エアバスは2020年1月16日(現地時間)、2019年12月18日にフランスのトゥールーズにおいて、同社の旅客機を使い、初めて画像認識技術による自動制御の離陸に成功したと発表しました。およそ4時間半の間に、計8回の離陸を行ったとしています。

 離陸はパイロットにとって、緊張する場面の一つ。航空機事故の約70%が、離陸上昇中の3分と着陸時の8分間に集中しており、この時間帯は「魔の11分」と呼ばれています。パイロットは一度に多くの情報を処理し、それに応じた操縦操作をする必要に迫られるのです。

 離陸ではエンジンを全開にし、風によって機体が左右にブレるので、滑走路から逸脱しないよう方向舵で修正しながら、機体重量に応じた機首上げ速度(VR)に達したタイミングで操縦桿を引き、上昇に移ります。この時、何かトラブルがあれば離陸を中止するか、速度が出過ぎていた場合は滑走路端までに止まりきれないので一旦離陸し、また引き返さなくてはなりません。

 エアバスが2018年6月にスタートさせた「AATOL(Autonomous Taxi, Take-Off & Landing)」プロジェクトは、誘導路を走行して滑走路へ向かい、離陸滑走から離陸、そして着陸を行う場面を自動化しようというもの。もちろん無人で運航する訳ではなく、パイロットが乗って不測の事態に備えます。

 エアバスの最終組み立て工場に隣接する、フランスのトゥールーズ・ブラニャック空港で行われた試験では、2名のパイロットと飛行試験の技術者2名がコクピットに。画像認識技術により滑走路の中心を検知し、それを維持しながら離陸滑走するとともに、機体重量に応じた機首上げ速度(VR)に達すると機首を上げ、決められた上昇率で離陸上昇に移るという手順を自動制御で行いました。

 試験を担当したエアバスのテストパイロット、ヤン・ビューフィルス氏は「飛行機はこの記念すべき試験の間、我々が想定した通りの動きをしてくれました。ちゃんと滑走路に沿って離陸滑走を行い、離陸してからは航空路管制の指示に従い、オートパイロットをセットすることができたのです」と語っています。

 ヤン・ビューフィルス氏は、試験の様子について「我々はスロットルレバーを離陸位置にセットしたあとは、飛行機の挙動を監視していました。飛行機は滑走路中心をキープしたまま加速し、システムにセットした機首上げ速度に達すると自動的に機首を上げ、離陸の数秒後には定められた角度で上昇していきました」とコメント。エアバスが公開した動画では、機長席のパイロットがついクセでスロットルレバーや操縦桿を操作しようとするのを、副操縦士席にいるパイロットが押しとどめる様子も映っています。

 このAATOLプロジェクトは、専門のパイロットを必要としない、パーソナルな空の移動手段「空のタクシー」を実現するために必要な基礎技術を蓄積する目的もあります。エアバスでは今後、画像認識技術を使用した自動制御の地上走行(タキシング)や着陸を、2020年半ばに試験することを目指して技術開発を続けるとしています。

<出典・引用>
エアバス プレスリリース
Image:Airbus

(咲村珠樹)