おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アメリカの弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」打ち上げ成功

 アメリカ宇宙軍は2021年5月18日(現地時間)、弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」がフロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられたと発表しました。打ち上げから約45分後、衛星は無事所定の軌道に投入され、打ち上げは成功しています。

  •  弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」は、静止軌道(GEO)から赤外線センサーで弾道ミサイルの発射を検知する人工衛星「SBIRS GEO」シリーズの5号機。この5号機は汎用軍事衛星バスのLM2100 Combat Busをベースとした改良型となっており、製造はロッキード・マーティンが担当しています。

    SBIRS GEO-5のイラスト(Image:Lockheed Martin)

     メーカーのロッキード・マーティンによると、5号機はサイバー攻撃耐性がアップしており、電源や動力装置なども強化されているとのこと。また、汎用部品も広く採用されており、迅速な製造とコスト低減も可能としています。

    SBIRS GEO-5(Image:Lockheed Martin)

     打ち上げを担当したのは、ULAのアトラスVロケット。直径4m級のペイロードフェアリングにはアメリカの象徴であるハクトウワシをモチーフにした「SBIRS GEO-5」のエンブレムがデザインされ、2つの固体ロケットブースターを組み合わせた「421」という仕様でロールアウトしました。

    弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」打ち上げ仕様(Image:ULA)
    「SBIRS GEO-5」のペイロードフェアリング(Image:ULA)
    「SBIRS GEO-5」のロールアウト(Image:ULA)

     ケープカナベラル宇宙軍基地の第41打ち上げ施設に据え付けられたアトラスVロケット。当初は5月17日の打ち上げが予定されていましたが、2段目エンジンに液体酸素を注入する段階でデータの異常が見つかり、打ち上げは翌18日へ延期されました。

    打ち上げを待つアトラスV(Image:ULA)

     そしてアメリカ東部標準時の5月18日13時37分、アトラスVロケットは「SBIRS GEO-5」を載せ、打ち上げられました。飛行は順調に進み、打ち上げ2分12秒後に固体ロケットブースターを分離、4分40秒後には2段目エンジンに点火し、42分50秒後に「SBIRS GEO-5」を分離して打ち上げは成功しました。

    SBIRS_GEO-5の打ち上げ(Image:ULA)
    SBIRS_GEO-5を載せ上昇するアトラスV(Image:ULA)

     打ち上げ成功を受け、アメリカ宇宙軍で打ち上げディレクターを務めるエリン・ガルデン大佐は「多くの政府機関と広範囲な業界パートナーとの強力なパートナーシップと、国家の宇宙における能力と重要な兵士たちのサポートを提供するという、チームの揺るぎないコミットメントを誇りに思います」との談話を発表しました。

    SBIRS_GEO-5を載せ飛行するアトラスV(Image:ULA)

     今後、衛星は静止軌道の定められた位置に入り、本任務に入るため各機能のチェックを実施します。2022年には6号機の打ち上げも予定されており、アメリカの弾道ミサイル防衛に不可欠な監視能力がさらに強化される見込みです。

    <出典・引用>
    アメリカ宇宙軍 ニュースリリース
    ULA ニュースリリース
    ロッキード・マーティン プレスリリース
    Image:ULA/Lockheed Martin

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • スイス空軍の次期戦闘機に採用されたF-35A(Image:スイス連邦防衛・国民保護・スポーツ省)
    宇宙・航空

    スイス空軍次期戦闘機にF-35Aを36機調達 ペトリオット対空ミサイルも5セット…

  • ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられるGPS IIIの5号機(Image:SpaceX)
    宇宙・航空

    測位精度が3倍に向上 次世代GPS衛星「GPS III」5号機の打ち上げ成功

  • ペガサス XLロケットを搭載し離陸を待つ発射母機L-1011「スターゲイザー」(Image:USSF)
    宇宙・航空

    アメリカ宇宙軍 小型衛星を契約からわずか4か月足らずで打ち上げ

  • アルテミス計画での宇宙飛行士と月面車の想像図(Image:GM/Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    GMとロッキード・マーティン NASA「アルテミス計画」用の月面車を共同開発

  • KF-21「ポラメ(若鷹)」完成披露式典での韓国・文在寅大統領(Image:KAI)
    宇宙・航空

    韓国の国産戦闘機KF-21「ポラメ」試作1号機をお披露目

  • F-35A1号機の前に立つデンマーク空軍パイロットら(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    デンマーク空軍がF-35Aの1号機を受領 非公式の愛称は「パンサー」

  • 初飛行で離陸するデンマーク向けF-35Aの1号機(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    デンマーク空軍向けF-35Aの1号機が初飛行

  • NECのAI技術が開発に使われるNASA「オリオン」宇宙船(Image:NASA)
    宇宙・航空

    NECのAI技術がNASAオリオン宇宙船開発へ ロッキード・マーティンと合意

  • MAPSによる対戦車ミサイル防御のイメージ(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    アメリカ陸軍の装甲戦闘車両用次世代防御システム 正式試験へ

  • 移送用パレットに移されるオリオン宇宙船(Image:NASA)
    宇宙・航空

    NASAアルテミス計画最初のオリオン宇宙船 打ち上げ前試験を完了

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

  • 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み
    エンタメ, 芸能人

    松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み…

  • 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

  • 11月17日からの平日限定で、「かっぱの挑戦 感謝祭」をスタート
    イベント・キャンペーン, 経済

    かっぱ寿司、おにぎりとかけうどんが平日限定で各82円に 「かっぱの挑戦 感謝祭」…

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    2. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    3. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    4. 今年もやってきた“本番環境の事故録” Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      本番環境などでの失敗談が集結 Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      稼働中のサーバーでの作業ミスによるトラブルの顛末をつづる「本番環境などでやらかしちゃった人 Advent Calendar 2025」が12…
    5. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト