イギリス海軍のクイーン・エリザベス級空母2番艦、プリンス・オブ・ウェールズ(R09)が2019年9月19日(現地時間)、初めての試験航海に出発しました。9月23日には、スコットランド沖の北海で初のヘリコプター着艦も行なっています。

 2011年5月26日の起工以来、およそ8年の建造期間を経て完成した空母プリンス・オブ・ウェールズ(R09)。ついに建造されたスコットランドのロサイス造船所を離れ、初航海の時を迎えました。

 ダグボートに引かれ、フォース湾に面したロサイス造船所の岸壁を後にしたプリンス・オブ・ウェールズ。外海に出るまでは、安全のためタグボートに曳航されて進みます。

 フォース湾といえば、世界遺産に登録されている1890年に完成した鉄道橋、フォース橋が有名です。この橋の桁下高は46m。空母プリンス・オブ・ウェールズの場合、そのままでは後部の航空艦橋上に立っているメインマストが橋桁にぶつかってしまいます。

 このため、プリンス・オブ・ウェールズには、マストを前方に倒す機構が備えられています。マストを倒し、無事にフォース橋の下をくぐり抜けます。この時、飛行甲板ではバグパイプによる演奏が披露されていました。スコットランドで建造された船であることを感じさせる演出です。


 記念すべき初航海の日を迎えたプリンス・オブ・ウェールズの艦長、ダレン・ヒューストン大佐は「我が艦の乗組員たちがこの記念すべき日に向け、それぞれの責務を見事に果たしたことを、私は非常に誇りに思います」と語っています。

 フォース湾を抜け、北海に出たプリンス・オブ・ウェールズは、初めての航空機をその飛行甲板に迎えました。コールサイン「ドルフィン14」としてやってきたのは、ロブ・プライアー大尉が操縦するマーリンMk2のZH856号機。

 9月23日11時15分、スティーヴン・アシュクロフト航空機誘導員に導かれ、マーリンMk2はプリンス・オブ・ウェールズに着艦しました。



 この後、マーリンMk2は6回にわたり発艦を繰り返し、緊急事態など様々な条件での着艦訓練を艦の乗組員と実施しています。この着艦訓練を指揮したフィル・リチャードソン中佐は「この着艦は、クイーン・エリザベス級空母のプログラムが大きな成功を収めたという集大成です。速いジェット機とヘリコプターを運用するという、2隻のイギリス海軍第5世代空母の能力は、我が国を海上航空の最先端に至らしめるものです」と、この記念すべき瞬間を振り返っていました。


 空母プリンス・オブ・ウェールズは、今後2か月にわたりヘリコプターの発着艦をはじめとした各種の初期試験を行う予定となっています。そして2019年のクリスマス前には、母港となるポーツマスで、チャールズ皇太子(プリンス・オブ・ウェールズ)のカミラ夫人が出席して、就役式典が行われます。

<出典・引用>
イギリス海軍 プレスリリース
Image:Royal Navy, Crown Copyright

(咲村珠樹)