エルファリアII今回ご紹介するのは1995年のスーパーファミコンソフト『エルファリアII』。その名の通り『エルファリア』の続篇であり、エルファリアとは劇中の世界の名前です。本作は、「ラ」という世界のバランスを司る力を巡る物語ですが、個人的には人間とエルフの関係が印象に残りました。


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本作の冒頭、主人公・キバはエルフであるリーファと道中を共にすることになりますが、二人の仲は険悪でした。本作の世界では、エルフは人里離れた村でひっそりと暮らしており、部外者を拒んでいます(この点は、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ・・・』や『聖剣伝説3』も同様ですね)。この村に足を踏み入れたキバに対し、リーファの父・ユーワンは下手に出てリーファのことを宜しく頼みますが、キバは「足手まといだ」と言ってまたもやリーファと喧嘩を始めてしまうのでした。かくの如く二人は反目し続けるのです。

冒険を続けるキバ一行は、原始時代のエルファリアにタイムスリップします。そこでは、人間は洞窟に住んでおり、それ以外のところにエルフが住んでいました。しかし、洞窟内にはメガニウラ(以前、上野の国立科学博物館に模型が展示してありました。アレは怖い)、ディアトリマや恐竜が生息しており、人間は生命を脅かされていました。そこで、エルフの好意により、人間も洞窟の外で暮らすようになったのです。この時点では、人間とエルフの関係は友好的でした。それなのになぜ、現代では人間とエルフの間に深い溝があるのか。その原因が明らかになるのは、ストーリーの後半です。

さて、キバ一行は原始時代から現代に戻ってきますが、その途中、レーナという人間の女性がはぐれてしまいます。レーナが辿り着いた先は、原始時代より後、現代より前の時代でした。この時代で記憶を失ったレーナは、エルフの王・エルザードの妃となり、デイリリ(=忘れ草)と名乗ることになります。

一方、キバ一行は尚も冒険を続け、ストーリー後半にはキバ一行もレーナが辿り着いた時代にタイムスリップします。そこでは、人間とエルフは土地を巡って戦争を繰り広げていました。原始時代に於いては、人間とエルフは同じ土地で仲良く暮らしていたにも拘らず、です。そして、原始時代に於いては、人間はエルフの好意に感謝していたにも拘らず、です。恐らく、現代での人間とエルフの確執は、この時代に端を発しているのでしょう。人間でありながらエルフの王妃となったレーナ=デイリリは、人間とエルフの橋渡し役になることも可能であった筈ですが、何と人間によって殺されてしまいます。これに怒り狂ったエルザードはモンスターとなり、世界を破滅させようとします。キバ一行はエルザードを止めようとしますが、世界は消滅してしまう。ですが、世界のタマゴという不思議な卵によって世界は再生し、キバ一行も生まれ変わることが分かります。キバはリーファに「生まれ変わってリーファのことが分からなくなるのが心配だ」と話すが、リーファは「きっと分かる」と告げるのでした。

再生した世界(現代の世界)で、キバの生まれ変わりであるシバは、リーファの生まれ変わりであるイーファと出会います。シバは、最初はイーファと初対面だと思っていましたが、しかし会ったことがあると悟ります。そして「会うのをずっと待っていた」と語るのでした。

ゲームの前半ではキバとリーファの間には喧嘩が絶えませんでしたが、エンディングでは心温まる描写が描かれた訳です。再生した世界で人間とエルフの関係がどうなっているかは定かでありませんが、蓋し、エンディングでのキバとリーファ(シバとイーファ)の描写に、人間とエルフの和解を象徴させたのではないでしょうか。即ち、キバとリーファが対立を乗り越えて友情を築き上げたことを描くことによって、人間とエルフの和解を類推させようとしたのでしょう。言い換えれば、キバとリーファは人間とエルフの縮図であったと言えます。人間とエルフは、時空を超えて和解を果たしたのです。

<スタッフ>発売元・ハドソン、キャラクターデザイン・松下進、音楽・タケカワユキヒデ

(文:コートク)