ドイツ航空宇宙センターらが研究用に開発した、宇宙飛行士支援ロボット「CIMON(サイモン)」。ガンダムのハロ的存在なのに、コレジャナイ感たっぷりのあのロボットが2019年8月27日(現地時間)、国際宇宙ステーションでの試験を終えて地球に帰還しました。

 ドイツ航空宇宙センター(DLR)とルードヴィヒ・マクシミリアン大学(ミュンヘン)の共同研究プロジェクトとして開発された、ボール状の宇宙飛行士支援ロボット「サイモン」は、2018年6月29日にスペースXのドラゴン補給船に搭載されて、国際宇宙ステーションに向かいました。

 ボール状のフォルムといい、開発目的といい、コンセプトは「機動戦士ガンダム」シリーズに登場するハロ的な存在なのですが、ヨーロッパ人の感性により、日本人からするとハロとは似ても似つかぬ、コレジャナイ感満載のデザインに仕上がっています。打ち上げを伝えた記事には、当時「どうしてこうなったw」とか「形からやり直せw」といった反響が寄せられました。

 見た目はともかく「乗組員用インタラクティブ・モバイル・コンパニオン(Crew Interactive MObile CompanioN)」の名前の通り、サイモンは国際宇宙ステーションで活動する宇宙飛行士の支援を行いました。タンパク質の結晶作りなど、実験によっては「定期的に状態を見守る」のが主であり、そういった任務に宇宙飛行士の貴重な時間を割くよりは、サイモンなどロボットの方が適しています。

 また、任務によっては宇宙飛行士が1人でいる場合があり、その場合の「話し相手」としてもサイモンは役立ちました。IBMが開発したAIにより、宇宙飛行士とコミュニケーションし、さらにデータを蓄積して、より賢くなるサイモンは、様々な情報を得ています。

 1年あまりの期間を過ごしたサイモンは、再びドラゴン補給船に載せられ、国際宇宙ステーションを離れました。そして2019年8月27日、ロサンゼルスから南西に480km離れた太平洋上に着水。無事回収されました。

 ドイツ航空宇宙センターでサイモンのプロジェクトマネージャを務めるクリスチャン・カラッシュ博士は「順調であれば、今年の10月にサイモンは一旦ドイツに帰ってくることでしょう。サイモンの技術を通じて、私たちは多くのことを得ました。今回、サイモン最初のミッションでは、微小重力環境下での能力や、宇宙飛行士と協調して動くことを実証できました」と、サイモンの成果を語っています。

 AIを使った人間とのコミュニケーションについて、宇宙での基礎的な知見をもたらしたサイモンは、これが最後の個体ではありません。今回得られたデータをもとに、さらに第2、第3のサイモンが生み出される予定です。

 ルードヴィヒ・マクシミリアン大学のジュディス・ブッフハイム博士は「新しいサイモンは、国際宇宙ステーションに設置されたカメラやマイクからも、様々な情報を得られるようになります。これは宇宙飛行士が、いかなる時もサイモンをコントロール下に置くことができるということで、重要な要素になると考えています」と、これからのサイモンについて語っています。

 ドイツ航空宇宙センターと欧州宇宙機関(ESA)は、新しいバージョンのサイモンを2019年12月に、再び国際宇宙ステーションへ送り出すことにしています。宇宙を経験したサイモンは、どのようなコミュニケーションを宇宙飛行士とすることになるのでしょうか。

<出典・引用>
エアバス プレスリリース
DLR プレスリリース
Image:Airbus/DLR

(咲村珠樹)