大人の多くが、使えるなら何でもいいやーと思いがちな文房具は、子どもたちにとって、人気のキャラクターのノートや、ペンを持っているだけで周囲の注目を一身に集められるアイテムの一つ。
筆者の子どもの頃は、ニオイ玉と呼ばれるビーズ大の様々な香りが付いた玉を友達同士で交換しあってよく遊んでいたものです。しかし、現在では子どもだけでなく、大人も面白いと思えるような文房具が次々と登場しています。
「楽しいコト、楽しいモノ、奈良から」をテーマに、可愛い雑貨を集め販売している奈良市公納堂町に店舗を構えるノスタルジックな文房具雑貨店「coto mono(コトモノ)」さん。こちらでは、「ならうふふ文具という奈良を楽しむ、持っているとうふふと思わず笑ってしまうような文具」を制作されており、普段から大仏や鹿をモチーフに文具を開発しているそうです。
特に2018年4月1日に販売した「大仏クリップ(540円)※予約販売」は、日本最大級の文具の祭典「文具女子博」(2018年12月14日~16日)で大反響を呼び、「めざましテレビ」でも紹介されるほど注目を集めています。こちらの大仏クリップがどのように商品化されたのかやその秘話を店長の東岡さんに詳しく伺いました。
「このクリップは山型クリップといって昔からある定番の形のクリップです。ある日、本当に何気なく手に取ったときに、そのフォルムから大仏様のお顔、顔から肩への稜線が見えました。仏師は木を見ればその中に仏が見えるそうですがまさにそんな感じです」と、その着想はクリップのフォルムを何気なく見ていた時のことだったと東岡さん。
大仏クリップは、今のところ1種類だけだそうで、今後は今より大きいものや金色バージョンなど検討中とのこと。気になる使い心地は「コピー用紙約100枚を挟めるとても頼もしい存在です。またダイエット中に、食べかけのお菓子の封に使ってこれ以上食べるのを阻止させる、など使い方も色々です」と、確かに大仏様が見守るスナック菓子の袋には、うかつに手を出せば、バチが当たって逆に大リバウンドしてしまいそうな気も……。
開発当時は、リアルな顔にするべきか、ラフなタッチにするか悩み何案もデザイン案を検討したそうで、最終的に、少し微笑んでいるようなリアルな顔に落ち着いたそうです。また、お顔の印刷方法も通常のパッド印刷(インクをのせる)方法では使用中に印刷が剥げてしまう恐れがあるため、少しコストは高くなってしまうが、レーザー印刷を採用したとのこと。
ちなみに文具女子博は2018年12月14日~16日の3日間開催で、1日目:240個(お昼には完売)、1日目で当初の搬入分がなくなったので急遽奈良からありったけ200個送り、2日目:100個(開始30分で完売)、3日目:100個(開始30分で完売)とかなりの売れ行きだったそうです。
「欲しかった方の手にほとんど届かないレアアイテムとなってしまいました。その為、急遽増産決定、予約通販サイトでは12月19日時点で400個を超えるオーダーをいただいています」とコトモノさんも、大仏クリップの思いがけない人気ぶりに、うれしい悲鳴を上げていました。
「発売するまでどういう反応があるのか本当に怖かったです。仏罰が当たらないように祈りながら、SNSで告知をしたところ予想以上の反応をいただきホッとしたのを覚えています。近くのお寺のお坊さんが購入してくださったのを知った時にゆるされたような気がしました」と発売するまでは気が気ではなかったようですね。
今後の展望を伺ったところ「奈良愛あふれる文具を作っていく予定です。大仏と鹿以外にも奈良にはいいものがたくさんあるのでモチーフも増やしていきたいです」と意気込みを語って下さいました。
<取材協力>
coto mono(コトモノ)(Twitter:@coto_mono / HP:http://coto-mono.wix.com/cotomono)
(黒田芽以)