医薬や医療領域における啓発イベント「病いと生きる。希望と生きる。写真展 ~まだ見ぬ答えを、生み出す未来へ~」が、12月12日~17日まで開催されます。
展示している写真は、「生きる希望を撮る」をテーマに活動している写真家のハービー・山口さんが撮影。開催初日に行われた取材会には山口さんも登場し、写真展への想いを語りました。
写真展は「日本臨床腫瘍学会」、「日本癌学会」、「日本癌治療学会」、「CancerX」の4団体の協力を得て、日本製薬工業協会が開催。
病気と向き合っている患者やその家族、がんサバイバーの方や支援者、医療関係者など、様々な立場で病気と闘いながら希望を失わずに挑戦している人たちの姿や想いを、ポートレートやメッセージにして展示しています。場所は、原宿駅から徒歩で約5分のところにある「sorama gallery」です。
取材会には山口さんのほかにも、日本製薬工業協会で会長を務める上野裕明さん、癌研有明病院先端医療開発科がん早期臨床開発部部長の古川孝広さん、CancerX共同代表理事の半澤絵里奈さん、株式会社encyclo代表取締役の水田悠子さんも登場。
■ 1つのことに向かって生きている人は凄く良い表情をする
上野さんは、患者一人ひとりがどんな病気に悩んでどういう問題意識を持ち、医療従事者はそれにどのようにこたえているか、という現状を知ってもらうことが重要。今回の展示会を通して、それが広く伝わることを祈念していると語ります。
「1つのことに向かって生きている方は凄く良い表情をすると感じた」と山口さん。このような人たちの写真を撮れることを光栄に思ったと振り返ります。
早期臨床開発で抗がん剤の最初の段階の現場で仕事をされている古川さんは、新薬の開発に後れを取っている日本の現状を紹介。
これを解消できるシステムを作り、より多くの若者に薬剤開発の経験を積ませながら、現在たくさんの患者により早く新薬を使用できるような環境を作っているとのこと。このような現状を共有していきたいと想いを明かします。
「がん」と言われても動揺しない社会のデザインを目指して活動を続けている半澤さん。「治療中や治療を終えた後の生活をどうするか」を今後の課題にあげます。その解決のため多様な人が参加できるプラットフォームを作ることに注力しているそうです。
11年前に子宮頸がんになったことがきっかけで現在の事業を始めたという水田さん。後遺症でお腹から足が一生むくんでしまう体になってしまったのだとか。さらに、むくみのケアのために分厚くてかたい医療用のストッキングをはかなければならなくなったといいます。
これを一生はかなければならなくなった時に、仕事も恋愛も消極的になって「ひっそりと生きていこう」という気持ちに。しかし、水田さんは自分と同じような気持ちになっている人のために、むくみの治療をしながらもオシャレが楽しめるブランドを立ち上げました。
現在は事業の領域を広げ、「がん」になった人たちの経験や知見を活かした商品を作り、社会全体の財産にしていけるような活動をしているそうです。
■ カラフルな世界をモノクロで表現
撮影の時は「その方の明日の幸せを祈ってシャッターを切る」と山口さん。被写体となった古川さんは、展示されている自身の写真を見て「自分じゃないみたい」と照れくさそうに笑い、感謝していました。
今回の撮影では患者も被写体に。山口さん自身の経験が役に立ったのだとか。実は山口さんは幼少年期にカリエスという病気を長く患っていました。
この経験が「人生の価値は生きた長さより、何をしたか」という考えに説得力を持たせているようです。こうした山口さんの経験と考えを通じて、被写体となった患者の中には「元気になったよ。ありがとう」と言ってくれた人もいたそうです。
上野さんは今回のトークセッションで、「病いと生きる。希望と生きる」というものは世の中全体で作っていくものだと実感。その上で、製薬企業は医薬品の製品開発を通じて、「多くの人の笑顔に少しでも貢献できるように邁進していきたい」と意気込みます。
最後に水田さんは今回の写真展について、それぞれ立場は違うもののいろいろな形で病に関わり希望を持っている人たちの、「彩りあふれるカラフルな世界がモノクロの写真展で表現されている」と紹介。「ぜひ足を運んで見ていただきたい」と呼び掛けていました。
取材協力:日本製薬工業協会
(取材・撮影:佐藤圭亮)