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千葉県民なら「なのはな体操“絶対”知ってる説」をそろそろ訂正したい

 「○○地域の人なら絶対○○ができる・知っている」という、全国に知られる謎文化は数多くありますが、逆に「○○地域の人なら絶対○○ができると言われているけど、実は誰でもできるわけじゃない」という文化も存在しています。

 その一つが千葉県民における「なのはな体操」。かつて千葉県出身の芸能人たちが子どものころの思い出として「なのはな体操」をTVなどで披露したことから、「千葉県民なら誰でも知ってる」と思われていますが、実は誰でも知っているわけではないのです。

  • ■ 「千葉県民の鉄板ネタ」だと誤解されているけどそーじゃない

     筆者は千葉県に引っ越してきて20年と少したちます。その間、他県民からよく言われたのが「千葉県民ならなのはな体操知ってる(できる)んでしょ?」。

     「千葉県ならピーナッツが有名だよね」の次によく言われる言葉です。

     また、たまに言われる「千葉県民はピーナッツをよく食べているんでしょ」という認識も誤解。確かに国内生産量83%を占める名産品ではありますが、他県の人と同じようにほどほどにしか食べません。

     子どもたちは学校給食で出る「ピーナッツ味噌」で親しんでいる場合もありますが、これも学校によるので認識はまばら。さらにいえば映画「翔んで埼玉」に出てきた千葉県民的拷問「鼻にピーナツを詰める」という贅沢な使い方もしません。

    ■ なのはな体操を知ってる人・知らない人がいるワケ

     さて、本題の「なのはな体操」。他県民から「千葉県民ならできるんでしょ~」と言われるようになったゆえんは、冒頭紹介したとおり千葉県出身の芸能人がTVなどで披露したこと。全国放送のすごいところが、その影響から「千葉県民の鉄板ネタ」だと誤解されてしまったことです。

     筆者も宴席などで披露を求められたことがあるのですが、「存在は知っているけれども体操は知らない派」なので、場の空気を凍らせることしかできませんでした。話をふった相手は、気を遣ってくれたのでしょうが……。

     なのはな体操を「知ってる人・できる人」は県民のなかに確かに多く存在しています。しかしながら、「知らない人」も実は同じくらい多い存在なのです。

     千葉県健康福祉部健康づくり支援課が平成19年度(2007年)に行った「生活習慣に関するアンケート調査」の結果によると、「健康づくり事業やことばで知っているもの(複数回答)」のなかで、「なのはな体操」が最も多かったもののそれでも43.1%。今(2023年)から16年前の調査結果でこの認知度なのです。

    生活習慣に関するアンケート調査より

     そもそも「なのはな体操」が生まれたのは昭和58年(1983年)。千葉県が県民の健康促進を目的に、二代目県民体操として誕生させました。その後普及活動が積極的に行われ、一時は千葉テレビにて番組が放送されていたそうです。放送期間は平成14年(2002年)まで。

     その頃までは、県内各地の小学校などで積極的に採用されましたが、同時に実施していない地域もありました。よって当時から、県民だれもが「知ってる・できる」という存在ではありませんでした。

     なお、普及活動の終了とともに「なのはな体操」を取り入れる学校や機会も徐々に減少。令和となった現代では、知らない人の方が増加傾向にある存在です。

    ■ 千葉県健康福祉部健康づくり支援課にも聞いてみた

     現状は説明したとおりなのですが、あくまで筆者の体感&調べた結果が主なので、読者によっては「ソース(公式情報)がなければ意味がない!」と言われてしまうかもしれません。そこで「なのはな体操」の普及を担っていた千葉県健康福祉部健康づくり支援課にも話を聞いています。

    ▼県内における現在の状況について

    -- 平成14年(2002年)ころに積極的普及活動はいったん終えたと聞いておりますが間違いないでしょうか?

     その通りです。

     なのはな体操については、県民一人ひとりの「健康づくり・体力づくり」を提唱する「健康で明るい県民づくり運動」(昭和57年~平成13年度※1)の一環として、県民に体を動かす習慣を身につけてもらうために、いつでも、どこでも、だれでも気軽に楽しくできる体操としてなのはな体操が作成され、昭和58年3月※2に公表されました。
    (編集部註:※1=西暦だと1982年~2001年度、※2=1983年)

     しかし、平成14年度に「健康ちば21」が制定され、「健康で明るい県民づくり運動」が終了したことに伴い、平成14年3月に本体操の普及は終了しました。

     現在は健康ちば21(第2次)中間評価重点取組のひとつとして、いつでも、どこでも、だれでも気軽に楽しくできる体操を活用し、一日の身体活動量を「+10分」増加させることを目的とした「WORK+10(プラステン)」の普及を行っています。

    -- 普及活動終了後も県内小学校などでは引き続き採用されているのでしょうか?現状わかる範囲で教えてください。

     誠に恐れ入りますが、終了済事業につき把握しておりません。

    ▼なのはな体操を積極的に行っていた世代や地域について

    -- なのはな体操を積極的に行っていた世代・時期、地域を教えてください。

     なのはな体操の普及・啓発については全県的に行っており、特定の地域に集中して取り組んではおりませんでした。なお、取り組んでいた世代等については把握しておりません。

     また、実施地域については、CD・DVDの貸出記録上は、貸出の多かった地域として千葉市地域、県外、葛南地域、東葛飾地域、印旛地域の順となっておりました。地域の別については千葉県内の地域振興事務所を単位としております。また、当課で把握しているのはあくまで資料の貸出数であり、実際にどの程度実施されたかについては存じかねます。

    ■ なんで誤解が続いているの?

     千葉県健康福祉部健康づくり支援課の回答では、世代・実施地域などは把握できていないとのことでしたが、普及活動期間が昭和57年~平成13年度(1982年~2001年度)であることから、おそらく小学生時代親しんだ世代は現在40代後半あたりから20代後半あたり。

     また普及用の「なのはな体操」CD・DVD貸し出し状況から考えるに、県内でもやはり積極度にばらつきがあるようです。貸し出し順=積極度と仮定すると、一番積極的だったのは「千葉市地域」ということになります。

     今から約20年前に積極的な普及活動は終了していますが、それでもまだ「なのはな体操」について語られることが多いのは、なんといっても「当時小学生だった世代が昔を懐かしみ話題に出す機会が多いこと」が考えられます。芸能人がTVで紹介したのも、これにあたるでしょう。

     他にももう一つ考えられる原因があり、いまだ定期的に「千葉県民なら誰でも知ってる」と紹介されることがあるからです。

     例えば千葉県公式マスコットキャラクターの「ちーばくん」は、公式Twitterアカウントで2019年に「千葉県民なら誰でも知ってる「なのはな体操」」とつぶやいています。ちーばくんにとっては「みんな知ってる」という認識だったようですが、この時点すでに意見はわかれ、リプライ欄には「知ってる派(懐かしい)」と「しらない派」の2つの声がよせられていました。

     また、ネットで検索してみると次のような紹介のされ方をしたネットニュースやブログ記事を簡単に見つけることができます。

    「千葉県民だけが知っている“なのはな体操”」
    「千葉県民ならほとんどが知っている“なのはな体操”」
    「あるある 千葉県民は“なのはな体操”が踊れる」
    「千葉県育ちならみんな知ってる体操」
    「千葉県民なら知らない人はいない」

     更新日をみると、2019年や2020年と割と最近。さらにSNSで調べてみると、今年に入ってからも似たような投稿を多数見つけることができました。SNSの場合は、まさに子ども時代に親しんだ千葉県育ちの方の投稿が多い印象です。

     まぁ「ちーばくん」ですら4年前までツイートのような認識だったわけですから、他県民から「千葉県民の鉄板ネタ」と誤解されていても仕方ないといえば仕方ないのかもしれません。

     一応本稿では、誤解を解いてはおきましたが、これだけSNSが普及しているにもかかわらず「訂正情報」に限ってなかなか拡散されないもの。たぶんこの誤解はまだまだ続くのではないかと思います……。

    ※訂正:初出時「テレビ千葉」としていた箇所は「千葉テレビ」の誤りです。訂正してお詫びいたします。

    <記事化協力>
    千葉県健康福祉部健康づくり支援課

    <参考>
    らっかせいの収穫量(しゅうかくりょう)の多い県はどこかおしえてください。(農林水産省
    平成19年度「生活習慣に関するアンケート調査(PDF)」(千葉県
    チーバくん(@chi_bakun_chiba
    【うなりくん】なのはな体操 踊ってみた【千葉県民の日】(成田市・うなりくんYouTubeチャンネル
    ※見出し画像はイメージです。

    【筆者プロフィール】
    宮崎美和子:鹿児島県産。放送関連、印刷、ソフト開発会社を渡り歩きさまざまな職種を経験。ライターデビューもこの頃。その後ゲーム会社に転職しMD(主にサブライセンス管理)を担当。2社目のゲーム会社ではマーケティングの後、運営・システム関連を管理職として担当。2008年にWEBライターとして独立。得意分野はオカルト、ネットの話題、過去職の経験から著作権と雑多。趣味は読書。40すぎてバレエを習い始めました。

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