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最後までありがとう 鉛筆画家・秋本真見がこだわる「1本の鉛筆」への想い

 「物を大切にすること」は、古今東西広く伝わる教えのひとつです。

 鉛筆画家の秋本真見さんにとっては、自身の“相棒”でもある「鉛筆」で特にそれを実践。先日Twitterでは、感謝の気持ちが綴られました。

  •  「良い絵が描けたよ、最後までありがとう」のつぶやきとともに、秋本さんが投稿したのは1本の鉛筆を撮った写真。作品を描く際に、幅広い用途で使用しているという5Bタイプです。

     投稿写真で目を引くのがそのサイズ。なんと、指の腹にのるほどまでに使い込まれています。しかし秋本さんにとってそれは普通のこと。自身が信条としている「モノには魂が宿っている」から至っているとのことです。

     「実は数年前にも、Instagramで似たような内容の投稿をしたことがありました。私は、マララさんの『1本のペン』※の話に感銘を受けてから、ずっとこのスタンスですね」
    ※2013年に、パキスタンの人権運動家マララ・ユスフザイ氏が行った国連でのスピーチのこと。氏は翌2014年にノーベル平和賞を受賞しています。

     当該投稿の鉛筆に対しても、指の第一関節ほどの長さまでに使い込まれています。そしてこの鉛筆を含め、秋本さんは廃棄をせず、大切に保管しています。

    秋本さんがこれまで使い切った鉛筆たち。大切に保管されています。

     ちなみに秋本さんが使用している鉛筆の販売元は、東京都にある文房具メーカー「北星鉛筆」。実はこの会社では、毎年11月23日に「鉛筆感謝祭」と題したイベントにて、「鉛筆供養」という、一定のサイズ以下まで使い込まれた鉛筆を供養する催しが開催されています。

     秋本さんは、ここへ納めたいと考えているそう。北海道在住のため、地理的要因で中々赴けていませんが、鉛筆たちとお別れする際は「鉛筆供養」でと心に決めています。

    ■ 映画「生きとし生けるもの」が飛躍のきっかけ

     ところで、ここまで使い込まれた鉛筆で、秋本さんが一体何を描いていたのかも気になるところです。

     「『エゾフクロウ』です。私は、北海道に住む動物を題材とした鉛筆画を描いて活動しています。構図を作るのが苦手で、自分でコンデジを持って『モデル』を撮影しに行っています」

    指の腹サイズに消費してまで投稿者が描いた「エゾフクロウ」。

     2015年から画家活動を行っている秋本さん。油絵・水彩画・アクリル画などを描くうちに、最終的に一番馴染んだという鉛筆画家として活動するようになりました。秋本さんの父が趣味で油絵と彫刻を、そして叔父が現役の油絵画家という「血筋」はあるものの、画家としてのスキルは全て独学で習得したそう。

     題材の動物たちと直接触れ合っていることもあってか、作品は用紙に魂が宿ったかのようなリアルが伝わってきます。それは多くの人の目を引くものとなっていますが、その中の一人が、2017年公開のドキュメンタリー映画「生きとし生けるもの」で監督を務めた今津秀邦氏。

     公開当時、実際に鑑賞して作品に感銘を受けた秋本さんが、ファンアートとして「キタキツネ」を描いたところ、同氏の目に留まり、それがきっかけで作品のポスター化に。秋本さんの故郷である北海道豊富(とよとみ)町での上映と、海外宣伝用に使用されることになりました。

    自身の飛躍のきっかけとなった作品「キタキツネ」。

     その経験が自信となり、現在の作品スタイルが確立したといいます。あれから5年が経った現在も、魂が宿った鉛筆で、秋本さんはまっさらな用紙に命を吹き込み続けています。

    <記事化協力>
    秋本真見さん(Twitter:@shinArtpen/Instagram:@shinmi_aki)

    (向山純平)

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