9月9日に千葉県を襲った「令和元年台風第15号」(以下、台風15号)。千葉県各地で多くの建物に被害がでた他、広い範囲で停電・断水が発生。12日たった現在でも停電・断水から復旧できていない場所がまだまだ多く存在しています。

 実は弊社の本社は千葉県にあり、本社従業員も全員千葉県民です。被害が比較的少なかった県北西部のエリアではありますが、同じ県内の出来事とあり被害状況を知るうちに、何かできることはないのか……と、ずっと考えていました。

 私たちはWEBニュースで、しかも基本はエンタメよりの話題を扱っています。そうした立場であるが故に、刻一刻と状況がかわる不慣れな災害情報を扱ってもいいものか。こうした考えもあり、記事を通じての情報伝達支援というのもためらわれました。

 そんな中、気がかりだったのが復旧が比較的早かった、被害が少なかったエリアの観光への影響。今回報道などでは、かなり広い範囲での停電・断水が伝えられていますが、実は停電・断水していると言われている地域でも、停電しなかった、断水しなかった地域や、しても早くに復旧している地域や施設があり、置かれている状況は様々です。

 さらに、復旧後はただ停電・断水から復旧したという情報が伝わるだけで、各地のその後が詳細に伝えられることは、あまりありません。こうした「情報アップデートが行われない」状況は、被害のイメージを固定化し、時に観光地や地方経済への大きな打撃となることがあります。実際過去には、豪雨被害が大きく報じられた地区の近隣観光地で、被害があまりなかったにも関わらず観光客数が一時減少する出来事がおきています。

 今回も、現地の方に少し話を伺うと、営業していてもいつもよりも客足が少ない、宿泊キャンセルが少し出ている。という話がちらほら。

 そこで、エンタメ系ならエンタメらしく、今の千葉の状況を旅レポートの体裁で紹介しようと、9月最初の3連休(14日~16日)を利用して急遽行ってきました。……とはいえ、被害が深刻な場所には行っていません。今回の旅は被害を伝えることではなく「この場所は元気でやってるよ!」という様子を伝えること。このため、訪問したのは、営業できている施設が多いと聞いた、九十九里から勝浦あたりまでの海沿いとなります。

  また、今回は通常との観光客数を筆者目線で比較しやすくするため、過去に個人的に複数回訪れたことがある、完全に土地勘のある馴染みの場所を中心にしました。筆者の行動パターンの偏りにともない、普段ネットではあまり情報がでてこない場所の紹介も含みますが、災害に乗じた宣伝や売名では一切ないことご理解ください。全て私が一方的にここに行くと決めて行き、取材し、そして全て支払うべき費用は支払い行っています。

 このタイミングで千葉の旅記事を出すという事は、不謹慎と指摘されてしまうかもしれません。さらに「今することじゃない」と言われるかもしれません。ただ、災害後の復興とは、被害にあった建物などの復旧と経済活動の両輪がうまく回らないと、はかどるものもはかどらないのも事実。そうした意味での支援の思いがあることもあわせてご理解いただければ幸いです。

 そして、この記事を通じて、直近でこの記事に書かれているエリアへの旅行を検討している方や、予定のある方。そんな方の不安が少しでも払拭できればと心から願っております。

 では、以下から切り替えて、千葉県民が千葉愛てんこもりで千葉の旅情報をお届けします!

■ 千葉北から九十九里有料道路の一宮までの道路状況

 急遽決めた、九十九里から勝浦にかけての旅。3連休(9月14日~16日)ということもあり、普段ならどの宿泊施設もすでに満室で予約困難な状況ですが、やはり台風の影響もあってか1泊目となる土曜は、御宿町にある人気宿が直前に予約できました。

 なんとか宿も決まり、念のために車をガソリン満タンにして九十九里方面へ向かうことに。会社のある千葉県鎌ケ谷市からは、京葉道路・花輪インターチェンジが近いのですが、土日の一般道は普段でも恐ろしいほど混雑するため、少し下って東関東自動車道・千葉北インターチェンジから入ることに。そして宮野木ジャンクション経由で京葉道路→千葉東ジャンクションで千葉東金道路→東金インターで降りて、九十九里有料道路に入り一宮(一ノ宮)に向かうというルートをとっています。

 高速道路の沿線は、今回の停電・断水の影響を受けた地域がほとんどですが、道路の状態には特に問題もなく、いつも混んでいるところは混んでいるという状況。途中、館山方面に向かう災害派遣の自衛隊車両を見かけた以外は、特に大きな変化はなかったように思います。路面の状態も特に問題ありませんでした。

 千葉東ジャンクションから東金方面へ向かう道すがら、高速道路から見える家並みに目を向けると、屋根にブルーシートをかけた家がポツポツと。東金に差し掛かったところで一度インターチェンジから一般道に降り、町中を走ります。東金地区も停電・断水が伝えられている地区ですが、この日の町中では信号機がつき、道沿いの飲食店も営業しているところが多い印象。東金市内でも停電・断水しているところがまだあると聞きますが、町中を走行する分には他県から旅行に来た人でも特に困ることはなさそうです。


 そのまま車を九十九里エリアへと走らせます。九十九里は来年開催される東京オリンピックのサーフィン会場「釣ヶ崎海岸」を抱える地域。以前はボコボコの路面だった、東金と九十九里をつなぐ東金九十九里有料道路は大分整備され、走行しやすい道路になりつつあります。ここも特に道路状況には問題なく、スムーズに九十九里へ到着。有料道路の終点、一宮で降りていきます。


 一宮で降り、少し走ってみましたが、ここも飲食店は営業しているところが多い印象。有料道路を降りてすぐの場所にある一宮のローソンや、ファミリーマートといったコンビニも営業していました。

 余談ですが、今回行き帰りの一般道路、高速道路で特に問題などは感じなかったのですが、唯一ちょっとな……と感じたのが、帰りの千葉北インター出口で見た、一般レーンにならぶ自衛隊の災害派遣車両。ずらりと数十台ならんでいました。一般車両がETCレーンをすいすい通り過ぎる横で、じっと並んでいる姿を見るのは本当に申し訳なく……。確かに自衛隊がバス会社のように法人用のETCカードを持っているという話は聞きませんから、現金での精算となるのでしょうが、災害派遣時の車両がそれぞれ現金清算を重ねると、やはりそれだけ時間がかかります。ここが一番気になりました。

 さて、話を戻しますが、次に向かったのはインター降りてすぐの一宮海岸。3連休ともなればほぼ満車に近い状態になる駐車場(有料)には、来ているサーファーの車の数が少しすくないような?思わず首をひねってしまいました。


 こんなもんだっけ……?と思いつつ、近くの一宮海岸広場(トイレや、公園のある駐車場)ものぞいてみると、とまっていたのは4台ほど。いつもなら半分近くはとまっているような?

 地元の方にも伺うと「今日は波そこまで悪くないんだけどね、ちょっと少ないよね」という話。連休初日の昼間だからか、台風の影響かは定かではありませんが、月1程度は遊びに来ている筆者目線からも、少し寂しいようにうつりました。

■ サーファーの聖地はウミガメにとっても聖地 釣ヶ崎・志田下ポイント

 一宮海岸のすぐ近くにある釣ヶ崎海岸、通称「志田下ポイント」ものぞいてきました。2020年のオリンピックサーフィン会場となる海岸です。


 今はちょうどウミガメの産卵後の時期らしく、浜ではすぐ近くに人が常駐して産卵場所を見守る活動が行われていました。九十九里はウミガメの産卵場所としても知られ、オリンピックの大会組織委員会もこの件については把握しています。大会開催時期もウミガメの産卵時期と大会が重なることから地元の保護団体と協力の上、自然との共存共栄を目指す方針だといいます。

 九十九里では釣ヶ崎海岸以外でも、ウミガメの産卵場所を見かけることがあります。産卵が確認された場所には、誰かが踏み荒らさないよう四隅に棒がたてられ保全されているので、もしそんな場所を見かけたら、迂闊に立ち入らないよう注意してください。


 さらにここは、毎年9月に行われる「上総十二社祭り」(通称:上総裸祭り)と称される、上総国一宮「玉前神社」(長生郡一宮町一宮3048)の祭典場でもあります。年に1度、玉前神社の祭神・玉依姫命(たまよりひめのみこと)と一族の神々が再会するという、1200年以上つづく神事が行われる場所。駐車場のすぐ脇にはロープで囲まれた広場の中に、海に向かって鳥居がたっています。 ※注意:玉前神社の写真は2017年7月に撮影したものです。


 ウミガメの産卵場所、そしてサーファーにとっての聖地であると同時に、正真正銘の聖地。ウミガメの産卵場所と同時に、神事の場となる会場へも無闇に立ち入らないようご注意を。

■ 大原漁港と言えば!伊勢えび&たこに漁協直営食堂!

 九十九里がサーフィンの聖地ならば、少し先にある大原漁港(いすみ市大原11574)は、今や伊勢えびの聖地といってもいいかもしれません。全国的にはあまり知られていませんが、千葉県って実は伊勢えび漁獲量が全国トップクラス。1位になる年もあります。その中でも大原漁港は県内の水揚げ量で1、2を争う場所。毎週日曜に開催される「港の朝市」では地元でとれたお魚に加え、伊勢えびが格安で手に入ると訪れた人を喜ばせています。

 大原漁港の港の朝市は、日曜開催が基本ですが、今回のような3連休の場合には「土曜日」でも臨時に開催されることがあります。9月14日のこの日も、その臨時開催日でしたが、時間にまにあわなかったので漁港の目の前にある漁業協同組合直営食堂「いさばや」(千葉県いすみ市漁港埋立地)さんで食事をすることに。

 いさばやさんは、今年4月に移転するまで漁港内にあった食堂。建物の老朽化にともない、漁港前に移転しました。そして土日の昼時ともなると、毎度新鮮なお魚を求める人が集まるので行列必至。少し時間をずらしても、営業終了時間までは客が絶えず訪れるという人気店、なのですが……。

 この日は、普段の土日昼間の混雑ぶりを知っていたので、少し時間をずらして2時頃に訪れてみたのですが……先客は1組だけ。いさばやさんには個人的にこれまで何度も訪れていますが、この時間でもここまで客が少ないのは初めてでした。お店の方に話を伺うと「今日はちょっと少ないよね」と苦笑。あとから2組ほど入ってきたところで、ご飯を完食。お店を後にしたのでした。美味しかったですよ。また来ますね!


 ちなみに、いさばやさんでは伊勢えびももちろん食べられますが、なんといってもたこ飯が絶品。大原の地だこは味に定評があり、大原漁港で水揚げされる「太東・大原産真蛸」は千葉県ブランド水産物認定品に認定されています。おかげで「たこ飯」も地元の名物料理の一つ。たこがとにかく柔らかく、そして甘くって……、たこってこんなに味わい深かったっけ?と驚くほどです。なお、たこ飯は港の朝市でも、出店するお店によって取り扱いがあります。色々なところで買って、食べ比べしてみるのもいいかもしれません。

■ 童謡「月の沙漠」のモデルで知られる御宿

 「月の~砂漠を~は~る~ば~ると~~~」の歌詞でおなじみの童謡「月の沙漠」。そのモデルとなったのが千葉県の御宿(夷隅郡御宿町)です。

 御宿の御宿海岸は海の透明度が高く、夏には多くの海水浴客が訪れ、一年通してサーファーたちも集まる人気のエリア。海岸ぞいには町のシンボル、童謡に出てくるラクダをイメージした像や、「月の沙漠記念館」もあります。

 またこの地域では、9月1日から10月31日の期間に「御宿伊勢えび祭り」が開催されています。期間中の土日は「月の沙漠記念館」前で伊勢えび直売会が行われ、その場で焼いて食べることも可能。さらに、ビッグイベントと呼ばれる日には伊勢えび汁が無料で振る舞われるなど、多くの人を集めています。

 訪れたこの日は、翌々日の9月16日にビッグイベントが予定されていたため、後日改めて訪れることにしてイベント会場をのぞくことはしなかったのですが、それが後に大きな後悔を生むことに……。その晩遅く、当日天気の都合から中止が発表され、それを知ったのが翌日朝のこと。その後の予定の都合もあり、どうしても直売イベントに行くことができなかったのは、この旅最大の心残り。前日少し早めに行っていれば……!後悔先に立たずとはまさにこのことです。

 でもそこは、お宿の料理でカバーすることに。御宿には、年中通して多くの観光客が訪れることから美味しい海産物を出してくれる旅館や民宿が沢山あります。今回泊まったのはその中の一つ。「月の沙漠記念館」から歩いてすぐにある、「伊勢えびあわびが専門の宿 大野荘」(夷隅郡御宿町新町775)。こちらはTVや雑誌などでも度々紹介されているので「見たことある!」という方もいるかもしれません。

 建物は一見すると普通の旅館。しかし中に入ると、天井から沢山吊り下げられた沢山の「つるし雛」が真っ先に出迎えてくれます。3月ころにはつるし雛の下に、7段飾りのおひな様が置かれることも。思わず写真を撮りたくなる光景です。

 だがしかし!「一見すると普通の旅館」と前置きしたとおり、この旅館にはちょっと変なところも?3階にある客室の名前がとてもユニークなんです。

 「パリ」「ロンドン」「カンヌ」……扉にかかる部屋の名前はどこもヨーロッパの有名な都市名ばかり。しかし中身は和室!このアンバランスさから、思わず脱力。SNSのネタにはちょうどいいかもしれません。入り口と部屋の写真を添えて「パリに来た!」なんて。




 少し、話はそれますが、御宿にはこんな歴史があります。1609年9月30日に、スペイン船「サン・フランシスコ号」が御宿沖で座礁。ドン・ロドリゴ臨時総督はじめとする乗組員317人が田尻海岸が漂着し、当時の村人総出で救助にあたりました。その後、徳川家康の手配により新造した船が与えられ、翌年には当時スペイン領だったメキシコのアカプルコに帰着したという出来事が。この縁から御宿町とメキシコ・アカプルコ市とは姉妹都市の関係を結んでいます。だからもしかして「アカプルコ」という部屋もあるのかな?……と思ったら、ありませんでした。あったのはスペインの「マドリード」。ずこっ!



 さて、話を戻します。待望のお夕飯。今回は1人1匹伊勢えびがついてくるという「伊勢えび鬼ガラ焼付き」プランを選んでいます。この旅館にはこれまで何度か個人的に泊まったことがあるのですが、毎回感じるのは「ご飯がとにかくうまい!」ということ。伊勢えびはもちろんのこと、新鮮なお刺身、茶碗蒸し、汁物、小鉢……どれをとっても、満足させられます。ここの具だくさん茶碗蒸しも大好きです。





 朝食の方も地元のお魚などにこだわり、ひものや甘露煮、小鉢と、毎回朝からご飯2杯はいけてしまう始末です。最近ダイエットをしているのですが、ここのご飯食べたらこう思いましたよね。「ダイエットはお休みしよう」って。


 しかし、こんな人気旅館にも関わらず、旅館の方の話によればやはり台風後に少しキャンセルが出てしまったとのこと。旅館のある地域では台風通過時に一時停電があっただけで、通過後には普段どおりに電気や水道が使え、営業しているところが少なくなかったそうです。

 この日の客入りは、私目線でそこまで少ないようには感じませんでしたが、宿泊する朝に旅館からはじめて予約確認の電話がかかってきたのを思い出しました。道は大丈夫なこと、前日もお客さんが車で来ていたことなど教えてくれていたのです。こんな地道な営業努力もあってか、安心して来れた人が多かったのかもしれません。

 こうして通常通りの営業をしている大野荘ですが、台風被害地域に無関心というわけでなく、9月16日の伊勢えびまつりのイベントが中止になったことをうけて、地域の方や旅館の方で南部の方に炊き出しに出かけるという話も伺いました。通常営業を行いながらの支援。その姿勢に思わず「また来ますね」という言葉をかけずにはいられませんでした。

 なお、価格帯は1人1泊2食つきで11900円から2万前後(9月時点のHP参考)。お風呂は茶褐色の御宿天然温泉で、食事も上記の通り豪華ということを考えると、比較的リーズナブルな部類に入るのではないでしょうか。ただし、お料理の内容や、1部屋に宿泊する人数、部屋の広さなどによって金額がことなるため、正しい宿泊料金は旅館ホームページで確認してください。

■ 大原「港の朝市」日曜開催日は大盛況

 「港の朝市」本開催の日曜日を10時頃からのぞいてみました。すると……遠目でもわかるほどの人、人、人。前日寂しげだった「いさばや」さんにも開店前から行列ができていました。おかげで昨日はしょんぼり気味だったお店の方も、見てわかるほどに忙しそうにしていました。

 朝市の会場に足を踏み入れると、入り口ではいつもどおりバーベキューを楽しむ人たちの姿が。購入した魚介類を、その場で焼いて食べられるのもこの朝市の醍醐味です。

 入り口から行列をつくるイカ焼き屋さん、地元で取れた果物などを販売するお店に、焼き菓子や手作りおもちゃを売るお店。新鮮な魚や、郷土料理の“なめろう”、さらには時期にあった汁物や、たこ飯を扱うお店も。







 この日は10時すぎに訪れたのですが、いつも覗くお店のたこ飯はすでに完売。店のおじさん、人の顔をみるなり「たこ飯売り切れ!」とバッテンマークのジェスチャーつきで教えてくれました。食べられなかったのはちょっと残念ですが、商売繁盛でなによりですよ。

 ついでの雑談まじりに、昨日の状況を聞いてみると「(人は少なかったけど)昨日は臨時開催日だからしょうがないよね。でも今日沢山きてくれたから!」と、あっけらかんとした様子。台風の影響を少し心配していましたが、日曜日の盛況ぶりをみるに、少し安心しました。

 大原漁港の港の朝市は、先にも少し触れましたが、基本毎週日曜日(8時~12時)に開催されています。日曜にこちらへ旅行する方は、少し早めの昼食がてらに立ち寄ってみてはいかがでしょう。新鮮なお魚たちがまっていますよ。

■ ヘリコプターで上空へ 空からみた千葉

 大原漁港の朝市とコラボレーションした民間航空企業のヘリコプターイベントがこの日同時開催されていました。価格はコラボレーション価格ということで、通常よりも少し割安。本来1人7000円のところ、グループ人数に応じて1人5000円から6000円でのれるという企画。

 搭乗時間は4分間とのことでしたが、上空にあがるとそれまで何度も来ているにも関わらず初めてみる景色ばかりで、短いながらも充実した時間を過ごすことができました。



 例えば大原漁港のすぐ横にある、人間魚雷「回天」の特攻基地の一つ、第十二回天隊「小浜基地」跡を海側からみた景色、さらに海側から見る町や遠くに見える九十九里浜など。決して陸からでは見ることの無かった貴重な景色がみられます。


 また、上空からは今回の台風被害にあわれたとおもわれる、ブルーシートがかかったお家も見かけることに。断水・停電が復旧した家が多いとはいえ、本格的な復旧はこれから。どうか一日も早く元の生活に戻れますようと、願わずにはいられません。

 実は筆者も子どもの頃、台風被害で実家(九州です)の屋根が吹き飛ぶ経験をしたことがあります。今から30年近く前の話なので、現在ほど被災者に対する支援はすみやかではなく、また近隣も同規模の被害が多かったために、その後すぐに大工不足、屋根業者不足が発生。業者がくるまで半年待ちはザラ、という状況でした。そこで、若い頃に大工として働いていた父自らが、仕事を1か月ほど休んで家の仮復旧をしてくれたことを覚えています。

 その時に、数日間親戚の家に身をよせたこと。家にもどっても屋根のない家の1階で、家族身を寄せてしばらく暮らしたこと。通電できるまでの停電期間に、懐中電灯の明かりをたよりに、親戚が差し入れてくれたおにぎりを兄と妹と食べたこと。そんな想い出が一瞬でよみがえりました。

■ 千葉の隠れた人気キャンプ場で魚介類のバーベキュー!

 新鮮な海産物が手に入る!ということは、すぐにバーベキューがしたくなる人も多いのでは。港の朝市でもその場で焼いて食べることができますが、できればじっくり腰を落ち着けて楽しみたいもの。そこで知って欲しいのが、実は千葉県ではキャンプ場も盛んということです。

 千葉県各地には沢山のオートキャンプ場が存在しています。近年のアウトドアブームの後押しもあり、豪華なグランピング施設に、高規格なオートキャンプ場、さらには手頃な価格のファミリー向け施設と充実しています。

 今回は、大原漁港で仕入れた海産物を手に、普段ネットではあまり情報が出ない、隠れた人気キャンプ場に行ってきました。

 場所は大原漁港から、海沿いに南にくだった勝浦市の山の中。断水・停電被害が大きく報じられた大多喜というエリア側の「勝浦つるんつるん温泉」(勝浦市松野1143)です。


 施設名が「勝浦つるんつるん温泉」ということで、おもわずキャンプ場あるの?と思うかもしれませんが、車の乗り入れ可能なオートキャンプ場を有しています。もちろん名称どおり、本来は宿泊施設を兼ね備えた温泉施設。

 キャンプ場の予約サイトなどとは提携していないらしく、予約は直接電話するしかありませんし、高規格キャンプ場というわけでもありません。しかし、いつ来ても(これまで多分20回ぐらいは来てる)土日はキャンプ客でいっぱい。特に3連休ともなると、早めに電話しないと予約できないことがしばしば。かといって、大々的に宣伝している風でもなく……。それほど、ファンが口コミだけで噂を広めているという、千葉の隠れた人気キャンプ場なのです。

 もしかしたらこうして記事にして紹介することで、常連さんからは「広く知られると予約とりにくなるだろう!」と怒られるかもしれません。すみません……。今回は記事の趣旨が趣旨ということで、ご理解いただければ。私も本当なら教えたくないくらいの、隠しておきたいキャンプ場です……。

 さて、常連さんのお叱りの声を背に、この施設の少し詳しい紹介を。田畑に囲まれたこのキャンプ場は、これから秋にかけて周りをかこむ木々や田畑の色の変化で美しい景色を見せてくれます。

 料金は、1泊1サイト5000円(AC電源つきなら+1000円)。さらに近頃のオートキャンプ場には珍しく、直火OK。薪もキャンプ客には無料で提供されています。ただし薪といってもあるのは材木に近い大きさなので、ノコギリやなたを持参し加工することが必要。薪の使用は常識の範囲でともお願いされています。使いすぎ&燃やしすぎ&持ち帰りは厳禁です。(たまに持ち帰ろうとする人や、キャンプファイヤーをしようとする人がいるらしい)

 別途料金で、名湯百選にも選ばれたという名湯「つるんつるん温泉」にも入浴できます。入浴料金は通常の立ち寄り湯が大人800円(こども400円)に対し、キャンプ客は大人400円(こどもは400円でそのまま)。こちらもお湯は茶褐色。神経痛や皮膚病にいいとされています。

 温泉施設も人気があり、いついっても昼間は地元のお年寄りでいっぱい。大広間でカラオケや食事をする人の姿がここの日常となっています。今回訪れたときにも、大広間からお年寄りの元気な歌声が聞こえてきました。

 受付を済ませると、台風について店員さんと少し立ち話。13日の金曜まで停電していたとのことで、14日の土曜から日帰り温泉だけ再開。キャンプ場の再開は3連休初日の土曜日には間にあわず、筆者がおとずれた日曜日からの再開だったそうです。このため、来たくてもこられなかった人が多かったようで、訪れた日のキャンプ客は筆者含めて4組くらい。「3連休ほんとうは予約けっこう入ってたんだけどね。今日は夜から雨だし……」と残念そうにおっしゃっていました。

 キャンプ場に宿泊したこの日。夜から雨風が強くなる。という予報がでていました。本来であれば、9月10日から営業していた「鴨川シーワールド」まで足をはこんでレポートする予定でしたが、バーベキューする時間がなくなるということで予定前倒しでのキャンプ場入り。今回残念ながら行くことができなかった鴨川シーワールドに思いをはせつつ、旅の最後の晩餐(実際は昼間にしているのですが)バーベキュー。

 港の朝市で仕入れた、貝類、そして伊勢えびを豪快に焼いていきます。貝類についてはバーベキューしやすいよう市場の方が処理してくれたものを使用。伊勢えびについては扱ったことがなかったので、YouTuber「きまぐれクック」さんの動画を参考に「さばいていくよ~」してみました。YouTubeほんと便利。ちなみに、バーベキューで使用した伊勢えび2尾、はまぐり2個、ホタテ1個、カキ1個、サザエ2個は、お値段全部で4500円(税込)。安いし、美味しかったです!

■ 大丈夫なところにはぜひ来て!

 台風15号の通過から1週間以上たちますが、千葉県内には未だに停電・断水の続く地区があります。そして、建物などに被害を受けられた方は、やっとこれから本格的な復旧に入ることでしょう。そうした被害がありつつ、復旧が平行して進められている中での、今回の旅記事。書くこと、出すことにすごく悩むものがありました。批判の声がある程度来るだろうということが想像できたからです。

 ただ、何も発信しなければ千葉県から人の足が遠のく、という事も予想できました。被害が深刻な場所を物見遊山で行くことは、決してしてはいけないことです。しかし、訪れても大丈夫な地域では「いつも通り観光に来て欲しい」と願っている地域だってあります。

 もし「行きたい」と少しでも思う地域があるならば、宿泊予定の施設に復旧状況を問い合わせてみてください。近隣状況をふくめて教えてくれるはずです。また、施設によっては営業や周辺の状況をホームページやSNSで発信しています。予定を立てる際には、ぜひそれらも参考にしてみてください。

 9月には、あと28日からの3連休があります。10月、11月にも連休があります。近場の方は土日を利用しのんびりと、少し遠くの方は3連休を利用してじっくりと。どうか、大丈夫な場所には遠慮無く。みんな、千葉県においでよ!

(宮崎美和子)