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再び増加の特殊詐欺、よくある手口をもう一度おさらいしましょう

update:

最近また、振り込め詐欺など特殊詐欺のニュースが目立つようになり、実際に電話を受けた人の話がSNSなどで大きく話題になる出来事が頻発しています。

紹介される手口は、電話をかけてきて子どもや孫になりすます「オレオレ詐欺」のようなものから、ネットバンクの入口表示をそっくり模倣した詐欺サイト、最近では若い人にもかかってくるそうで「電話でカードの利用申請を受けたけれど、その後の手続きが済んでいない」などの理由で個人情報を洗いざらい求めるような手口のようなものと様々。しかも誘導がうまくどこかで話を断ち切らないとズルズルと情報を漏らしてしまうので、気づいた時には自分の個人情報の一部が漏れてしまっているという怖さがあったりもします。

  • 実はオレオレ詐欺、還付金詐欺、架空請求など、特殊詐欺といわれる電話を使った詐欺の被害額は、平成28年の場合全国で約407.7億円。400億円といえば、小さな国の国家予算並みの金額になってしまうんです。そして29年はというと……なんと、前年同月比でみていくとかなりのペースで詐欺件数が増えているのです。

    【平成29年 認知件数】※括弧内は前年同月比
    1月:904 (+169)
    2月:1,406 (+260)
    3月:1,674 (+436)
    4月:1,685 (+528)
    5月:1,494 (+509)
    6月:1,700 (+519)
    7月:1,462 (+260)
    8月:1,328 (+169)
    警察庁ホームページより引用)

    特殊詐欺は、毎日のように新しい手口が登場しています。古典的な手口が復活することもあるので、手口を追いかけるのは容易ではありません。それでも、今使われている手口がどうなのかを知っておくことは無駄ではないんです。なにが被害防止に役立つか分からないのですから。そこで、いま流行っている手口を特殊詐欺アナリスト・大和龍夫さんに教えて貰いました。

    「まだこれ引っかかる人いるの!?」と思う古典的なものから、「知らなかった!」という手口まで。これを読んでご自身が被害に遭わないことはもちろん、ご両親や知人の方が被害にあわないように、ひろめていきましょう。

    手口1 カバンを忘れる息子

    オレオレ詐欺という名前の由来にもなった、もっとも古典的にしてもっとも強力な手口です。

    「オレオレ」と言う場合と、本当の息子の名前を名乗る場合があります。適当な名前を言うこともありますが、その場合、「ヒロ」と名乗ることが多いのです。なぜヒロなのか?日本人男性の名前には、ヒロという読みが入るものが多いからです。ヒロと名乗っておけば、当たる可能性が高いというわけです。
    この息子が、電車や喫茶店、病院、はてはコンビニのトイレといった、街中のあらゆるところにカバンを忘れます。そのカバンには必ずその日の重要な取引に使う小切手や書類が入っているから不思議です。普通ならそんなの持ってる時こそ鞄だけは忘れないのにですね。
    そして、カバンはどこかの駅で拾われ、『警察や駅の遺失物センター』といった、さもありそうな機関から、なぜか本人ではなく親やおじいちゃんおばあちゃんのところに電話が入ります。
    この後、会社の上司が登場して迷惑をかけたと謝り倒します。
    なんだかんだと間髪をいれずに電話がかかってきてますが、最後に息子は重要な会議が入ってお金を取りに行けなくなり、「たまたま」近くを回っている営業の者がお金を取りに来るというものです。

    手口2 カバンを忘れる孫

    息子には「もう大人なんだから自分でなんとかしなさい」と叱れても孫はかわいくて叱りにくいものです。 ですから、この手口もなかなかに強力です。登場人物が孫になるだけで、台本は息子と同じです。

    手口3 カバンを忘れる甥

    自分の甥っ子って誰でしょう?皆さん思い出せますか?よく分からないけど、甥っ子ならばひとりやふたりいそうです。その甥っ子もカバンを忘れます。台本は、やはり息子と同じです。

    手口4 還付金詐欺

    区役所や市役所などに成りすまして電話をかけてきます。「医療費の払い戻しのハガキが届いていませんか?」「払い戻しの期限が迫っています。今の期間ならばATMから払い戻しの手続きができますよ」などと言ってATMに誘導します。誘導されるATMは、金融機関の店舗内ではない無人ATMであることが多いです。

    犯人の言われるままにATMを操作すると、振込み限度額いっばいの金額を送金させられてしまいます。 それも一回ではありません。「確認が取れません」とか「失敗したようです」と言って、もう一度同じ操作を繰り返させようとします。
    実は役所が電話でお金を返すと言ってくることは絶対にありません。

    手口5 デパートに成りすます

    有名なデパートなどを名乗って電話をかけてきます。「あなたのクレジットカードで買い物をしようとしている人物がいます」とか「あなたのクレジットカードが不正に使われています」と言って不安にさせます。
    そのあとで今度は、全国銀行協会などのお堅い団体や組織を名乗って電話をかけてきます。最初の電話ではクレジットカードの不正利用だったはずが、ここでキャッシュカードを保護する必要があるという話しにすり替わります。そして、「本人確認のため」などの理由をつけて暗証番号を聞き出します。
    その後、全国銀行協会の職員らしいネームプレートを提げた犯人がキャッシュカードを受け取りに来るのです。

    手口6 金融機関に成りすます

    これも手口5のデパートと同じ流れですが、 最初の口実が少し違います。 デパートを名乗るときはクレジットカードの不正利用ですが、金融機関を名乗るときは「あなたの口座が犯罪に使われています」とか「警察と協力して詐欺犯人を捕まえたところ、あなたの口座がリストに載っていました」と言って不安に陥れます。
    その後は、「あなたの口座を保護する必要がある」、「口座を作りかえる必要がある」 などの口実でキャッシュカードを受け取りに来ます。

    手口7 病院に成りすます(その1)

    オレオレ詐欺の前振りというか枕のようなものです。 犯人が病院を名乗って電話をかけてきます。そして「息子さんが喉頭がんで手術をしています。麻酔が切れたら本人から電話があります」など適当なことを言います。これは、電話の声が息子と違うと思われることを防ぐための布石になります。
    その後は、手口1と同じようなオレオレ詐欺物語が進んでいくことになります。(そもそも手術に同意した人に電話すべき話ですよね。)

    手口8 病院に成りすます (2)

    金融機関に成りすます手口の亜種です。「病院に保険証を忘れています」、「昨日、受付だけして受診していない。保険証を預かっている」など、保険証が病院にあるようなことを言います。電話を受けた人は、その病院に行った事実がないので不審に思います。
    そうすると、次に警察から電話が来ます。「あなたの保険証や口座が犯罪に われている」と言って、犯罪に巻き込まれているかのように思わせるのです。
    そして、「口座を保護する」、「あなたの口座に犯罪収益が振り込まれている」などの理由をつけてキャッシュカードを預かりに来ます。

    手口9 警察官に成りすます

    実在する警察の組織又は警察署の警察官を名乗って電話をかけてきます。その後は、これまでずっと説明したような様々な言い訳でキャッシュカードを預かりに来ます。おもちゃの警察手帳を持ってくることもあります。

    警察官に成りすます手口には、もう一つあります。

    これは、オレオレ詐欺を見破られたときの『二の矢』として用意されています。
    犯人は、オレオレ詐欺に騙されなかった被害者に警察官を装って電話をかけてきます。そして、「犯人がお金を受け取りに来る。駆されたふりで犯人逮捕に協力して欲しい」と言って捜査協力を求めます。これに応じると「犯人に渡すお金を用意して欲しい。今から刑事がお宅に向かうので渡してくれ」と言って現金を用意させるのです。

    手口1 0 架空請求

    主にメールを使って、有料アダルトサイトの料金未納や解約手数料などの名目で架空の請求をしてきます。これは、ショートメッセージの場合もあります。
    皆さんも、このようなメールが来ると「ひよっとしてあのときの……」と思い当たるフシがあるのではないでしようか。
    この手口の場合、犯人は現金ではなくアマゾンギフトなどの電子マネーの番号を要求してきます。電子マネーをコンビニなどで購入したら、その番号をメールや電話で教えるように言われます。
    犯人は、その番号を使って電子マネーを買い取り業者で換金します。
    電子マネーで被害に遭った場合、犯人が現金化するまでに若干のタイムラグが生じます。その間に警察に届け出れば、被害に遭った電子マネーを無効化することができますから、被害に気づいたらできるだけ早く警察に届け出ることが被害回復につながります。

    これまで説明したように、今のトレンドは『現金よりキャッシュカード』『現金より電子マネー』です。これは、金融機関の窓口で現金を調達しようとすると、警察に通報されて失敗に終わることが多くなったからだと考えられています。

    犯人からの電話に出なければ被害に遭うことはありません。詐欺犯人は、留守番電話を嫌います。固定電話は、いつも留守番電話にセットして、相手の声を確認してから出るようにしましょう。「犯人の電話に出ないで被害ゼロ」です。(警視庁ホームページから引用)

    ちなみに筆者が保健所に勤めていた時代、「〇〇さんという人から電話があった」と実在しない職員の名前を告げられて被害手前の方から電話を受けたことが多々あり、そのたび不安になる市民の方の話を聞いて、次にかかってくる電話に対処しながら安心させてあげることで業務の半分を終わる日もありました。

    そこで万が一ですが、万が一。お金の絡む電話を受け取ってしまった時にはまず一旦電話を切る。そして、かかってきた番号ではなく、舞台になっている会社、警察、役所の番号を“自分で調べて”折り返すようにしてみてください。また相手が息子など身内を名乗る場合には、自分が知る電話番号にかける。通話中になっていたら、掛かるまで何度もかける。掛かってきた電話ではなく、自分が調べた(知っている)番号先で必ず正しい情報かどうか確認してください。

    (天汐香弓 / 監修・特殊詐欺アナリスト 大和龍夫 / 画像・イラストAC)

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