欧州宇宙機関(ESA)とエアバスは、国際宇宙ステーションのヨーロッパモジュール「コロンバス」で、新しい高速データ通信システムの運用が始まったと2022年1月17日(現地時間)発表しました。
この通信システムは、静止軌道を回るデータ中継衛星を経由して地上とつながるもので、衛星間では世界で初めてのレーザー通信によるネットワークが形成されています。
国際宇宙ステーションでは、高度化するミッションに合わせて高速大容量通信のニーズが高まっており、これまでにも通信機能が強化されてきました。
今回、ヨーロッパモジュールと地上との間で構築されたのは、静止軌道上にある複数のデータ中継衛星をレーザー通信で結び、リアルタイムで大容量のデータを送受信するシステムです。
国際宇宙ステーションのコロンバス・モジュールには、2021年1月に取り付けられたKaバンド(26.5~40GHz帯)通信ターミナル「ColKa」があり、データの送受信を行います。データは、静止軌道を周回するデータ中継衛星(EDRS)によるレーザー通信ネットワーク「SpaceDataHighway」を経由し、ヨーロッパの地上施設と結ばれる仕組み。
送受信できるデータ量は、ダウンリンクで50メガビット/秒、アップリンクで2メガビット/秒。これにより、多くのデータをやり取りできるようになり、国際宇宙ステーションの商用利用にも役立つと考えられています。
また「SpaceDataHighway」は国際宇宙ステーションだけでなく、ほかの人工衛星や探査機へデータを送受信することが可能。これまでよよりも速やかに、制御コマンドを送信したり、得られたデータをダウンロードできるようになることも期待されています。
先日、実業家の前澤友作さんが国際宇宙ステーションに滞在し、現地からライブ配信を行いましたが、今後はより高品位のデータがリアルタイムで送受信できるようになるでしょう。ひょっとしたら、VRでステーション内部や、船外活動の様子を体験するようなコンテンツが生まれるかもしれません。
<出典・引用>
欧州宇宙機関(ESA) ニュースリリース
ドイツ航空宇宙センター(DLR) ニュースリリース
エアバス プレスリリース
画像:NASA/ESA
(咲村珠樹)