皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。
今回は、数年前に運用が始まったばかりの台湾軍の新型レーションです。
お隣の国でありながら、台湾軍の情報はあまり見聞きしないように感じますが、どのようなレーションが使われているのでしょうか。
●台湾軍加熱式野戦レーション
格好良いグリーンのパッケージです。真ん中にあるイラストは、その下に記述のある国防部聯合後勤司令部のシンボルマークです。国防部聯合後勤司令部とは、補給や整備、輸送などの兵站業務を担当する台湾軍の組織です。イラストを細かく見ると色々と興味深いですが、特に気になるのは、翼の生えたラクダの足元にある地図でしょうか。大陸側の中国本土と台湾の両方が描かれています。
裏面には、食べ方や注意書きなどが書かれていますが、台湾で使われている漢字は、中国本土で使われているものよりも日本の漢字に近く、何となく意味を理解することができます。このパッケージのメニューは、東坡肉(トンポーロー、豚の角煮のような中華料理)であることが分かります。
●パッケージ内容
パッケージを開封すると、以下の物が出てきました。
・加熱袋(白飯、東坡肉、加熱剤入り)
・加熱用水
・紙皿
・スプーン
・紙ナプキン 3枚
加熱袋は、水を入れると加熱剤が発熱して料理を食べられるようになる仕組みですが、何と袋の底がちゃんと閉じられずに穴が開いています。ちょっと嫌な予感が……
幸い加熱袋の上側はきちんと閉じられていたので、穴のある底側から開封して中身を取り出してみました。(本来は取り出さずに加熱します。)
白飯、東坡肉、加熱剤のパックが出てきましたが、何と加熱剤は日本製の見慣れた『モーリアンヒートパック』でした。
『モーリアンヒートパック』は、陸上自衛隊の戦闘糧食Ⅱ型にも採用されており、私も市販バージョンを非常食と共に備蓄しています。メーカーのホームページで確認してみると、陸上自衛隊と台湾軍の他にも、航空自衛隊、タイ国軍、オランダ軍が採用しているとのことです。
さて、袋から出てきた加熱剤は、カチカチに硬くなっていました。本来のモーリアンヒートパックは、中身がサラサラで柔らかいので、どうやらこれは劣化しているようです。加熱袋が密封されていなかったのが原因かもしれません。
白飯は、200gのものが1パックだけで、陸上自衛隊の戦闘糧食Ⅱ型の半分の量です。そして白飯と東坡肉の合計カロリーは、574kcalとかなり少なく、各国レーションの一般的なカロリー数の半分程度しかありません。台湾軍のレーションに関する思想や運用は、もしかしたら他国とは違う特別なものがあるのかもしれません。
●加熱
白飯、東坡肉、加熱剤を加熱袋に戻して、加熱用水を袋に注ぎ入れました。加熱剤が劣化しているかもしれませんが、ダメ元でやってみました。でも予想通りほとんど発熱しませんでした。人肌くらいに温まった程度です。
しょうがないので、手持ちのモーリアンヒートパックに交換して水を入れ直しました。
写真では分かりにくいですが、水蒸気が噴き出して、高温になっています。加熱剤の温度は、メーカーのホームページによると摂氏98度にまでなるそうです。
20分間加熱する必要がありますが、これは米を柔らかくするために必要な時間です。
●試食
紙皿に白飯と東坡肉を盛り付けました。白飯は、パックの内側にこびり付いて取り出すのに苦労しました。東坡肉は、豚肉と人参、大根が入っています。
食べてみると、東坡肉はとても美味しいです。市販品を転用したのかもしれませんが、スーパーで売れるレベルだと思います。豚肉はとても柔らかく、大根は歯ごたえが残っています。微かに中華風の香辛料を感じます。
白飯は、パック入りだったせいか少しベタついています。残念ながら日本のパック入りご飯と比べると出来は良くないです。
それにしても量が少なく、少食の人でも完食してしまいそうです。台湾軍では、一緒に他の食料も支給するのか、それとも1食で2パック支給するのか、もしかして兵士が自腹で食料を買いそろえるのか、どのように運用されているのか非常に気になるところです。
量やカロリー数には疑問がありますが、味は良かったのでぜひとも他のメニューも食べてみたいです。麻婆豆腐やカレー、牛丼など、全部で11種類のメニューがあるようです。
注意してください!!
台湾軍レーションを初めとする各国のレーションは、我々民間人が手に入れて食べることを前提としていません。
これらを販売する業者なども、あくまでコレクション品として取り扱っています。
食品としての安全性は、各国政府、製造業者、販売者の誰も保証してくれませんので、万が一食べる場合は、すべて自己責任になります。
(文・写真:Dacho)