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人一倍色んなことに敏感な「HSP」って? ある漫画家の体験に共感続々

 繊細で環境の変化によく気が付き、周りに気を使いすぎる傾向がある人、意外といると思います。その結果、些細な事でくよくよしてしまったり、気を使いすぎるあまり精神的に疲れやすかったり、人混みやガヤガヤしたところに出るとすぐに疲れてしまったり……そんな超敏感体質で人一倍感受性が強い人の事を、「HSP (Highly Sensitive Person)」と総称しています。

 そんな、HSP当事者のある漫画家が、「カウンセリングの時に言われた言葉に救われた」と4コマ漫画にした体験談がSNSで話題になりました。

  •  漫画家のおがたちえさんがツイッターに投稿した3本の4コマ漫画。「HSP(超敏感すぎる人)気質が強く出て、いろんなことが気になって苦しんでいたとき。カウンセリングの先生から言われて救われた言葉を同じく悩んでいるHSPさんに送ります」と、その漫画の画像を投稿しています。

     心療内科の先生に、「映画館や劇場が緊張するので苦手なんです」と相談するおがたさん。「トイレに行きたくなったり苦しくなったりしたら、周りの人に迷惑をかけるんじゃないかと思うと……」いつ起こるか分からない事だけについ心配してしまう様です。そんなおがたさんに医師は、「堂々と目の前を横切ってトイレに行く人よりかよっぽどいいじゃない。あなたみたいな人ばかりなら嬉しいわ」と、おがたさんの周りへの気遣いに対して肯定する言葉をかけています。おがたさんは「自分のダメだと思っていることを褒めてもらえて嬉しかった……」と。

     またある時、「出掛ける前に何度も点検しないと気が済まないのが辛い」と相談したら、「火事を出す事よりいい事よ」とその行動を肯定してもらえました。次の診察時に、自分でもその心配を改善したくて自作した「出掛ける時の安心メモ」を先生に見せると「これ最高!他の患者さんにも勧めるわ」と感心。おがたさんは、「私は私でいいのだ」と、繊細さのいいところを肯定してくれた様に感じ、以来、外出前の点検も苦にならなくなり、点検する事自体も徐々に減ってきたという事です。

     そしてとある診察の時間、心療内科の先生に「自分は才能のないダメ人間だから、もっと頑張らないと、もっと稼がないと」と胸の内を明かすと、「あなたみたいな人は元から頑張って生きているから、こう思っていいのよ」「休むのも仕事。休むのは次の仕事のための仕事」と。休息をとる事に後ろめたさや引け目を感じがちな人にとって、この言葉は大事な言葉。「考え方のクセをちょっと変えてもらうだけでも、心は楽になるのです」とおがたさんは締めくくっています。

     この漫画を見て、「救われた」というリプライが続々と寄せられ、HSPについても初めて知った、自分にも当てはまるという人も。実は、HSPと言われているひとは、ランダムな集団の中でも5人に1人は当てはまると言われています。発達障害とも違う、超繊細さん。その繊細さゆえに、少しの事で疲れてしまったり、集団に上手く入れず不登校になってしまったり、人が集まるイベントに行きたくても音や人が怖くて行けない、という事も多くあります。その結果、社会に出ても上手く自分の力を発揮できない人や、娯楽を制限されてしまう人、精神的疲労から抑うつ状態にもなってしまう人もいます。

     HSP自体、環境に左右されやすく疲れやすいところはありますが、上手く環境を調整して考え方・ものの見方を変えてみると、案外自分の繊細さを持ち味として発揮できる人も多くいます。おがたさんもその一人。おがたさん自身、HSPと気が付いたのは今年の夏あたりの事。「2018年の上半期に仕事で悩んでいたのですが、失敗すると自分を責めてしまいひどく落ち込むようになりました。そんなときにネットでHSPを知り、ネットで診断してみたら『高HSP』で、同時にそれは『気質』であって、そういう人たちが多くいる現実にホッとしました」とその時の心境を話してくださいました。

     「落ち込みやすく、自己肯定感が低いのでいつも自分は努力が足りないと思っています」とご自身の性格についておがたさんは分析されていますが、一方で、「人混みやうるさい場所が苦手で、人付き合いは少人数を好みます。芸術に感動するので、そこで救われているのだと思います」と、ご自身の気持ちの休息方法についても見出されている様子。

     おがたさんに、HSPについてのイメージを聞いてみたところ「繊細すぎて、周囲の人に気を使いすぎて疲れたり、競争が苦手なので現代社会で生きにくい部分があるのですが、良いところに目を向ければ、人を思いやる心を持ち、仕事熱心で創造力豊かな人だと思います。『そんな自分でいいんだよ』と伝えたいし、HSP気質を『私もあるある~』とクスッと笑って安心していただけるような漫画を描きたいと思っております」と話していました。

     HSPの人は、周りの空気を読み過ぎて頑張りすぎたり、その結果休息の方法が分からなくなってしまったり、疲れすぎてしまう傾向が強くあります。自己肯定感が低い人ほど、上を見ては頑張らないと、という気持ちに煽られ、その気持ちだけで既に疲れてしまう事もあります。でもそれでは悪循環。

     自分ができるところ、できないところ、得意な事、難しいところを自分で把握して、何が得意か、何だったらできるかを自分自身で認めて「私はここは苦手でもこれはできる子!」と、できる事に対して自信を持つ事で、自己肯定感を高めていく事ができるかと思います。頭の中で整理するのが難しければ、紙に書き出してみるのも良いでしょう。HSP自体、全人類にとっても必要な気質。世の中大雑把な人だらけだと、何かで漏れや抜けがあった時にリカバーできる人がいないかもしれないですもんね。細かいところまできちんとチェックでき、芸術的な感受性が高いのもHSPならでは。なので、繊細過ぎて傷ついたり落ち込む事があっても、自分はそれでもこの世に必要な人間なんだと思ってください。その繊細さや感受性に救われている人も必ずいるはずなんですから。

     そして、どんな環境であれば自分のいいところを発揮できるか、環境を調整し、自分のしんどい気持ちを受け止めてくれる人を見つける事も大事です。HSPで実際に心がしんどくなる人も結構います。心療内科はそんな人にも大事な場所。もし、自分が当てはまるかもしれない、このままでは心が壊れるかも、と感じたら、心療内科に行ってみましょう。もしかしたら予約がかなり待つかもしれませんが……。

    おがたさんのタイムラインやnoteには、「HSPあるある」シリーズも展開されていますので、共感した人はこちらも読んでみると気持ちが楽になるかもしれませんよ。

    <記事化協力>
    おがたちえ@台湾好きHSP漫画家さん(@ogachinpa)

    (梓川みいな/正看護師)

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