「うちの本棚」、今回はアニメ作品のコミカライズとしてはもっとも有名な作品とも考えられる、桜多吾作版『マジンガーZ』を取り上げます。
連載当初はテレビアニメのエピソードをなぞるものでしたが、掲載誌が移り、後半に差しかかるとオリジナル色が濃くなり、結果的にオリジナル「マジンガーシリーズ」ともいえる作品へと発展していきます。その原点をお楽しみください。
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本作はテレビアニメ『マジンガーZ』の放映に合わせて、集英社の「別冊少年ジャンプ」に連載されたあと、秋田書店の「冒険王」に掲載誌を移して連載されたコミカライズ作品である。基本的にアニメのエピソードを元にしているが、後半になるにつれオリジナル色が強くなっていき、続編である『グレートマジンガー』『グレンダイザー』と進んでいくと、桜多吾作オリジナル作品という印象ともなっていく。
単行本は当初「秋田サンデーコミックス」で刊行され、絶版のあと本書、続いて双葉社からA5判としても刊行された。現在では「マンガショップシリーズ」で全3巻として、それまでの単行本には収録されなかった、ボスボロット登場エピソードなども含めた新編集版が刊行されている。
本作では、永井 豪の原作版に比べて、主人公・兜 甲児をはじめ主要なキャラクターが若干幼い印象に描かれている。そのぶんギャグシーンも入れやすかったのかギャグシーンが散見できる。しかし、特に後半ではシリアスでハードな展開もあり、ギャグとシリアスがいいバランスで描かれている。
またテレビ版のエピソードに加えて劇場公開版の『マジンガーZ対デビルマン』、『マジンガーZ対暗黒大将軍』も描かれ、連載エピソードに組み込まれて収録されている。テレビアニメ版のイメージをトレースすることに加えて、桜多版オリジナルの要素も楽しめるという点で、本作はコミカライズ作品として成功した例ではないだろうか。
今回は朝日ソノラマの「サン・ワイド・コミックス」版として取り上げたが、この「サン・ワイド・コミックス」は、当時コンビニ販売を中心に各出版社で刊行され始めたB6版単行本(現在のペーパーバックコンビニコミックとはまた別のもの)を意識してスタートしたシリーズだったと思う。通常の新書判単行本よりサイズが一回り大きく、ページ数も2冊分程度というボリュームで、旧作・名作の刊行が盛んに行われた。「サン・ワイド・コミックス」も当初は新書判の「サン・コミックス」の絶版作品を収録するかと思われたが、コミカライズ作品やドラマ化、アニメ化原作作品などヒーロー路線が中心になり、石森章太郎の『人造人間キカイダー』『イナズマン』などと並んで本書の「マジンガーシリーズ」も刊行された。ちなみに永井 豪の原作版『マジンガーZ』も同じ「サン・ワイド・コミックス」で刊行されている。
本書が刊行された当時は「秋田サンデーコミックス」も古書店での入手が難しい状況になっており、読みたいが手に入らないファンにはうれしいものだった(原作版は「講談社KC」など繰り返し刊行され入手しやすい環境にあったが、コミカライズ版は半ば忘れられていた時期ではなかったかと思う)。
原作とは一線を画し、本来元となるアニメ版とも一味違う桜多吾作版「マジンガーシリーズ」、その原点ともいえる本作『マジンガーZ』はロボット作品が好きな人はもちろん、まだ読んだことがないという人に読んでほしい作品である。
初出:集英社「別冊少年ジャンプ」1972年12月号~1973年9月号
秋田書店「冒険王」1973年9月号(予告まんが)~1974年9月号
書 名/マジンガーZ(全3巻)
著者名/桜多吾作
出版元/朝日ソノラマ
判 型/B6判
定 価/第一巻・750円、第二、三巻・690円
シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
初版発行日/第一巻・昭和62年11月20日、第二巻・昭和62年12月21日、第三巻・昭和63年1月20日
収録作品/第一巻誕生編・マジンガーZ誕生の巻、消滅作戦、デイモスF3は悪魔の落とし子、大回転攻撃、飛行魔獣デビラーX1、襲撃ストロンガーT4、ホルゾンV3、ジンライS1、ホーガスD5、マジンガーZ対デビルマン、ミネルヴァX、カーマK5、第二巻激闘編・グラナダE3、Drヘルの野望、暗黒大陸のマジンガーZ、ブローグンG3、チップカモイ、Drヘル大攻略、デスクロスV9、ジェノバM9、デビルチーフA7、第三巻完結編・RI(リー)計画の秘密、ダイモスΣ8とメドルーサエゼン、ピグマン子爵の巻、マジンガーZ対暗黒大将軍、闘え!!Drヘル、Drヘルの最期
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)