負傷者を出しました。


 アメリカ海軍がチャーターした重量物運搬船トレジャーに積載され、横須賀基地に戻った駆逐艦マケインは、横須賀基地のドックで修復工事が実施されました。2018年11月27日にドックを出たマケインは、修復工事完了後の2019年10月28日に試験航海を実施しています。



 試験航海で船の機能に問題がないことが確認された駆逐艦マケインは、戦闘艦艇としての能力を取り戻すべく、2019年11月から乗組員の訓練が始まりました。訓練内容は基礎的な運用から、本格的な戦闘訓練までいくつものフェーズに分かれ、およそ半年の期間を必要とします。

 駆逐艦ジョン・S・マケイン艦長のライアン・T・イースターデイ中佐は「この25週間もの間、我々は異なる戦闘課目の全てにわたって試験をクリアするべく、1つ1つ、そのことに集中しながら訓練を重ねてきました。最終的な戦闘での課題は、これまで訓練してきた全ての戦技を統合して次のレベルに昇華し、複合的な訓練シナリオの中で全てのことを同時に実行する、ということでした」と、訓練の最終段階について語っています。

 実際の戦闘では単純な訓練シナリオ通りにはいかず、あらゆることが同時多発的に発生することがあります。個々の事態に対処することができても、複合的に発生した場合は前提条件が異なり、必ずしも理想的な対処ができるとは限りません。

 このため、乗組員はその時の状況を冷静に把握し「ベストではないものの最善の手」を見つけ出す判断力が問われます。戦闘中は状況が刻々と変化するため、決断の速度も重要です。

 イースターデイ艦長は「第7艦隊、水上訓練グループ(横須賀)、水上戦闘システムセンター、横須賀基地、母港である日本、そして横須賀や世界中にいる乗組員の家族や友人たち、訓練に関わる全ての関係者の尽力なくして、訓練の遂行はできませんでした。それぞれが重要なパートを占め、我々の戦列復帰を手助けしてくれたのです。“ビッグ・バッド・ジョン”(駆逐艦ジョン・S・マケインのニックネーム)は戦列に復帰し、いつでも哨戒に出られる体制にあります」と、戦列復帰までの道のりを総括しています。

 駆逐艦ジョン・S・マケインは、所属する第7艦隊第15駆逐隊(DESRON 15)の僚艦とともに、自由で開かれたインド太平洋地域を維持するため、再び海に出ることになります。

<出典・引用>
アメリカ海軍太平洋艦隊 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)