NTTドコモとエアバスは2021年11月15日、エアバスの高高度無人機「ゼファー(Zephyr)」を使用して携帯電話の電波中継実験に成功したと発表しました。ゼファーは太陽電池の電力で長期間飛行可能な無人機。この実験の成功により、空中に携帯電話の基地局を開設する基礎技術が確認されたことになります。
ゼファーはエアバスが開発した「HAPS」と呼ばれる、無人高高度プラットフォーム・ステーション(High Altitude Platform Station)。太陽電池を電源とする電動機で、高高度の成層圏を長期間にわたって飛行し、地上の観測や電波の中継局として利用することを目的としています。
NTTドコモは、地上での工事や電源確保が難しい山岳地帯や離島、海上などをカバーする方法として“空中の基地局”を構想。そこでエアバスの高高度無人機ゼファーを使用し、基地局機能の実証をする電波中継実験を行ったのです。
アメリカで行われた実験では、無人機「ゼファーS」に電波の送受信器を搭載し、約18日間にもおよぶ連続飛行を実施。昼夜を問わずさまざまな気象条件の中、高度20kmまでのさまざまな高度や飛行パターンで電波の送受信を行いました。
実験に使用された電波の周波数帯は、ベースとなる2GHzとナローバンドの450MHz。最大140kmの範囲まで送受信を行い、問題なくデータのやり取りができたとしています。これにより、スマートフォンなどの電波を成層圏で中継することが可能であることが実証されました。
NTTドコモの中村武宏6G-IOWN推進部長は「HAPSは、5Gの高度化と6G(5G Evolution & 6G)のサービス範囲を拡大する確かなソリューションとなるだろうと考えています。今回は、実際にHAPSを用いた長期間の実験により、特にスマートフォンとの直接通信におけるHAPSの有効性を実証することができました。これらの結果を踏まえ、エアバスとともに5G Evolution & 6GにおけるHAPSの実用化に向け、さらに研究を進めていきたいと思います」とのコメントを発表しています。
空中に長期間居続けることのできる、ゼファーのようなソーラー無人機は、基地局の設置が困難な場所でもスマートフォンなどの移動体通信が可能になるばかりでなく、災害時に地上の基地局が使用不能になった時でも通信手段の確保が可能になる有力なプラットフォームです。NTTドコモとエアバスの研究がどのように実を結ぶのか、注目されます。
<出典・引用>
NTTドコモ プレスリリース(英文のみ)
エアバス プレスリリース
画像:Airbus
(咲村珠樹)