おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百二十四回 男どアホウ甲子園/水島新司(原作・佐々木守)

【うちの本棚】第百二十四回 男どアホウ甲子園/水島新司(原作・佐々木守)「うちの本棚」、今回は水島新司を「野球漫画の」というイメージに決定づけたともいえる『男どアホウ甲子園』を取り上げます。剛球一直線の野球どアホウの生きざまを爽快に描いた野球漫画の代表的な作品のひとつです。


  • 「野球漫画の水島新司」最初のヒット作と言っていい作品であり、5年におよぶ連載期間、新書判単行本にして28巻という分量も、その後の水島新司作品の長期連載、大長編作品の最初のものとなっている。またアニメ化された水島新司作品としても最初のものである。また、原作者である脚本家の佐々木 守にとっても、漫画原作の代表作である。

    野球狂の祖父によって「甲子園」と名付けられ、幼いころから野球好きとして育てられた主人公、藤村甲子園が、剛球投手として高校野球、大学野球そしてプロ野球でさまざまなライバルたちを相手に活躍していくのがストーリーの基本。このあたりは他のスポコン漫画とも共通するところと言っていいが、なんといっても主人公の突き抜けた性格が本作の一番の特徴となっているのは事実だろう。自ら「野球どアホウ」と言い、「野球以外に能がない」という、そして投げる球は直球のみというばか正直で一本気、そこ抜けに明るく邪心のないところは作品の爽快感にもつながっている。

    とはいえ、その主人公の生きざまを貫き通す影には、実のところ周囲の人々にかなりの犠牲が伴っていたりして、その責任をどうとるんですかと、真面目に突っ込んでみたくなったりもする。

    主人公が投手であるため、ライバルはバッターだろうと単純に考えてしまうところだが、意外にもその多くは同じピッチャーだったりする。最初に登場するのが池畑という中学から高校にかけてのライバルで、高校野球・甲子園大会では投手戦を展開する。

    直球、剛球が武器の甲子園は、とにかく相手に打たせないことが自慢であり、バッターとは力と力の勝負という図式になり、特別な打法や攻略法がなかなか出にくいということも投手同士の投げ合いという展開になったのかもしれない。また、高校野球がそうであるように、投手であっても打撃力も要求されるので、甲子園自身打撃もチームの中では優れていたりする。そこでライバルともお互いに投げ、打つ勝負が展開されている。

    作画面でも水島新司の力の入れ要は画面から充分伝わってくるもので、特に試合中の球場の臨場感は流石と言っていい。もっとも投球フォームなどは川崎のぼるの『巨人の星』の方が印象的だったかもしれないが(『巨人の星』は投球フォーム自体に特徴を持たせていたせいもあるだろう)。

    本作の続編として、水島新司のオリジナルで『一球さん』が描かれ、また『大甲子園』にも藤村甲子園が登場している。

    同じ水島作品の『野球大将ゲンちゃん』でも、本作同様、野球狂によって物心がつく以前から野球に接し、少年野球で活躍するのだが、これは本作において主人公の誕生から高校入学までの成長過程がある意味とばされていたことで、少年時代、リトルリーグなどを改めて描こうとしたのではないかと思われる。その意味で『~ゲンちゃん』はもうひとつの『男どアホウ甲子園』と言ってもいいのかもしれない。

    男どアホウ甲子園1 男どアホウ甲子園2 男どアホウ甲子園3 男どアホウ甲子園4
    男どアホウ甲子園5 男どアホウ甲子園6 男どアホウ甲子園7 男どアホウ甲子園8
    男どアホウ甲子園9 男どアホウ甲子園10 男どアホウ甲子園11 男どアホウ甲子園12
    男どアホウ甲子園13 男どアホウ甲子園14 男どアホウ甲子園15 男どアホウ甲子園16
    男どアホウ甲子園17 男どアホウ甲子園18 男どアホウ甲子園19 男どアホウ甲子園20
    男どアホウ甲子園21 男どアホウ甲子園22 男どアホウ甲子園23 男どアホウ甲子園24
    男どアホウ甲子園25 男どアホウ甲子園26 男どアホウ甲子園27 男どアホウ甲子園28

    ・秋田サンデーコミックス刊行データ
    1・昭和45年7月5日、2・昭和46年4月5日、3・昭和47年2月5日、4・昭和47年8月10日、5・昭和48年5月30日、6・昭和48年8月20日、7・昭和48年12月10日、8・昭和49年5月10日、9・昭和49年7月30日、10・昭和49年9月10日、11・昭和49年10月10日、12・昭和49年11月10日、13・昭和49年12月10日、14・昭和49年12月25日、15・昭和50年2月10日、16・昭和50年3月20日17・昭和50年4月10日、18・昭和50年5月10日、19・昭和50年6月30日、20・昭和50年7月31日、21・昭和50年8月10日、22・昭和50年9月20日、23・昭和50年10月15日、24・昭和50年11月15日、25・昭和50年12月20日、26・昭和51年1月20日、27・昭和51年2月15日、28・昭和51年3月10日

    初出/小学館・週刊少年サンデー(1970年8号~1975年9号、1999年36・37合併号)
    書誌/秋田書店・秋田サンデーコミックス(全28巻)
    〃  ・秋田漫画文庫(全18巻)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百二十三回 銭っ子/水島新司(原作/花登 筺)
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百二十三回 銭っ子/水島新司(原作/花登 筺)

  • 【うちの本棚】第百二十二回 いただきヤスベエ/水島新司(原作・牛 次郎)
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百二十二回 いただきヤスベエ/水島新司(原作・牛 次郎)

  • 【うちの本棚】第百二十一回 ゴキブリ旋風/水島新司
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百二十一回 ゴキブリ旋風/水島新司

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      どんな人間にもいつかはやってくる老眼。なんだか手元が見えづらいな……という状態を体験できるトランプが…
    2. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…
    3. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト