2019年2月18日、アメリカ政府はフィンランドへのEA-18Gグラウラー電子戦機の輸出を承認。海軍とメーカーであるボーイングにその旨を通知しました。EA-18Gの輸出が認められたのは、2013年に承認されたオーストラリアに続いて2か国目。フィンランドは、現在運用しているF/A-18C/Dホーネットに代わる新たな戦闘機(HXファイター)を選定するプログラムがスタートしており、ボーイングはこれに対しF/A-18Eスーパーホーネットの最新型、ブロックIIIを提案しています。今回のEA-18G輸出承認は、これを後押しするものと考えられます。
EA-18Gグラウラーは、アメリカ海軍で運用されていた電子戦機EA-6Bプラウラーの後継機として、2人乗りのF/A-18Fスーパーホーネットをベースに開発された電子戦機。AN/ALQ-99電子戦ポッドを携行し、主翼端にはAN/ALQ-218電子戦システムを装備しています。これらの電子戦装備を用いて相手方のレーダー波を検知し、その周波数に合わせた妨害電波を発することで、相手のレーダーを使用不可能(ノイズで埋め尽くし、検知不能にする)な状態にします。
機密に関わる部分の多い電子戦機のため、これまで輸出の承認は2013年のオーストラリア(引き渡し開始は2017年から)への11機のみにとどまっていました。しかし近年では地対空ミサイルなど、防空システムの高度化が進み、日本をはじめとして電子戦機の導入に興味を示す国も出てきています。
EA-18GはEA-6Bと違い、兵装ステーションに十分な空きがあるため、電子妨害だけでなく、対レーダーミサイルのAGM-88 HARMを携行して自力で敵防空網制圧(SEAD)任務が行えるほか、AIM-120 AMRAAMなどの空対空ミサイルなども携行可能で、F/A-18E/Fと同様に使えるというメリットもあります。このため、F/A-18E/Fと一緒に使用することで、より有効性が高まる……というのがアメリカ海軍とボーイングの考え。フィンランド政府にもこのメリットをアピールするため、海軍とボーイングはアメリカ政府にEA-18Gの輸出承認を求めていたのです。
ボーイングのF/A-18とEA-18Gプログラムを統括するダン・ジリアン氏は「全ての戦闘攻撃機は、危険度の高い任務を行う際、生存性を高めるためにグラウラーのエスコートに依存しています。スーパーホーネット・ブロックIIIとグラウラーのコンビネーションは、フィンランドに卓越した技術的運用能力を提供し、特に空軍の求めるHX(次期戦闘機)の要求項目に最適なものであると考えます」と、EA-18GとF/A-18E/Fを併用するメリットを説いています。
フィンランド空軍の主力戦闘機、F/A-18C/Dに代わる戦闘機は、現在のところ2025年から導入される予定。フィンランド政府は、2019年1月末のHXファイター初期提案締め切りまでにF/A-18E/Fスーパーホーネットのほか、ダッソー・ラファール、ユーロファイター・タイフーン(EF2000)、サーブJAS39グリペン、ロッキード・マーティンF-35ライトニングIIの5機種が提案書を提出したと発表しています。今後フィンランド政府は、2019年第2四半期に細かい要求項目を取りまとめ、2020年末までにメーカーからの最終提案を締め切る予定。2021年に予定される最終判断で、フィンランドはどの戦闘機を採用するのでしょうか。
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)