夏の風物詩のひとつ「花火」。
2021年も花火シーズンが近づいてきましたが、そんな中で、菓子で「花火」を表現したという和菓子職人の投稿が、SNSで話題を呼んでいます。
山形県山形市にて、和菓子店「福来雀あずき宿」を営む土屋タダヒロさん(以下、土屋さん)が自身のTwitterに投稿したのは、冒頭の花火をイメージした和菓子。「練り切り」と呼ばれる技法で作られました。
自身のことを「和菓子表現家」と称する土屋さんは、学生時代はデザインを専攻し、卒業と同時に、一時期絵本作家を目指したという異色の経歴の持ち主。
その後、「和菓子の繊細な色合いや造形、四季や美しい表現方法に魅了されたんです」と、現在の生業としている和菓子業界に。山形県にある老舗和菓子店の製造工場責任者を勤めたのち、先述の「福来雀あずき宿」店主として独立。
「和菓子の伝統や流儀を大切にした上で、新しい表現にも積極的に挑戦し、幅広い年齢層のお客様に、笑顔と喜びをご提供できるお菓子作りを意識しています」と語る土屋さんのお菓子は、対外的にも高い評価。
かつて研鑽を積んだ「日本菓業振興会」が開催する年間コンテストでは優秀技能賞を、また全日本和菓子品評会では、文化大賞を受賞しています。
今回投稿した「花火」は、そんな土屋さんの目指す「伝統と新しい表現」を組み合わせた意欲作。
「散りゆく美しさを表現しました」というその姿は、打ち上げ花火が上空に花開いた「瞬間」を再現したもの。四方に広がる様々な火花を「青」「緑」「黄」「桃」といった色で表し、花弁のように小刻みに形どっています。また中央部には、金箔で表現された無数の火種の“跡”も。
「菓子の見た目の美しさだけでなく、それが何を表現しているのか、どういった意味を持つのか、そういったことも感じて欲しいんです」という花火は、まさに「料理は目で食べる」を体現したもの。
思わず目を引く逸品となっていますが、中身についても、独自の製法により作り出した生地を用いて、中に入った餡や小豆の味をより感じられる作りにと細部にわたるこだわりを持った和菓子なんです。
一般的に「新しい」といわれると、「ゼロベースから生み出したもの」というイメージを持たれがちですが、今回の土屋さんの投稿のように、「和菓子」「花火」という、「伝統」を組み合わせて生み出されたものもまた新しさのひとつ。「花火」は、土屋さんの「和菓子表現家」の真骨頂ともいえる作品となっています。
ちなみに土屋さんは、情報発信についても「新しい表現」を積極活用している方。今回投稿したTwitterをはじめ、Instagramにも自身のアカウントを保有。またYouTubeでは「あずきやど【和菓子お兄さんのお菓子作り】」というチャンネルを開設し、自身のSNS総フォロワー数は15万人を超えるなど、海外からも広く支持されています。
実は今回の「花火」は、以前にInstagramで投稿したものをTwitterにて再掲したもの。いずれについても、多くの「いいね」が寄せられ、土屋さんのSNS上での活躍の一端が見られるものとなっています。
そういった“支持層”もあってか、「福来雀あずき宿」の売れ筋商品は、和洋折衷合わさった創作和菓子「山形生クリーム大福」だそう。餡・求肥餅・生クリームなどを絶妙に掛け合わせ、断面で魅せる色とりどりの「顔」が、目でも舌でも楽しませる逸品となっています。土屋さん曰く「海外にない食感」ということもあって、実際に海外の方から多くの好反応を受けているそうです。
-花火-はなび-
季節もだんだんと本格的な夏に近づいてきましたね。
日本の夏の風物詩である花火です。日本の最初の打ち上げ花火は1717年に献上するための花火を打ち上げたそうです。
和菓子も最初は献上菓子だったので、そう考えると感慨深いですね。#和菓子 #花火 #練り切り pic.twitter.com/nqPKMGNoNx— 和菓子職人 土屋 タダヒロ 和菓子お兄さん (@wagashi_tuchiya) June 6, 2021
<取材協力>
和菓子職人 土屋タダヒロさん(Twitter:@wagashi_tuchiya / Instagram:@wagashi_tadahiro_tsuchiya)
(向山純平)