4月4日の大相撲舞鶴場所であいさつ中に倒れた舞鶴市長の多々見良三さんは、その場に居合わせた人たちによる適切な処置が功を奏し、搬送先の病院でクモ膜下出血の緊急手術を行った事で一命を取り留めました。この際に起こった出来事が物議をかもす事態となっていますが、その件については本稿では置いておくとして、今回のような緊急事態は場所が土俵でなければ、誰しも遭遇する可能性のある出来事です。そんな「目の前で突然人が倒れた時」誰もが適切な行動をとる事ができるのでしょうか?
クモ膜下出血は出血により脳の機能が停止してしまう為、生命維持に必要なすべての機能が停止してしまいます。その為一刻を争う救命処置が大切です。しかし、普段救命活動とはあまり縁がない場合には、例え1~2度、救命講習を受けていても即それが活かせない場合もあります。
救命活動には救急の知識と冷静さがとにかく大事であると同時に、救命活動を行うにあたって「どういったシチュエーションが想定されるかを知る事」も大事です。
「一般社団法人日本循環器学会 AED検討委員会」と「減らせ突然死プロジェクト実行委員会」では、2016年にPCとスマホで楽しみながら学ぶ事ができるサスペンス仕立てのウェブゲーム「心止村 湯けむり事件簿」をリリースしています。
人気温泉旅館で起きた、ある事件。ストーリーは一人の男性が倒れた事で事態が急変します。ここからが救命の基本知識を学べるクイズ形式に。主人公の高校生エイドがテキパキと居合わせた人に指示を出していきます。胸骨圧迫のリズムも音ゲー仕立てで感覚的に学ぶ事ができます。この一連のドラマではAEDを使える状態になるまでの救命処置から、AEDの実際の動作を見る事ができます。エピローグに出てくるおまけクイズでは、正解と不正解ではエンディングが違うというおまけも。
今回の舞鶴市長が倒れた原因は心臓ではないものの、脳の機能停止はそのまま心停止ともなりえます。見た目上倒れた理由が分からない場合、AEDをできるだけ早く使う事で救命率が格段に上がります。AEDによる電気ショックでも心臓が拍動を再開しない事もあり、ドラマ内では「AEDを使ったからそれで終了」ではない事も描かれています。
一人一人が普通の一般市民でも、誰かが救命を必要としているのであれば誰でも救命する事ができます。平成27年中に一般市民がAEDを使用し除細動を実施した傷病者数は1103人、そのうち1か月後生存者数は596人(54.0%)、1か月後社会復帰者数は508人(46.1%)というデータも総務省消防庁から発表されており、適切な救命処置で無事に元の生活に戻れる人も多くいます。
このウェブゲームをきっかけに救命やAEDに関心を持った人は、お住まいの自治体の救命講座をぜひ受講してください。そしていざという時に冷静に行動できる様、日頃からシミュレーションを行っておきましょう。知識だけが身に付いていても、実際の現場に遭遇すると足がすくんだりパニックになりやすいものです。繰り返しシミュレーションを行う事で知識と行動が身に付きやすくなります。
(画像はウェブゲーム「心止村 湯けむり事件簿」のスクリーンショットより)
<引用・参考>
「心止村 湯けむり事件簿」
日本循環器学会:プレスリリース「AED・心臓マッサージを楽しく学べるサスペンスゲームが登場!」(AEDサスペンス/AEDサスペンス)
総務省消防庁「平成28年版 救急・救助の現況」(PDF版)
(梓川みいな/正看護師)