スペースXの国際宇宙ステーション補給船、ドラゴンが2020年12月6日(現地時間)、フロリダ州のケネディ宇宙センターからファルコン9ロケットで打ち上げられました。ドラゴン補給船の打ち上げは21回目で、今回から搭載量が増加した改良型を使用。国際宇宙ステーションへは7日13時5分(日本時間8日3時5分)に到着する予定です。

 ドラゴン補給船の通算21回目のミッション(CRS-21)となった今回。容積が20%増加し、従来より倍の電源付きロッカー(保温が必要なサンプルを持ち帰る際などに使用)を搭載できる改良型(ドラゴン2)の初飛行となりました。


 今回の積み荷は、国際宇宙ステーションに滞在しているクルー向けが364kg、科学実験用のものが953kg、船外活動用の機材が120kg、宇宙船用ハードウェアが317kg、コンピュータ関連部品が46kg、ロシアのハードウェアが24kg。これに加え、非与圧のトランクモジュールに、国際宇宙ステーションの商用利用に使用される「ナノラック(ナノラックス・ビショップ・エアロック)」というエアロックが搭載されています。

 ナノラックは、日本の実験モジュール「きぼう」にあるエアロックの約5倍の規模があり、小型の人工衛星(キューブサット)の放出や、宇宙飛行士の船外活動時に機器を出し入れすることが可能。「きぼう」にあるものより規模が大きいため、より幅広い種類の実験装置や衛星が使えるようになります。

 科学実験用の機器では、ESA(欧州宇宙機関)によるバイオマイニング(微生物により小惑星などの岩石から有用な鉱物を取り出す方法)の実験装置「BioAsteroid」は、人類が地球から遠く離れた場所で活動する際、周辺の小惑星などから資源を自給自足するために重要なもの。有望な微生物が、宇宙の微小重力環境でも地上と同じように岩石を分解できるかが実験されます。

 また、医学生理学分野では、3Dプリンタで作った心膜組織を使い、微小重力環境が心臓の組織レベルでどのような影響を与えるかを調べる実験装置や、微小重力環境が脳組織にどのような変化をもたらすか調べる実験装置なども。将来の火星有人探査では、数年がかりで宇宙に滞在して活動することになるため、これらの実験は非常に重要なものとなりそうです。

 今回のドラゴン補給船打ち上げに使われたファルコン9ロケットの1段目は、クルードラゴンが初めて宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに送り届けた2020年5月の「Demo-2」打ち上げや、ANASIS-II打ち上げ(2020年7月)、スターリンク衛星打ち上げ(2020年10月)に使用されたもの。4回目のフライトとなりました。

 11月にJAXAの野口聡一宇宙飛行士らが旅立った、ケネディ宇宙センター39A発射施設に据え付けられたファルコン9ロケットは、現地時間の12月6日11時7分(日本時間7日1時7分)に打ち上げられました。

 打ち上げから11分49秒後、ドラゴン補給船は無事にロケットから分離し、打ち上げは成功。さらに約40秒後、先端のノーズコーンを開いて国際宇宙ステーションへのドッキング手順が始まりました。これに先立ち、ロケットの1段目は打ち上げから8分38秒後、大西洋上に待機していた無人船(ドローンシップ)の「Of Course I Still Love You」に着艦し、改修に成功しています。

 ドラゴン補給船が国際宇宙ステーションに到着するのは、日本時間12月8日未明の3時5分ごろの予定。NASAでは日本時間8日の1時30分(7日深夜25時30分)から、YouTube公式チャンネルなどでドッキングの様子を生配信する予定です。

<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA/SpaceX/ESA(欧州宇宙機関)

(咲村珠樹)