アメリカ海兵隊が運用するF/A-18C/D型、通称「レガシーホーネット」の近代化改修に向けたレーダー換装試験がカリフォルニア州のミラマー海兵隊航空基地で2018年8月2日(現地時間)に行われ、良好な結果が得られたとメーカーのノースロップ・グラマンが8月13日(現地時間)に明らかにしました。
アメリカ海兵隊ではすでにF-35Bが実戦部隊で運用されていますが、これは強襲揚陸艦で運用されていたAV-8BハリアーIIの置き換えが主目的。このため、F/A-18C/D型はしばらく現役を続けることになっています。
とはいえ、海軍がF/A-18をほぼ別物と言っていいほどアップグレードしたE/F型スーパーホーネット(通称:ライノ)に機材を更新したのに対し、海兵隊のC/D型は基本的に運用を開始した1980年代のまま。このままでは高度化している兵装の運用など、任務遂行能力が劣った状態になってしまいます。このため、任務遂行能力の最重要部分であるレーダーを換装し、能力向上を行おうという訳です。特にF/A-18C/Dは機械的にアンテナを動かしてスキャンするタイプのレーダー(1983年使用開始のAN/APG-65)ですから、これを現在主流のアクティブフェイズドアレイ(AESA)レーダーに換装することが求められました。
今回アップグレード用の試験に供されたのは、ノースロップ・グラマンのAPG-83。高拡張敏速ビーム・レーダー(Scalable Agile Beam Radar)の頭文字をとって「SABR(セイバー)」という愛称がついています。本来はF-16のアップグレード用オプションとして開発され、現在空軍のF-16に順次装着されている第5世代レーダーです。もともとアメリカ空軍の軽戦闘機(LWF)計画でF-16と争ったYF-17コブラを原型とするF/A-18も機体規模が同等であり、大きさの面では取り付けが可能でした。
あとは、レーダーの電力消費や発生する熱を冷却するシステムが適合するかを確認する必要があり、ミラマー海兵隊航空基地で実機に取り付けて、実際の状況を試験したのでした。結果は良好で、APG-83がF/A-18C/Dで運用可能なことが証明されたのです。
APG-83はF-35に搭載されているAN/APG-81のアンテナを用い、新規開発の機器と組み合わせたレーダーなので、F-35とほぼ同等の能力を持つことになります。しかも換装までの時間もわずかで、改修から戦列復帰までの時間が短いのも特徴です。
アメリカ海兵隊では、保有するF/A-18C/Dのうち100機あまりをアップグレードさせる計画です。どのレーダーに換装するのか、選定のコンペはこれからですが、F-16での実績などを考えると、このAPG-83 SABRが有力候補となるでしょう。
Image:Northrop Grumman
(咲村珠樹)