バレンタインデーに手作りのチョコ菓子を作る、という女子はそこそこいるかと思います。最近は友チョコも流行り、好きな男性よりも友人や自分向けにチョコを買うという人も多いそう。しかしそこに使われているチョコレートはカカオ豆から既に出来上がっているものであり、板チョコなどを溶かしてまた固めるチョコレート菓子は厳密には「『チョコレート』を作る」とは言えません。

 そんな中、ネット上である板チョコキットが話題になっていました。作物から育てるTOKIOレベルには劣るものの、農家でない人でもこれならギリ「『チョコレート』を自作しました」と言えるんじゃないかと……。というわけで、早速、取り寄せてみたのでした。

 取り寄せたのはカルディでバレンタインの時期に合わせて限定販売されている「BEAN TO BAR KIT カカオ豆から作る手作りチョコレートキット」(税込1296円)。取り寄せたお店の人によると、流通量が非常に限られておりオンラインショップではすぐに売り切れてしまう商品だそうです。ただし、オンラインショップで売り切れていても店舗流通分が残っていれば取り寄せは可能だそうで、近隣店舗に在庫があれば約1週間ほどで取り寄せてもらえます。

 さて、このカカオ豆からチョコレートを作るキットの中身。
・ローストしたカカオ豆200g
・甜菜糖30g
のみが原材料として箱に入っていました。板チョコにするための型も入っているので安心です。

 で、作り方なのですが……カカオ豆の皮をむくのに約40分、取り出した豆を細かく砕くのに約50分、湯せんにかけながらさらにすり潰しながら練るのに40分、同梱されている甜菜糖を加えてさらに湯せんしながら練るのに約90分と箱の裏の作り方の説明に書いてあります。【所要時間(目安)】約4時間とあります。よ、4時間……作る前から既に気が遠くなりそうになりつつ、カカオ豆の皮をむく作業に。取り寄せるときにお店の人が「これ結構楽しいですよ~」とにこにこして言ってたけど、本当に?本当に楽しいの??

 ローストした豆の皮はパリッとなっていて親指で豆の真ん中あたりにクッっと力をこめると簡単に亀裂が入ります。中身がきれいに取れた時はちょっと快感だったりして。ついでにカカオ豆がどんな味なのかちょっとかけらを味見。とってもカカオのいい香りなんだけど、お世辞にも美味しいとは言えない。口当たりもざらざらしているし。よくこれをお菓子にしようと思ったよな昔の人は。この香りだけで食用に加工しようとしたわけでしょ?執念か何かあったのか。などとどうでもいいことを考えつつ、豆を剥き終わりすり鉢へ。


 ちなみにこの豆をすり鉢で潰す作業。これからキットを使ってチョコレート作る人は、この工程だけはフードプロセッサーか何かでやったほうが確実に早いし、後々の作業に響かないので持っている人はためらわずに電動ツールを使ったほうが良いと思われます。ぶっちゃけ、この大きさの粒をすりこぎで1個づつゴンゴンやって潰すの大変でした……。


 さて、粉砕したカカオ豆の粉が出来上がったので、ここからは湯せんにかけながらさらにすりこ木でゴリゴリとやっていきます。この粉がホントにチョコになるんかいな……?見た目、とてもチョコレート感ないんだけど……。

 すりこ木でひたすらゴリゴリやる事数十分……あれ、何か色が濃くなってきた?湯せんによって豆の細胞に含まれていた油脂分が溶けてきたようです。だいぶつやが出てきましたが、まだまだボロッとした感じ。さらにすり鉢の中身をゴリゴリ。ちなみにすり潰す時にはあまりテンポの速すぎない音楽をBGMにすると曲のビートに合わせてゴリゴリできるのでお勧めです。デスメタル系よりクラブ系ダンスミュージックがいいかも。

 さっきよりも見た目だいぶ滑らかな感じになってきました。粉砕から擦り始めて約90分、ようやっとここまで来ました。でもまだ粒の粗さは目立ちます。
この辺で添付の甜菜糖を投入。カカオの油脂分と絡んでもっそもそになりましたが、さらに根気よく擦り続けます。

 糖分と油脂分がなじんできてかなり滑らかになってきました。もうそろそろ型に流してもいいくらいかなぁ?甜菜糖入れて90分くらいノリノリでゴリゴリした事だし。ここで湯せんに使っていた鍋をお昼ご飯の準備に使いたいので一旦作業を中断。ちなみにこの日はきしめんを食べました。部屋いっぱいに広がるカカオの香りに対抗しようとして抗えない鰹だしの香り……。

 さて作業を再開。油脂分がしっかり出た元カカオ豆だったものは、湯せんから外され完全に固まってしまいました。すり鉢の中身をボウルに移し替え、再び湯せんしながら溶かしていきます。ここでボウル移したのには理由が。すり鉢って擦り目が入っているからそのまま流し型へ出来上がったチョコを入れるときに最後の方がすごく取りにくくなると判断したんですね。で、チョコが固まっているのをいい事にフォークの先で擦り目をこそげてチョコをガリガリと削り取っていった訳ですよ。これはやっておいて正解でした。後の洗い物もだいぶ楽だった上に、出来上がった貴重なチョコを無駄にする事なくきれいに取ることができたので。



 ボウルに移し替えたチョコは、溶けたら湯せんから外して混ぜて温度を下げ、下がったら再度湯せんして温度を上げるという「テンパリング」という工程を行います。これはチョコレート菓子を作るときの基本の作業ですが、温度管理が結構メンドクサイやつでもありますよね。ちゃんとやらないときれいなツヤが出ないで濁った見た目になってしまうのでちょっと気合い入れてテンパリングし、型へ流し込みます。なお、流している間にチョコが冷えてくるので、2~3個流したら型を揺さぶったり軽く落とすように衝撃を与えたりして空気を抜いて平らにしていきます。できたら冷蔵庫でしばらく放置して、完成。


 できあがったチョコを早速食べてみましょう。
パキッ、ザリザリザリ……うん、カカオ100%の味がする。アキラじゃなくてよかったといまいち意味不明なことを考えたのはきっと3時間くらいゴリゴリやり続けたせいだと信じたい。

 最初に豆の状態で味見した時には感じられなかったチョコレートの味わいを感じる事ができ、あのボソボソしたような味の豆がこんなに香り豊かにほのかな酸味やコクのある味わいになるなんて……と大変身したカカオ豆の成れの果てに感慨深いものを抱いてしまいました。

 娘の小学校5年生にも試食してもらったところ、「苦い。ざらざらしてる。けど食べれなくはない」という評価。チョコといえばミルクチョコ派でビター食べない人だもんなぁ。甘いの苦手な人なら全然アリかな?舌触りはまぁしょうがないという事にしてもらって。箱の裏にも「仕上がりの食感は少しざらついたものになりますが」って書いてあるし。

 こんな機会でもないとなかなか体験できない、カカオ豆からチョコを作る作業。確かに面白かったしいい経験にはなったかな……。できたチョコからさらにアレンジするのもありだし、チョコが大好きでたまらない人には絶好の研究素材にもなりそう。
もしこのキットを手に入れる事ができたら、一度は体験してみてください。確かに面白い体験にはなりますよ。

(梓川みいな)