おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

新型迎撃ミサイルPAC-3 MSEの最長迎撃距離記録を更新

 2018年7月26日(現地時間)、ロッキード・マーティンは地対空迎撃ミサイルペトリオットPAC-3の能力向上型、PAC-3 MSEが目標迎撃距離の最長記録を更新したと発表しました。PAC-3 MSEは弾道ミサイル防衛(BMD)の終末フェイズ迎撃に欠かせないものとして、航空自衛隊でも導入に向けて、すでに予算が計上されています。

  •  PAC-3(Patriot Advanced Capability 3)は、地対空迎撃ミサイル「ペトリオット」の中でも、弾道ミサイルや巡航ミサイルなど、高速で動く小さな目標を迎撃する能力を向上させたミサイル。PAC-3 MSE(Missile Segment Enhancement)は、最新の能力向上型で、迎撃可能な距離がこれまでのPAC-3より約30%向上しています。射程距離の増大に伴い、大きな2段式固体パルスロケットモーターを使用するために、ミサイル本体の直径がこれまでのPAC-3弾より大きくなっているため、発射筒ユニットあたりのミサイルはこれまでの4本から3本に減じられています。発射機にフル装備した場合、4発減ってしまいますが、撃破の確実性と迎撃距離の延長でそのマイナス面を埋め合わせる計算です。

    PAC-3 MSEの構造(Image:Lockheed Martin)

    PAC-3 MSEの構造(Image:Lockheed Martin)

     アメリカ陸軍が主導して、ニューメキシコ州にあるホワイトサンズミサイル射撃場で行われた試験で、これまで以上に遠距離の目標に対してミサイルを命中させ、目標を破壊したといいます。具体的な距離は、それがそのまま最高機密であるミサイルの迎撃性能を意味するので、発表されていません。

    PAC-3 MSE発射の瞬間(Image:U.S.Army)

    PAC-3 MSE発射の瞬間(Image:U.S.Army)

     この試験成功を受けて、ロッキード・マーティンのPAC-3プログラムの副代表を務めるジェイ・ピットマン氏は「PAC-3 MSEは、今日増大しつつある脅威に対して有効な対抗手段であり続けています。今回の試験の成功で、非常に遠い距離でもこのミサイルが有効に機能するということを証明してくれました」と述べています。

     PAC-3 MSEは、すでに初期運用能力を2016年に獲得しており、実戦配備に向けての最終段階に入っています。飛来する弾道ミサイルや巡航ミサイルに対する「最後のとりで」として、PAC-3はその能力を向上し続けています。

    Image:Lockheed MartinU.S.Army

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 弾道ミサイル対処訓練を行う護衛艦あたごの乗組員(画像:海上自衛隊)
    宇宙・航空

    弾道ミサイルに対処する日米共同訓練「レジリエント・シールド2023」

  • 衛星通信アンテナを展開するアメリカ海兵隊員(画像:USMC)
    宇宙・航空

    アメリカ国防総省 極超音速兵器を探知する人工衛星網構築計画を明らかに

  • スイス空軍の次期戦闘機に採用されたF-35A(Image:スイス連邦防衛・国民保護・スポーツ省)
    宇宙・航空

    スイス空軍次期戦闘機にF-35Aを36機調達 ペトリオット対空ミサイルも5セット…

  • ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられるGPS IIIの5号機(Image:SpaceX)
    宇宙・航空

    測位精度が3倍に向上 次世代GPS衛星「GPS III」5号機の打ち上げ成功

  • アルテミス計画での宇宙飛行士と月面車の想像図(Image:GM/Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    GMとロッキード・マーティン NASA「アルテミス計画」用の月面車を共同開発

  • 弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」の打ち上げ(Image:ULA)
    宇宙・航空

    アメリカの弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」打ち上げ成功

  • KF-21「ポラメ(若鷹)」完成披露式典での韓国・文在寅大統領(Image:KAI)
    宇宙・航空

    韓国の国産戦闘機KF-21「ポラメ」試作1号機をお披露目

  • F-35A1号機の前に立つデンマーク空軍パイロットら(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    デンマーク空軍がF-35Aの1号機を受領 非公式の愛称は「パンサー」

  • 初飛行で離陸するデンマーク向けF-35Aの1号機(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    デンマーク空軍向けF-35Aの1号機が初飛行

  • NECのAI技術が開発に使われるNASA「オリオン」宇宙船(Image:NASA)
    宇宙・航空

    NECのAI技術がNASAオリオン宇宙船開発へ ロッキード・マーティンと合意

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)
    イベント・キャンペーン, 経済

    昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」…

  • 新商品「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ>」
    商品・物販, 経済

    焼きあごの香ばしさと細カタ麺の共演 「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ…

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    2. 工場労働者2138人、1万時間の作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場労働者2138人、1万時間の手作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場向け自動化ロボットの研究開発を行うテクノロジー企業、Build AIが、工場労働者2138人による合計1万時間の作業映像をオープンソース…
    3. お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      「解体しながら飲む」が合言葉。童話でお馴染みの「お菓子の家」を、そのまま大人向けに置き換えたような、その名も「つまみの家」がXに登場しました…
    4. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    5. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト