ウエディングプランナーは新郎新婦様やそのご親族、またゲストの皆様にとっての“特別な1日”を実現するためのお手伝いをする仕事です。しかし一生に一度と言われる“特別な1日”だからこそ、ちょっとしたミスが大きなクレームに直結するのも事実。そのためウエディングプランナーはあらゆることを予測し、お客様の満足のために奔走する過酷な仕事でもあります。
今回は元ウエディングプランナーである筆者とブライダル業界で働く友人から聞いた話の中から「これは予測できなかった!」という出来事を3つご紹介。花形職種という印象が強いウエディングプランナーの“裏の部分”をちょっとだけ紹介します。
■ 「新郎を誘惑するのはヤメテ」マリッジブルーの新婦が激怒
結婚式というと“女性の憧れをカタチにするもの”というイメージが強いかもしれませんが、実は女性よりも男性のほうがノリ気なカップルも意外と多いもの。こちらのカップルも新郎様は初回の打ち合わせの時から積極的に提案をしてくれる方でした。
お二人との関係性もできてきた数回目の打ち合わせの際、新婦様がお手洗いに行かれている最中に新郎様から「彼女に内緒でサプライズをしたい」という提案が。そのためその後、新婦様に内緒で新郎様と打ち合わせをすることになったのです。
サプライズの準備も順調に進み結婚式を1か月後に控えたある日、急に上司からの呼び出しが。なんと新婦様から「プランナーが彼を誘惑している」とお怒りの電話がかかってきているというのです。
実際は新郎様と内緒で連絡をとっていることがキッカケで、マリッジブルー気味だった新婦様の不安が爆発したことが原因なのですが、このタイミングでサプライズの件を話すことはできず……。結局、その後の打ち合わせは男性の上司が必ず同席するということでご納得いただきました。
準備段階では色々あったものの、実際の結婚式ではサプライズも大成功。新郎様との浮気疑惑も晴れ、新婦様からお礼の手紙をいただけるまでの仲に。
最終的には円満解決できましたが、日頃から「色気がない」と言われ続けてきた私にとってはかなり貴重な体験でした。
■ 「あなたの名前は縁起が悪いから」衝撃の理由でプランナー交代
30代カップルの結婚式を担当していた時のこと。挙式を数週間後に控えたある日、普段は新郎新婦様2人でいらっしゃっていた打ち合わせに、新郎のお母様が同席されることになりました。
お母様と会うのはこの日が初めてだったため、まず自己紹介をして打ち合わせを始めようとすると「えっ、あなた○○って名字なの?」と怪訝な表情に。なんとプランナーの名字が有名な葬儀社の名前と同じだっため、縁起が悪いというのです。
新郎新婦様は「全く気にしないから」と言ってくださいましたがお母様の意見を無視することもできず、結局は先輩にプランナーを交代してもらい、当日は裏方としてサポートすることに。
結婚式は縁起物なので日取りや小物などにこだわられることはよくありますが、プランナーの名前にまで“縁起”が関わってくるとは……。これはもう、改名するしかないですね。
■ 「新郎の前歯が欠けた!?」フォトアルバムで全部合成
独身最後にはめをはずす男性の話はよく耳にしますが、こちらの新郎様は結婚式前日の飲み会ではめをはずしすぎてしまった模様。朝起きたら前歯が欠けていたというのです。
前歯は欠けてしまっているものの痛みはないとのこと。さらに歯科医院に行く時間もないということで、そのまま結婚式をすすめることに。日頃からお茶目な新郎様のキャラクターもあり、結婚式当日はなんの問題もなく過ぎていきました。
問題が起きたのは結婚式で撮影した写真をまとめたフォトアルバムをお渡しした時。結婚式当日はその場のノリで乗り越えたものの、カタチとして残るフォトアルバムに前歯が欠けた間抜けな新郎の姿が写っているのは耐えられない……という新婦様からの悲鳴にも似た依頼でした。
結果、新郎様の写真に前歯を合成することに。二の腕や薄毛が気になる画像数枚を加工してごまかしてほしいという依頼は実はまぁまぁあることなのですが、新郎様が写っている写真全てに歯を合成するのは前代未聞の出来事でした。
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今回は結婚式でほんとにあったトンデモトラブルを紹介しました。結婚式では新郎新婦様からの「こんなはずじゃなかった」というクレームがつきもの。だからこそウエディングプランナーは、新郎新婦様が描くイメージと実際のギャップがないようにきちんと説明し、問題が起こらないように“予測”し、事前に手を打つことが大切……だそうです。(←当時の先輩の受け売りです)
ウエディングプランナーとしての“予測”が足らなかった出来事を紹介しましたが、そうした苦労を乗り越えた先には大きな喜びを感じられる仕事であることも事実。ウエディングプランナーという仕事に興味を持ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。
そしてウエディングプランナーを見かけた際には「華やかに見えるけど、結構苦労してるんだな~」なんて、ちょっと温かい目で見てもらえるようになればさらに嬉しいです。
(和田一花)