おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】175回 グレートマジンガー/桜多吾作(原作・永井 豪)

桜多版グレートマジンガー-1「うちの本棚」、今回は桜多吾作版「マジンガーシリーズ」第二弾『グレートマジンガー』を取り上げます。朝日ソノラマの「サン・ワイド・コミックス」で全二巻で刊行されたもので、同じ作品の単行本の中でもレアなものになるかと思います。

【関連:174回 マジンガーZ/桜多吾作(原作・永井 豪)】

桜多版グレートマジンガー-1 桜多版グレートマジンガー-2

  • 本書はテレビアニメ『グレートマジンガー』の放映に合わせて、秋田書店の月刊誌「冒険王」に連載された作品で、初単行本化は、秋田書店の「サンデーコミックス」、のちに本書、その後、双葉社でも刊行されている。

    ご承知のように永井 豪原作の『マジンガーZ』の続編という位置づけでアニメは制作され、本作品もその流れに沿って「マジンガーシリーズ第二弾」とされるわけだが、『マジンガーZ』後半で見せた桜多オリジナルの展開は連載開始から際立っている。とくに「非情な戦士」という剣 鉄也のキャラクターは第一話で強烈に印象づけられることになる。

    また、グレートマジンガーのパートナーロボット、ビューナスAに搭乗する炎ジュンは、一、二話では普通の肌の色として描かれており、第三話で自分の肌の色をコンプレックスに感じているというエピソードが描かれることで、褐色に変更される(アニメ版でも永井 豪の初期設定では白人とのハーフだったということなので、桜多版はそれを踏襲していたのかもしれない)。

    本作品で特に印象に残るのは、グレートマジンガーが量産されるというエピソードだろう。と同時に、どちらかいえば低年齢層向けの「冒険王」の読者にはちょっと難しいとも思えるハードな展開にストーリーは向いていく。ミケーネ帝国の魔手から世界を守っているはずのグレートマジンガー(剣 鉄也)や科学要塞研究所が、日本政府の裏切りともいえる行為でゲリラ活動せざるを得なくなるなど、後半はアニメの設定を元にした桜多吾作
    オリジナル作品と言っていいものになっている。また『マジンガーZ』後半で登場したみさとが再登場しているが、その最期も衝撃的なものとなっている。

    アニメ版では『マジンガーZ』の兜 甲児より、剣 鉄也は大人の雰囲気で描かれていたわけだが、桜多版は、多少年上という感覚はあるものの、アニメ版のイメージからすると幼く描かれている。これはジュンも同様だ。

    本書第二巻の冒頭では、劇場公開された『グレートマジンガー対ゲッターロボ』のコミカライズ作品が収録されているが、こちらもアニメ版とは違った展開を楽しめる作品になっている。
     今回初出としてネットで確認した講談社「テレビマガジン増刊」としたものを記載したが、同誌では石川 賢によるコミカライズが掲載されていたと記憶しており、もしかしたら初出誌は違っているかもしれない。

    ちなみに、桜多吾作は同じ『グレートマジンガー』を講談社の「おともだち」「ディズニーランド」にも連載していたようだが、こちらは単行本化されていないのではないだろうか。

    初出:秋田書店「冒険王」1974年10月号~1975年9月号、
       講談社「テレビマガジン増刊号」1975年4月15日

    書 名/グレートマジンガー(全2巻)
    著者名/桜多吾作
    出版元/朝日ソノラマ
    判 型/B6判
    定 価/各690円
    シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
    初版発行日/第1巻・昭和62年11月20日、第2巻・昭和62年12月21日
    収録作品/グレートマジンガー

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 4K修復で蘇った「劇場版マジンガーシリーズ」上映
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「劇場版マジンガーシリーズ」上映!「ロボットガールズZ」のトークイベントも

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    ゲッターロボ・サーガ最終作「ゲッターロボ アーク」ついにアニメ化

  • エンタメ, 舞台

    舞台版「キューティーハニー」2020年2月に上演決定 元NMB48・上西恵主演

  • インターネット, 社会・物議

    ロボットガールズZ×西武鉄道コラボが実現!記念乗車券発売へ

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】177回 キューティーハニー/石川 賢(原作・永井 豪)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】176回 UFOロボ グレンダイザー/桜多吾作(原作・永井 豪)

  • アニメ/マンガ, 放送・配信

    永井豪「マジンガー」シリーズがまさかの美少女アニメ化―来年1月放送決定

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】174回 マジンガーZ/桜多吾作(原作・永井 豪)

  • アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    本物の銀貨がついた「1/20マジンガーZ」でパイルダーオンごっこをやってみた

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】160回 ちびっこ怪獣 ヤダモン/永井 豪(原作・うしおそうじ)

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      宮城県女川町が11月26日、公式Xで発信した「クマ出没情報」が、後に「生成AIによるフェイク画像」に…
    2. 派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      「とても茨城県」というつぶやきとともに、Xに投稿された一枚の写真。そこには、一般的な工事現場のイメー…
    3. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…

    編集部おすすめ

    1. ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      バーチャルタレント事務所「ホロライブプロダクション」を展開するカバー株式会社は公式Xにて11月25日、同社のバーチャル空間プロジェクト「ホロ…
    2. エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      ロッテは自社商品の各ブランドサイトで、アレンジレシピを公開しています。その中に「パイの実」をエビチリソースと卵で炒め合わせた「チリ玉パイの実…
    3. 100tハンマー

      伝説のコンビを追体験 40周年「シティーハンター大原画展」上野で12月28日まで開催

      「シティーハンター」連載開始40周年を記念した原画展「シティーハンター大原画展~FOREVER, CITY HUNTER!!~」が、11月2…
    4. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    5. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト