おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

日中国交回復41周年記念本『双頭の龍~小説・田中角栄と周恩来』―来年の映画化に向け「はずみ」

update:

日中国交回復41周年記念本『双頭の龍~小説・田中角栄と周恩来』―来年の映画化に向け「はずみ」日本と中国。お互いが感じている「近くて遠い国」という微妙な肌感覚は、良きにつけ、悪しきにつけ両国の政治、文化に大きな影響を与えてきたと言っても過言ではないだろう。

昨今の尖閣諸島の領有権を巡る状況を見ていると、「近くて、さらに遠い国」になりかねない危惧を覚える人も多いのではないだろうか。隣国同士、手を携えて、心から共存共栄を願える日が来て欲しい。


  • 【関連:日本のマスコミが絶対に伝えない「中国」の真実!尖閣問題の裏側にも踏み込んだRecord China主筆の本が出版】

     

    そんな鬱々としていた気持ちを抱いていたときに手にしたのが、映画、テレビドラマで数々の脚本を手掛けている石森史郎氏の著書『双頭の龍~田中角栄と周恩来』(創芸社刊、四六版、416頁)=写真=だ。

    秋にはクランクインし、来年には同名の映画が公開されるという。本を読むのか先かそれとも映画かというコピーが昔あったが、それと全く同じ戦略を採用している。

    ちなみに映画プロデューサーは映画監督・大林宣彦氏の数々の映画制作に関わったことで知られるあの、芥川保志氏だ。

    1972年9月29日、日本側・田中角栄首相、中国側・周恩来首相の署名を経て日中国交正常化が成立した。既に様々な歴史書で詳細は語られているところだが、調印に臨んだ両首相の人となり、調印に向けての葛藤や人間模様はあまり
    語られていない。

    「双頭の龍~田中角栄と周恩来」は、日中に横たわる微妙な肌感覚、習慣、歴史の違いを乗り越え辿り着いた日中の国交化正常化を、両首相の生い立ちや、背景に焦点を当て、小説という手法で日中関係のあり方を再認識してみようという良書だ。

    物語は、日中国交正常化の会談を前に、赤龍と青龍が雷鳴の中で壮絶な戦いをしている夢でうなされる周首相、明け方に、同じように赤龍と青龍の壮絶な対峙の夢を見た田中首相の描写から始まる。焦り、葛藤、恐怖……。

    会談を前に様々な苦悩が襲いかかってくる両首相、その考え方のバックグボーンを解き明かすために、物語は2人の生い立ちに入っていく。

    日本への留学経験がある周首相、昭和14年に盛岡騎兵第3旅団24連隊の2等兵として中国大陸の地を踏んだ田中首相。
    それぞれの土地、文化にも慣れ親しんだ両首相は、お互いに「数奇な運命」を感じたに違いないだろう。

    クライマックスの日中国交正常化交渉の場面では、順調に行きかけかけていた交渉が一触触発状態になり、「あわや破談か」という場面にも直面。田中、周両首相はもとより、当時の大平外相、中国の姫外交部長などが織りなす人間模様、それを克服して会談成功に至る過程の描写は臨場感あふれ、まさに必読である。

    同書には、「『最初に井戸を掘った人の恩は末代になっても忘れない』。周恩来は角栄の功績を中国の故事を使って讃えた。中国の新聞は2人を『双頭の龍』と絶賛した。」という一節が出てくる。

    1972年に「遠くて近い国」を何とか克服しようとした2人の最高指導者、マスコミがいた。

    折しも今年は日中国交正常化41年。「双頭の龍~田中角栄と周恩来」を読んで、改めて日中関係を考えてみるのも良い機会ではないだろうか。

    [目次]
    プロローグ 
    第一章 角栄 一期一会 
    第二章 周恩来 百沢芋頭 
    第三章 日中国交正常化調印 
    エピローグ

    『双頭の龍~小説・田中角栄と周恩来』表紙

    (文:蓮香尚文)

    あわせて読みたい関連記事
  • Xの日本トレンドに「中国地名」が大量出現 ユーザーに困惑広がる
    インターネット, 社会・物議

    Xの日本トレンドに「中国地名」が大量出現 ユーザーに困惑広がる

  • 「楊国福マーラータン」虫混入問題、原因は乾麺か?最新調査報告を発表
    インターネット, 社会・物議

    「楊国福マーラータン」虫混入問題、原因は乾麺か?最新調査報告を発表

  • Spiritle(画像出典:presskit)
    ゲーム, ニュース・話題

    独特なグラフィックスと本格的な戦略が楽しめるデジタルボードゲーム「Spiritl…

  • 台湾海峡を通過したリッチモンド(Image:Crown Copyright)
    宇宙・航空

    イギリス海軍フリゲートが台湾海峡を通過 北朝鮮の国連決議違反にも対処

  • 対中タスクフォース設立を発表するバイデン大統領(Image:ホワイトハウス)
    宇宙・航空

    バイデン大統領 国防総省内に対中国タスクフォース設置を発表

  • 宇宙・航空

    中国初の火星探査機「天問1号」火星に接近

  • 宇宙・航空

    アメリカ 南シナ海での中国軍事演習を非難しつつ同日程で海空軍の共同訓練実施

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    アジアで人気爆発の中国BLアニメ「魔道祖師」日本版シリーズ制作決定

  • 宇宙・航空

    中国の新型ロケット長征5号3号機 まもなく打ち上げ試験へ

  • エンタメ, 映画

    人生を取り戻せっ・・・!「カイジ 動物世界」予告編とポスターがついに解禁

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)
    商品・物販, 経済

    ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」…

  • キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化
    商品・物販, 経済

    キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

  • 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言
    社会, 経済

    時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

  • ゴロっとチキンのカレーナポ
    商品・物販, 経済

    パンチョ初の人気投票1位「カレーナポ」が進化 期間限定で復刻登場

  • 山崎賢人さんと坂口憲二さん(※山崎賢人さんの崎の字は正しくは「たつさき」です)
    イベント・キャンペーン, 経済

    サントリー生ビール新CMメイキング公開 山崎賢人ら“生ひげ”姿で掛け合い

  • なか卯に「黒トリュフ薫る きのこ親子丼」が期間限定で発売
    商品・物販, 経済

    なか卯に「黒トリュフ薫る きのこ親子丼」が期間限定で発売

  • トピックス

    1. 丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が10月6日から、人気ラーメン漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボした「らーめん缶」を、東…
    2. これでもう怒られずにすむ? 息子が作った「ママの攻略本」の実力は

      これでもう怒られずにすむ? 息子が作った「ママの攻略本」の実力は

      親に怒られてしまった子どもが、その後に取る態度はさまざまです。落ち込む子もいれば、しっかり反省する子…
    3. 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

      インターネットを使っていると、ふとした瞬間に現れる「警告ポップアップ」。 近ごろでは「サポート詐欺」…

    編集部おすすめ

    1. 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)

      ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」を発売

      マクセルイズミ株式会社は、ストッキングやタイツなどの繊細な衣類にも対応する毛玉取り器の新モデル、「毛玉とるとる Pro(KC-NW825)」…
    2. キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンが、バンダイの「ガシャポン」とコラボレーション。歴代のカメラとレンズをミニチュア化した「Canon ミニチュアカメラコレクション」を…
    3. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    4. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    5. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト