ドクターヘリよりも悪天候に強く、速く、より遠隔地まで緊急性の高い患者を移送できるメディカルジェット(医療用小型ジェット機)。
日本でも2017年から北海道で中日本航空のセスナ・サイテーション560を使用して本格運用が開始されていますが、より広い国土を持つ中国でも中国赤十字(中国では「紅十字」)が2008年から行なっています。その中国のメディカルジェットの新型機として、ガルフストリームG550が導入されました。2018年7月25日(アメリカ時間)、ガルフストリームから発表されています。
中国におけるメディカルジェットは、広い国土を持つために日本よりも先行しており、ホーカー400(旧称:三菱MU-300ダイヤモンド)やリアジェット60、リアジェット85、ダッソー・ファルコンシリーズなどを使用して患者の搬送を行なっています。これ以外にも、患者搬送用のプロペラ機やヘリコプターを多数保有しています。
今回、新たに導入されるメディカルジェットは、ガルフストリームG550(最大航続距離1万2501km)をベースにしたもの。機内にはベッドや医療機器が備えられており、さながら「空飛ぶICU」。機内でレントゲン撮影も可能です。また、ベッドの横には折りたたみ式の座席が2席用意されており、看護師や付き添いの人が患者のそばで対応することができます。
このメディカルジェットは、中国紅十字(赤十字)のうち、北京を中心とする地域で活動する北京市紅十字会緊急救援中心の首都空地救援団で運用される予定です。また、中国紅十字では、G550よりも航続距離の長いG650ER(最大航続距離1万3890km)をベースにしたメディカルジェットにも興味を示しているといいます。これは中国全土をカバーできるだけでなく、外国へ患者を移送する場面でも活用できる機体を模索しているのかもしれません。
天候に左右されずにより速く、遠くの医療機関まで、処置を継続したまま患者を搬送できるメディカルジェット。小型で取り回しやすいビジネスジェット機は、このような用途にも使用されています。
Image:Gulfstream
(咲村珠樹)