「うちの本棚」、今回ご紹介するのは坂口 尚がコミカライズを担当した虫プロの劇場アニメ『クレオパトラ』です。

「COM増刊号」として刊行されて以来、単行本化されることもなく、ある意味幻の作品。坂口ファンのみならず、単行本での刊行は意味のあるものではないでしょうか?

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クレオパトラ/坂口 尚


本作品は虫プロダクションの劇場用長編アニメーション『クレオパトラ』のコミカライズ作品である。

アニメ『クレオパトラ』は、「大人にも楽しめるアニメーション」を目的に、「アニメラマ」として『千夜一夜物語』に続いて制作されたもの。キャラクターデザインは小島 功が担当しており、セクシーなクレオパトラとなっている。声は中山千夏が担当した(余談だが『千夜一夜物語』で主人公を演じた青島幸男ともども「アニメラマ」で主役を演じたふたりがその後政治活動に向かって行ったのは単なる偶然なのだろうか?)。

坂口 尚はアニメーター出身でもあり、本作においてはアニメ版のキャラクターがそのまま描かれている印象で作画されている。

表2には手塚治虫の前書きが「口上」として掲載されており、「映画でしか表現しえないギャグなどをとりのぞき」とアニメとコミックの表現の違いを踏まえた上でのコミカライズであることを述べいてる。アニメでは随所に見られるパロディやギャグシーンがコミカライズ版ではカットされているのはそのためだろうが、日本の古典芸能を模したシーザー暗殺シーンもコミカライズ版オリジナルの表現に差し替えられている。

キャラクターやストーリーはアニメを元にしているわけであるが、マンガとしての表現はあくまでも坂口の力量であることは事実であり、改めて坂口 尚の漫画家としての実力を感じられる作品であるという気がする。

残念なのは、この作品が復刻はもちろん、きちんとした単行本で刊行されていないこと。
坂口 尚の初期の代表作のひとつであるだけに、今後単行本として刊行されることを切に願う。

初出/虫プロ商事「COM増刊号」(昭和45年10月5日)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/