中国国家航天局(CNSA)は2021年1月3日(現地時間)、中国初の火星探査機「天問1号」が火星の公転軌道に入ったと発表しました。発表によると、火星まで約830万kmにまで接近した探査機の状態は安定しており、これから1か月以上かけて減速したのち、火星周回軌道に入って着陸への準備を整えるとのことです。
中国初の火星探査機「天問1号」は、2020年7月23日に中国の海南島にある文昌宇宙センターから、長征5号ロケットにより打ち上げられました。中国の火星探査計画としては、2011年11月の蛍火1号が最初のものですが、ロシアの火星探査機「フォボス・グルント」とともにゼニットロケットで打ち上げられたのち、予定した地球脱出軌道への投入に失敗しています。
探査機の名称「天問」は、前漢の学者劉向が楚の詩を集め、自身の詩を加えて編纂した詩集「楚辞」に収録された屈原の詩「天問」に由来します。「天問」は宇宙、人生、政治、怪異、伝説、歴史、故事などに関する172もの疑問を天に問いかけるという内容で、探究心の象徴として探査機の名称に選ばれたといいます。
天問1号の技術的目標は、火星への飛行と周回軌道に入るまでの航法・軌道制御システムの確立と、火星表面への降下・着陸、そして長期間にわたる探査機の自律制御と通信といった深宇宙探査に必要な技術の確立。学術的目標は火星表面の探査とサンプル採取を実施し、火星の地質的特性と水の分布状況、そして火星の大気組成や気候といった環境特性を調査することです。
予定された軌道に投入された天問1号は、無事起動にも成功。リモートカメラを展開し、宇宙空間で「自撮り」も実施し、機器が正常に作動することも確認されました。
火星への飛行では、全部で5回の軌道修正が実施されます。ここまでの軌道修正は順調に終了し、火星周回軌道への最終段階までこぎつけました。
今後、天問1号はゆっくりと減速し、火星の引力圏に入る軌道修正を実施します。火星周回軌道に入ると、ローバー(探査車)を搭載した着陸ステージを分離し、いよいよ中国初の惑星探査が始まることになります。
<出典・引用>
中国国家航天局 ニュースリリース
Image:中国国家航天局/中国航天科技集団
(咲村珠樹)